オピニオン
2015年8月10日
仏の心で仏国土に
ある日、朝勤前に本堂から境内をながめると、宗祖遠忌報恩塔や三界万霊塔、戦没者慰霊碑などの石塔に「みかん」が置かれていた。
大きなみかんにマジックペンで「おじぞうさま、めしあがってください」と書かれていた。この石塔は残念ながら「お地蔵さま」ではないけれど、どなたかの感謝・供養の心に思わず手を合わす。
ふと「一見四水」の教えを思い起こす。人間には「水」と見えるものが、天人には「宝の池」、餓鬼には「血の川」、魚には「家宅」に見える。同じものも見る者・心によってさまざまに変わる。
「みかん」の施主には、石塔はみな「お地蔵さま」に見えるのか? 笑い話ではない。人は仏の心も地獄や餓鬼の心も持っている。私たちの住むこの世界を仏の心で見れば浄土(安穏な仏の世界)、凡夫の心で見れば穢土(苦しみの世界)である。
全ての人が持っている仏の心で過ごすならば、此の世が、この社会が仏国土に変わるのです。
(山梨県第3部布教師会長・柏原啓修)