2015年5月1日
「香藝院爽進日壽居士」2月21日に59歳で亡くなった
「香藝院爽進日壽居士」2月21日に59歳で亡くなった歌舞伎の十世坂東三津五郎(大和屋)の法号である。香り立つような芸風を表している。5年前身延山久遠寺法主内野日総猊下の管長シュウニンの御祝に祝舞で華を添えた颯爽たる三津五郎丈の姿を想い出す宗門人も多いだろう▼襲名披露興行で観た通称「馬盥の光秀」(時今也桔梗旗揚)は格別であった。法華に縁ある本能寺の場で主君春永(織田信長)に恥辱を受けた光秀が、謀叛の心を固めていくその心理描写に圧倒された。また若手育成に手腕を発揮していただけに惜しい死であった▼「伝統」という言葉に、長い歴史を通して培い伝えてきた風習や制度だけでなく、信仰や学問・芸術も含まれることを知った。その中心をなす精神的在り方を問う言葉なのだ▼日蓮宗では700遠忌前進座の「日蓮」を全国各地で上演し、立教開宗750年では国立文楽劇場の「日蓮聖人御法海」の復活興行を支援し、来るべき御降誕800年には「スーパー歌舞伎」を公演することが決まったと聞く。伝統を守りながらも今という時代を反映させていく新しい演出法を楽しみに待とう▼京都に眼を向ければ6月2日に妙顯寺で大光琳祭が行われる。本阿弥光悦の法華村から始まる法華文化の華と謳われる尾形光琳の没後300年を記念するもので、協賛して本法寺も宝物を公開するという▼伝統は伝灯(教えを伝えていく)に通じる。信仰と芸術を共に伝える企画を楽しみにしている。(雅)