論説

2015年9月20日号

お彼岸には六つの行いを

今年の秋の彼岸会は9月20日の日曜日が入の日となり、お中日の23日まで祭日とも重なって5連休となります。世間では、春のゴールデンウイークと同じくらい行楽の人出で高速道路などは相当混雑するのではないかと、数日前からテレビなどで注意を促していました。行楽も結構ですが、お彼岸は仏教の教えでは仏さまの世界のことをいい、仏さまのような心になるよう修行をする期間として7日間があるのです。お彼岸といえばお墓参りやご先祖供養をして過ごすことも大切だということを忘れないでほしいものです。
7日間のうち、お中日をはさんで前後6日間をそれぞれ六波羅蜜の布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧という6つも修行にあてはめています。この6つの修行項目は人が生きていくうえで基本となる大切なこととして定められているものです。私たちが日常、円満な家庭生活を営み地域社会の中に生きていくのに、この6つをしっかり実行し心得ていれば、間違いなく穏やかな日々を過ごしていけるでしょう。
仏教の基本的な実践方法として、戒・定・慧というのがあります。これを三学といいます。平たく言えば、生活のきまりをまもるのが戒律、静かに心を見つめ身辺を見直し反省するのが禅定、真理を悟りよこしまな考えをもたないようにするのが智慧、ということです。この3つも六波羅蜜のなかに含まれます。
お釈迦さまがお悟りを開いて最初にお説きになった教えは十二因縁といわれ、苦の原因となる根本を明らかにされました。それは執着(とらわれ)・欲望・無明(無知)が六根(眼耳鼻舌身意)を使って生ずるのであると説かれました。四法印という教えには、この世の中はすべて無常(変化するもの)である、そして実在しているように見えるが実は永遠のものは何ひとつないということであるとも説かれています。諸行無常、諸法無我、涅槃寂静、一切皆空という教えがそれです。
お釈迦さまはこの悟りによってあらゆる苦の根源を断つことができただけではなく、この世のなかの実相はもちろん、三世(過去・現在・未来)にわたる因果を明らかにされました。即ちお釈迦さまは実は久遠の昔から覚者であったことを明かされたのです。それが法華経の寿量品に説かれています。お釈迦さまの願いはすべての者を自分と同じ仏に成すことであるとお仰せになりました。お釈迦さまと同じようになるための基本的な6つの修行なのです。お彼岸の期間はそのために定めてあり、一年に一番良い季節の3月と9月、暦では昼と夜とがちょうど半ばにある日を彼岸会としたのでしょう。もっともこれは日本独特の彼岸会の解釈ですが、古くから用いられてきました。全国的にお彼岸ですからこの日ばかりはお寺へお参りしたりお墓参りをして、ご先祖へ報恩感謝の誠をささげ、自身の心の修行も怠りなくするというのが大切なのです。
世界中のみんながお釈迦さまのような人になれば、戦争も起こらないでしょうし、家庭も安穏でしょう。お釈迦さまはそれを浄土といわれ彼岸(悟りの世界)といわれたのです。誰も彼もみんなで彼岸を実現するように精進いたしましょう。今日はお彼岸の入り9月の20日です。
(論説委員・石川浩徳)

