鬼面仏心
2015年1月1日号
宗門運動が種まきから育成を経て4月から始まる開
宗門運動が種まきから育成を経て4月から始まる開花の初年にあたり届けたい言葉がある。「幸せな子を育てるのではなく、どんな境遇におかれても幸せになれる子を育てたい」。民間から皇太子に嫁がれた美智子皇后さまの母としての願いである。自我偈の最後の一節「毎に自ら是の念を作す。何を以てか衆生をして無上道に入り、速やかに仏身を成就することを得せしめんと」。仏の大慈大悲の願いの一分に通じるものを感じたからだ▼皇室番組で美智子さまのドレープが幾つも重なったドレスが目にとまり、京都清涼寺の釈尊立像の衣のラインを連想した。調べてみると、デザイナーは植田いつ子さんで日本の伝統文化を取り入れた優雅なドレスは海外でも評判が高く、美智子さまの服のデザインを36年間手がけたという。子供の頃近くの寺で見た仏像の衣紋の優美さに魅せられ、和の色を使い、佐賀錦などの日本的素材を駆使して「この国のための装い」を目指した▼植田さんは昨年6月に85歳で亡くなった。お別れ会に美智子さまは遺品のあずき色の服を召して出席された▼仏師の西村公朝さんは、仏像の立ち姿は行動を促し「決断を下せ」と教えている姿だという。仏の衣がモチーフの服を召されている美智子さまの立ち姿が、被災地で人びとと接しているお姿と重なったとき、神々しく見えたのは私だけではあるまい。衣を着る身としては自省頻りである。(雅)