オピニオン

2015年4月10日

表現の自由と宗教

イスラム教の風刺画を掲載していたフランスの出版社がテロリストによる襲撃を受け、多くの人たちが死傷しました。まずもって、亡くなられた方々の冥福をお祈り申し上げる次第です。
この事件は表現の自由と宗教の関係について多くの問題を私たちに提起しています。一般のイスラム教の人たちは「これらテロリストは、自分たちが考えるイスラム教徒ではない。イスラムではこのような殺人は許されない」と事件を起こしたテロリストを非難し、一般のイスラム教徒とこれらテロリストを混同しないように願っています。
このようなテロ行為には私たちはどのように対応していけばよいのでしょうか。私は、イスラム過激派のテロリズムを鎮めるのは、キリスト教徒でも、無宗教者でもなく、イスラム教徒だと思っています。大多数のイスラム教徒はテロを認めません。イスラムの人達が、イスラムの信仰からテロリズムを排除することで、テロリストは自分たちの行動規範の根本を失います。宗教的基盤を失ったテロ集団は求心力を失っていくでしょう。その意味で私たちは、一般のイスラム教徒を信じ、彼らがテロリズムをイスラム社会から排除することを支援していくことが必要です。
今回のフランスでの出版社襲撃事件に対して、世界中が表現の自由の大切さを訴えました。しかし気をつけなければならない点もあります。イスラムに対する誤解と偏見を助長する危険性を大きく孕んでいる記事を見ることも多く、それらの記事によって、一般のイスラム教徒をも偏見の対象にしてしまい、彼らがイスラム系テロリストの活動に理解を示すようなことは避けなければなりません。
報道は、権力の暴走を防ぐために、表現の自由を保障されています。彼らから発信される情報は、社会に流れを作り出し、権力者側に横暴を許さない環境を作ります。したがって、表現の自由が保障されるのは、相手が権力者であるということです。しかし報道側が気をつけないと、表現の自由に対する保障は、表現する手段において優位に立つ者が、表現する力を持たない弱者を痛めつけることを正当化することにも繋がる危険性を孕んでいます。
最近出版されたフランスの風刺画で、福島の原発から煙があがり、防護服を着た二人の作業員の前に長さ数㍍もある鳥の足跡が地面についた絵があります。これは放射能の被爆によって鳥が巨大化したことを想像で描いたもので、福島の被害者に対する差別を助長する内容です。本来彼らが批判する対象は、原発を管理運営する責任者たちであって、原発事故の被災者ではありません。この風刺画は、周辺で原発の風評被害にあっている原発事故の被災者をも対象としている点で、許されるものではありません。
宗教もひとつの大きな権力と言えないこともありません。しかし、報道の対象となるべきは、宗教の組織にある指導者であって、宗教そのものではありません。宗教そのものを否定することは、その信仰をもって日常生活を送っている信徒の存在をも否定することになります。宗教を前近代的なものとみなし、それを教育してやるといった考えが少しでも、報道側にあれば、それは報道側が権力者として、信仰している弱者を踏みつけているのと同じことになります。最近の報道は、表現の自由の対極にイスラムの信仰を置こうとしているように見えます。報道に携わる方々には、ぜひ表現の自由の対象について再確認をしていただきたいものです。
(論説委員・松井大英)

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