ひとくち説法
2015年7月20日号
ろうそくのように
朝夕に、お仏壇にお参りされる時、ろうそくを灯します。ろうそくは芯に火を灯され、自らの身を削りながら火を灯し続けます。あとわずかになっても使命をまっとうします。
人も然り。両親から命の灯をいただき、生をうけ、人生が始まります。それと同時に平等に与えられるものは「死」であります。どんな方でもそれは避けて通ることはできません。しかし、それを悲観するのではなくその終わりを理解し受け入れ、一時一時を大切に過ごすことが大事です。
ろうそくの灯は、ただ点いているだけではありません。その火は周りを明るくし、温かさを分けてくれています。
私たちも、命の灯をいただきその温かさや、明るさを周りの人びとに与える使命を持っています。この世に生をいただいたということは、一人ひとりに仏さまが役割を与えて下さったのです。それを全うすることが生きるということです。
(山梨県1部布教師会長・筒井治稔)
2015年7月10日号
思いやる社会・合掌の心の実現
日本人のおもてなしの心は、今や世界に誇れる精神文化であり、私たちを取り巻く社会は、とても便利であり、優しく親切です。しかし、世の中が親切になり過ぎたせいなのか、個人の責任が軽視され、社会の秩序や公共のマナーを守る気持ちが薄れてきているようにも感じます。自分さえよければ他人の迷惑には無関心といった行為を目にすることが、少なくありません。
社会全体が平和でなければ個人の幸せはなく、社会全体の平和もまた、個人の小さな努力の積み重ねによってしか成し得ないものと考えます。車に乗れば歩行者を思い、電車やバスに乗ればお年寄りや妊婦のことを思いやり、公共のトイレ等は汚さぬように使用するなど、お互いが気持ちよく人生を生きるためのマナーを心掛けていきたいものです。そんな心掛けが尊い合掌の心に通じるのであり、身近な所から、「立正安国」の小さな輪がやがて大きく広がっていくものと信じます。
(栃木県布教師会長・野澤壯監)
2015年7月1日号
伝 言
90歳になる妹は、80年前に若くして逝った兄の夢を見た。幼少だった彼女の記憶のままの口数少なく寂しげな顔をしていた。とても気になった。多かった兄妹も今は自分一人。来月の祥月に法事をすることになった。
本家の甥から電話。「叔母の夢の件でお世話になります」。自分が生まれる前から、夢の兄(伯父)を含め六霊の位牌を護って来たが、古いので今回新しくすることにした。繋がりが分からないので戸籍を調べると、「夢の兄」には位牌も無くわずか1ヵ月で逝った弟がいた。一緒に供養することになり名前と命日をいただく。年回表を見る。大正5年百回忌。しかも夢の兄の10日後が命日。「間にあった」。戒名を授与し位牌開眼の供養となった。「婆ちゃんの夢大したもんだ」と甥の言葉。
常住此説法の仏壇のご本尊を中心に、位牌諸霊も日々に『関わりの命』を持つ。来月は戦後70年。平和への諸霊の伝言、心の耳でしっかりと。
(茨城県布教師会長・長谷川玄應)