オピニオン

2015年10月10日

終戦70年は不戦の誓いの70年

本紙、平成27年9月1日号1面に、「終戦70年 平和への願い未来まで届け」と題して、今年で57回目を数える千鳥ヶ淵戦没者墓苑での追善供養並世界立正平和祈願法要が、終戦記念日である8月15日に内野日総管長猊下御導師のもと厳粛に営まれ、同21日には、広島平和記念公園・原爆供養塔前で、広島原爆死没者追善供養並世界立正平和祈願法要が、小林順光宗務総長御導師にて厳修されたという記事が掲載された。
前者は、千鳥ヶ淵戦没者墓苑が昭和34年に新設されて以来、連綿と続いている法要である。ただ、この墓苑は国によって設置されたという公共的性格を持つことから、これまでの56年の間には、宗門の内外、特に対外的に様々な問題があったであろうことは想像に難くない。東京4宗務所の歴代の所長をはじめ、多くのお上人方の全くぶれることのない確固たる意思がなければ、56年の星霜は越えることができなかったに違いない。関係各聖各位に敬意を表するものである。
広島の原爆死没者法要については、小林総長が、総長に就任される以前からの積年の篤い思いが遂に実現したものと聞く。また、実現には様々な障害もあったようであるが、それでも信念を貫き通された成果がこの法要であると思われる。
このように、これまでの70年という歳月と、これからも続くであろう戦没者供養に思いを馳せる時、最も大切なのは、それを担う人たちの変わることのない信念にほかならないということに思い至る。
また、これら2つの戦没者法要に際して併修された世界立正平和祈願法要は、言うまでもなく、日蓮宗の世界立正平和運動の一環として位置づけられるものだ。この運動は、昭和29年に開始されて以来60年以上に及ぶ歴史を持ち、様々な活動を繰り広げてきた。しかし、その道のりは平坦ではなく、風前のともしびというような時期もあったようだ。現在は、立正安国・お題目結縁運動の中に世界立正平和活動として位置づけられており、「いのちに合掌」をスローガンとして、「敬いの心で安穏な社会づくり、人づくり」を運動の目標とする宗門運動の中の一つの活動とされている。
法華経に説かれる常不軽菩薩の但行礼拝の精神、すなわち敬いの心で全ての人に接するという信念を堅持し、確固たる意思を持って立正平和を希求する活動を心がけねばならない。
この場合においても、最も重要なのは変わることのない信念、確固たる意思である。それなくして、「平和への願いが未来まで届く」はずもない。
私たちは、70年にわたって戦争によるすべての死没者を悼み供養してきた。そしてそのことを通して、未来永劫にわたる不戦の誓いを立て、それを世界中の人々に呼びかけてきたのではなかったのか。終戦70年は、単純に戦争が終わって70年なのではなく、戦争という愚かな選択をすることは2度とありえない、終わった、そういう意思表明をし続けた70年だと誇りを持って宣言すべきである。
それゆえに、「終戦70年」を「不戦の誓いの70年」と理解したいと思うのである。
行政府及び立法府は、憲法解釈を変更し、昨年の集団的自衛権行使容認の閣議決定に続いて、去る9月19日には安全保障関連法案を成立させた。
しかし私たち日蓮宗徒は、70年間変わることのなかった信念を今後も変えることなく堅持し、法華の徒として敬いの心を持ちつつ、不戦の誓いを新たにすべきだと信じるところである。
(論説委員・中井本秀)

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