illust-ronsetsu

2015年9月10日号

世代を超えた遺言を‐3世代ハピネス‐

幼稚園、小学校が一斉に夏休みに入った最初の週末に、出張した夫が興味深い光景を話してくれた。羽田空港から福岡空港までの国内線でのことである。大きな荷物を夫婦でカウンターに預け、出発ゲートの入口で父親だけが子どもたちとその母親を見送る。母親は、空港で準備されたベビーカーを争奪し、土産店に流れる。やがて、土産袋と機内持ち込み荷物に押し潰されそうな子ども達は、母親に連れられゲートに到着。そこで乗り捨てられたベビーカーは20台を超えた。飛行機の搭乗優先者第一位として日常では考えられない程の母子たち、又は子どもたちだけの長蛇の列となったという。機内の話も面白かったが、それは割愛。
約2時間のフライト後、福岡空港の到着ロビーでは、ドアが開くたびに「○○ちゃん!」と萬面の笑みで手を振る老夫婦の姿。我が娘と愛してやまない孫たちとの再会を心待ちにして空港まで迎えに来ていた夫婦は、30組を有に超していたという。お盆休みまで仕事の父親を残して、一足先に母親本人の実家へ帰省するという、新しい帰省の姿であろう。
千葉県にある東京と名のつく一大テーマパークもこの夏に「3世代ハピネス」をうたったCMを流している。ここ近年、家族形態が多様化していく中で、3世代家族のあり方や意識が大きく変化し、それと共に高齢者の家族の中での役割や立場も変化していると思う。毎日新聞社人口問題調査会実施の「全国家族計画世論調査」によれば、「老後は、子どもに頼るつもり」と答えた人が50年で5割近く減少している。それと関連してか、子ども世代も親子間において、平等の役割分担という意識が増加していることが分かる。
また別の研究では、若者の高齢者への態度(高齢者意識の形成)は、自分の祖父母との関わりの質に起因し、この祖父母と孫の良好で質の高い関係づくりは、母親(娘又は嫁)と祖母がいかに良い関係を持っているかということが大きく影響するという。「ママとばあばが仲良し」が祖父母と孫が幸せに繋がるということなのであろうかと思う。
9月、我園も長い休みを「じいじとばあば」の家で過ごした子どもたちが登園してきた。日本にとって原爆投下、終戦を迎えた大事な8月を「じいじとばあば」と過ごすことができたのであれば、この子たちが、70年前の日本の姿を、そして戦争という痛ましく悲しい経験を語ってもらえたかなと期待する。後につながる肉親には、このような不幸やトラウマを味わうことがないようにと願う人びとの心の内が、当時のことに関して口を閉ざしてしまう事や「子どもに迷惑をかけずに」という老後の生活スタイルになっているのであろう。本当にありがたい親心である。しかし、日本がしてしまった反省も含めて、ぜひとも悲劇の経験を「絶対に繰り返してはいけない事」として伝えてほしいのである。
今、この平和が当たり前でなく、御霊となった先代たちの悲しい経験と、その後の努力の上にあるということを伝えてほしいのである。以前、在園の保護者に向けて「お寺の幼稚園に入園させて嬉しかったことは何ですか」という問いに対し、「実家のお墓や仏壇に、親が指示しなくとも自ら手を合わせてくれた我が子の姿を見た時」という答えをたくさんの保護者が寄せてくれた。孫と過ごす貴重な時間だからこそ「大好きなじいじとばあば」から世代を超えた遺言のように、平和と戦争についてそれぞれの言葉で伝えてほしいと終戦70年を迎えたこの夏思うのである。
(論説委員・早﨑淳晃)

