オピニオン

2016年1月10日

今できること-テロが起きた日から-

昨年11月、紅葉の美しい芸術の都パリで、大規模なテロが起きてしまった。14年前のアメリカ9.11テロを思い起こさせるような悲劇である。「あなたが眠りにつくのを見るのが最後だとわかっていたら、わたしはもっとちゃんとカバーをかけて、神様にその魂を守ってくださるように祈っただろう。(中略)、若い人にも、年老いた人にも明日は誰にも約束されていないのだということを。(中略)だから、今日あなたの大切な人たちをしっかりと抱きしめよう。そして、その人を愛していることをいつでもいつまでも大切な存在だということをそっと伝えよう。「ごめんね」や「許して」や「ありがとう」や「気にしないで」を伝える時を持とう。そうすれば、もし明日が来ないとしてもあなたは今日を後悔しないだろうから。」この詩は、当時9.11の犠牲者の追悼式などで朗読された、「最後だとわかっていたら」という詩である。どんな時に何が起こるか誰にも分からないとしたら、今やるべきことは何か?この詩は、今、様々な状況にある全世界すべての人たちに送られるメッセージなのだと思う。パリのテロが起こって以来、世界中が「テロは許せない。」「対テロ対策としての攻撃を武力で行使すべきだ。」と提唱している。テロに対して、各国のリーダー達が下す判断が、真の平和へと導いてくれることを祈る。アメリカは、アフガン・イラク戦争を通して屈しない国力を顕示しようとした。確かに当時9.11テロの犠牲になった人々や家族を思うと、憤りを感じる。しかし、テロ組織は益々複雑になり、昨今はアメリカ軍による無人機空爆の画像が配信されている。ビンラディン、サダムフセインを殺しても、なお一層泥沼化は収まるどころか、イスラム国を生んでしまうという悪化の一方なのである。アメリカの持つ、ものさし1本で判断することの危険性がわかる。たまねぎの切り方を教わるように、人の首の切り方を教わった。と言うテロリストを養成する機関に、身を置かざるをえない子ども達。巻き添えになっている犠牲者は、どちらも罪なき一般の住民なのだ。負の連鎖は、まず弱いものへと向かう。日本は、一神教の思想よりも土着の信仰と神、仏教が混在しながら穏やかな柔軟性を持って歴史が流れてきた。日本人の性分は、この折り合いをつけることができる柔軟性に通じると思う。これは、とても誇れる人間性だと私は思っている。ともすると自己主張を優先し、白黒きちんと決着をつけることがグローバリゼーションとして国際人に求められる能力である。と欧米かぶれした人々は言うのであろうが、折れるやお互いさま、おあいこなどの言葉に表される、引き受けるや許すという能力もなかなか美しい勇気を持った行動ではなかろうか。その能力を日本人は、潜在的に持っていると思う。テロの翌日に、ある新聞の社説で「テロと憎悪と復讐の負の連鎖にならないよう、今こそ世界は踏みとどまらねばならない。そのためには、衝突とはまさに逆方向の相互理解が欠かせない。米欧は、ましてや日本は、どれほどイスラム世界を理解しているというのか」という記事を読み、はっと我に返った。立正安国は、全世界に向けた平和宣言なのである。釈尊から法華経を引き継いだ日蓮聖人が掲げたこの言葉には、自分に向いた平和でなく、自他に向いた平和への成熟した思考思想に基づいた行動が示される。仏教徒として今できることを、釈尊の言葉から皆が気付いていくことを祈る。

(論説委員・早﨑淳晃)

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