オピニオン
2015年5月10日
遷化とは
本年2月、3月と続けて大変お世話になった先輩僧が他界した。僧侶が亡くなることを遷化(せんげ)という。
僧侶は亡くなると、仏さまのもとへは向かわず、教化する場を遷すことからこう言われるのだ。亡くなった本体は来世に遷る。しかしそれだけではないのでは、と思った。教化の場が遷るとは、来世はもちろん現世にも通じるはずだ。
現世にあっては「信仰・精神の継承」を意味していると考える。先師の築いた「信仰」は、後に続く者たちへ遷されなくてはいけないのだろう。
さらに私は檀信徒の皆さまとの何気ない会話から発せられる「言葉の持つ魂」に生きるエネルギーを頂いている。これは「精神の継承」であろう。
本年戦後70年の節目を迎える。世では改憲・集団的自衛権が議論されている。読者の先輩方には会話を楽しみ、若き者たちへ自らの経験を遷し、「言葉の魂」で平和への精神を授けて下さることを願う。
(千葉県西部布教師会長・髙鍋隆盛)