2015年1月20日号
身延山久遠寺お年頭会
身延在山中の日蓮聖人のもとへ弟子信徒が訪れ新年の慶賀を申し上げた故事にちなむ伝統のお年頭会が総本山身延山久遠寺(内野日総法主)で1月13日に営まれた。今年、卒寿(数え90歳)を迎えられた内野法主猊下とともに参列した僧侶檀信徒約400人が祖願達成と宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」推進の誓いを新たにした。
祖師堂に昇堂した内野法主猊下はご宝前で供膳や献酒などを行い、日蓮聖人の御魂へ報恩感謝を捧げた。また参列者も焼香で供養を捧げた後、異体同心でお題目を唱えた。続いて、日蓮聖人が駿馬に乗られ信徒の先祖供養のために館に向かわれたという古式に則り曳馬式が行われ、内野法主猊下が芦毛の馬を愛でられた。
祝宴では内野法主猊下は、六老僧ゆかりの寺院5ヵ寺の貫首らとともにお盃の儀を行い、新年を寿いだ。また内野法主猊下は新年のご挨拶で新年にあたり『法華経』から「慈悲喜捨」の言葉を認められことを述べられた後、「この四種の心=四無量心を一つのつながりのなかで修得することが説かれています。激動の時代を迎え、社会全体が大きく変わろうとしております。四無量心は人びとが新たな行動をする際の大事な指針となることでしょう。ただし何も捨てずに、そのまま新しいことを始めようとしてもうまくはまいりません。自分が今までに大切だと思っていたものの多くをまず捨て去ってこそ変革を行う力が生まれます。本年の干支は乙未ですが、乙とは草木の芽が曲がりくねっていても、そのなかで歩みを続けていくことを示しています。また未は繁茂した枝葉末節を払い落とし新しい姿に変わることを示唆し、まさに大きな転換を求めております。日蓮聖人のみ魂を感じ、本日からのお題目の修行にご精進いただき、皆さまが自己の変革に取り組み、本年が皆さまにとって光り輝くものになりますようお祈り申し上げます」とご教示された。
信徒総代の堀内光雄氏は祝辞で昨年の数々の自然災害に触れ「私たちを取り巻く環境は決して安穏ではありません。世界経済の低迷や各地で勃発する紛争など暗雲に包まれています。そのなかで法華経お題目が必ず私たちを明るい未来へ導いてくださると信ずる次第であります。今年は終戦70年にあたります。私たちは多くの戦没者の犠牲の上に生かされています。日蓮聖人の不惜身命の精神を指針とし、精進したいと思います」と述べた。
参列者の一人は「身延山に参拝し、日蓮聖人に新年のご挨拶ができて嬉しい。この一年しっかし自分の信仰を深め、人のために尽くしたい」と語った。
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お年頭会=日蓮聖人身延山ご入山の翌年となる建治元年(1275)正月に、直弟子や身延山久遠寺開基檀那の波木井実長公らがご草庵を訪れ、年頭の賀詞を申し上げたことに由来する。その後、日蓮聖人を導師に新年を寿ぎ、妙法弘通・立正安国を祈られたと伝えられる。