ひとくち説法
2015年11月20日号
身近な人に感謝
「空気のような存在」という言葉が使われるのは長年連れ添った夫婦の間の関係を表すことが多いようです。地球上の生物は、空気がないと生きていけない「なくてはならない」ものです。でも、空気があるのが当たり前になっているので、私たちはいちいち「空気さん、ありがとう!」とは言わないように、長年連れ添い「空気のよう存在」の夫婦はそれぞれに対して「ありがとう」と言うことは少ないようです。
私は今年、40年間連れ添ってきた妻を病気で亡くしました。まさに「空気のような存在」であった妻に感謝の言葉を述べたこともなかったことが痛恨の極みとして心に刺さっています。
空気はなくなることはありませんが、なくなって、初めてその存在の大切さに気付くのが空気であれば、最初からその存在をたくさん感じていきましょう。そして、「空気のような存在」である一番身近な人にこそ感謝の言葉を。
(三重県布教師会長・冨田啓暢)
2015年11月10日号
世界に響け平和の鐘
今年は戦後70年。テレビでは各局で戦争を題材にしたドキュメンタリー番組が多く制作されています。今年は76ヵ国から代表者が広島原爆ドームに集い、平和祈念式典が開催されました。8月6日8時15分に広島、9日長崎に原爆が投下されてから70年。私の寺でも10数年前から、檀信徒を集め、原爆・戦争等で尊い命を奪われ犠牲になった人びとに、鎮魂追善供養のため、また国土安穏・世界人類平和のために、梵鐘を打ち、お題目を唱え、ご祈念いたしております。
今、戦争体験者は老い、戦争を語る人が少なくなり、若い世代に継いでいく人たちがいなくなってきました。今こそ一人ひとりが平和を訴える時でしょう。梵鐘を打ち、大きな声でお題目を唱え日蓮聖人の眼目であった立正安国を目指し、2度と戦争のない、平穏な世界づくりにむかい、響け平和の鐘よ、轟け命のお題目。さあ、皆さまご一緒に。
(愛知三河布教師会長・河合海延)
2015年11月1日号
憤りの中から
先日、ある檀家さんの7回忌の法事を勤めた時のこと。法要が終わり、差し出されたお布施をいただくと、もう一つお布施の袋がある。不思議に思って、そのお婆さんに聞いてみると、
「いじめや誘拐などで、亡くなった子どもたちの供養をお願いしたいのですが、お願いできますでしょうか」とのこと。
こちらとしても、そういった申し出に少々驚くとともに、その尊いお心に添うよう、近づいたお施餓鬼で供養させていただくことでお引き受けした。
今、社会の中で、いじめや誘拐などによって、罪のない子どもたちのいのちが失われています。私たちは、そのような事件を聞くたびに、やり場のない憤りを感じます。このお婆さんはそんな憤りの中から、自分にできることとして、子どもたちの供養をと考えられたのでしょう。思いを行動に移していくこと。それも「いのちに合掌」。
(愛知県尾張布教師会長・三大寺聡温)