illust-ronsetsu

2015年9月1日号

戦後70年の立正安国・お題目結縁運動

文明とは相互に敬うこと
お題目の篤信者・菅沼公次さんが、今年の6月に91歳で亡くなった。
菅沼さんは5人兄弟の四男であった。戦時中、兄弟は20歳前後であったため、5人とも第二次世界大戦に徴兵された。
長兄は29歳で、次の兄は26歳で、3番目の兄は24歳で戦死し、3人の兄たちを失った。特攻隊に志願した弟と復員したが、兄たちや戦友、多くの知人を失った菅沼さんは、戦争で犠牲になった方々を供養して、ひたすら世界平和を祈る生涯を送った。
平成6年は終戦50回忌の年であった。菅沼さんは兄たちや戦没者の50回忌供養のために、日向山平和公園に藤井日達上人の「諫言碑」を建立した。
「文明とは電灯のつくことでもない/飛行機のあることでもない/原子爆弾を製造することでもない/文明とは人を殺さぬことであり/物を壊さぬことであり/相互に親しむことであり/相互に敬うことである」
この諫言は、藤井上人が昭和25年、「平和国家建設の方針」に書かれたものである。
悲惨な戦争によって多くの尊い人命を亡くした日本が、戦後平和国家として世界に貢献していくには、法華経の相互礼拝の実践しかないというこの真理は、世界人類恒久平和のための規範である。
この諫言碑を建立した菅沼さんは、それ以来毎朝の勤行の時には、戦死した兄たちや戦友の名前を読み上げて供養した後、必ずこの諫言を読んでお題目を唱え続けた。
戦没者の供養と平和の祈りに生きた菅沼さんは、よき伴侶に恵まれ、孝心の子女を授かり、幸せな人生をまっとうした。平和を祈る功徳であったと思う。
戦後70年に生きる私たちは、今日の平和の礎になった戦没者の心を深く受け止めて、立正安国・お題目結縁運動に一心に精進していこう。
一切衆生の同一の苦
8月6日の広島原爆忌の日の朝日新聞文化文芸欄に、朝日俳壇・歌壇の2選者の対談が載っていた。
その選者の話によると、最近の時代の影響か、自然を詠むことの多い俳句にも、安保法制がらみの作品が多くなってきたということであった。
70億の二人と思ふ夜長かな
そこには千葉新一さんという方のこの句が挙げられていた。
夫婦は70億人という地球人類のなかのたった二人だけれども、この今の世の中のことを心配して、夜長に語り合っている情景が目に浮かぶようである。
「二度と戦争はしまい」と誓って平和憲法を遵守し、平和国家日本の構築に努力して70年、安保法制がらみで再び戦争に巻き込まれはしないかという危惧が、日本の国の人びとのなかに持たれてきている。
「戦争はしない」という誓いのなかには「戦争はするな」という行動が伴うはずである。世界の何処に起きる戦争でも、人類70億の地球上で起きる戦争である。我がことの如く受け止めて、戦争はするな武器は捨てろと行動して、平和への努力をするのが日本の使命ではないか。
日蓮聖人は『諫曉八幡抄』で「一切衆生の同一の苦は悉く是れ日蓮一人の苦」と仰せになっている。「同一の苦」とは戦争による人類の地獄の苦しみと受け取ってもいい。それを聖人自身の苦しみとして、戦争のない立正安国のお題目を唱えて生きるというのだ。
お題目を信奉する私たちは、この日蓮聖人の心とひとつになって、立正安国・立正世界平和のお題目の信仰を弘めていこう。
(論説委員・功刀貞如)

illust-ronsetsu

side-niceshot-ttl

写真 2023-01-13 9 02 09

新年のご挨拶。

過去の写真を見る

全国の通信記事

  • 北海道教区
  • 東北教区
  • 北陸教区
  • 北関東教区
  • 北関東教区
  • 千葉教区
  • 京浜教区
  • 山静教区
  • 中部教区
  • 近畿教区
  • 中四国教区
  • 九州教区

ご覧になりたい
教区をクリック
してください

side-report-area01 side-report-area02 side-report-area03 side-report-area04 side-report-area05 side-report-area06 side-report-area07 side-report-area08 side-report-area09 side-report-area10 side-report-area11_off side-report-area12
ひとくち説法
論説
鬼面仏心
購読案内

信行品揃ってます!

日蓮宗新聞社の
ウェブショップ

ウェブショップ
">天野喜孝作 法華経画 グッズショップ
">取扱品目録
日蓮宗のお店のご案内
">電子版日蓮宗新聞試読のご登録
">電子版日蓮宗新聞のご登録
日蓮宗新聞・教誌「正法」電子書籍 試読・購入はこちら

書籍の取り扱い

前へ 次へ
  • 名句で読む「立正安国論」

    中尾堯著
    日蓮宗新聞社
    定価 1,365円

  • 日蓮聖人―その生涯と教え―

    日蓮宗新聞社編
    日蓮宗新聞社
    定価 826円+税

書評
正法
side-bnr07
side-bnr07