オピニオン

2015年1月10日

「ありのまま」を考える

昨年末は一年の出来事を振り返りながら、その時の風景を思い浮かべ、時に胸熱くなり、時にがっかりし、時にこみ上げてくる笑いを押し殺したりして過ごした。その笑いを誘うのが、映画「アナと雪の女王」を観た子どもたちの後日談と姿である。
当幼稚園の園庭遊具の高いところは、遠く東京都と千葉県の境を流れる江戸川の土手が眺められる展望の高さがあり、大人がそこに立っても心地が良い。そしてここは、時代によってシチュエーションが変化する。例えば流行しているヒーローの基地やエベレストの山、海賊の隠れ家などであるが、今年、どうやらほとんどの女児にとって、ここが氷のお城の展望台に見えたらしい。皆、順番待ちの行列を作りやっと回ってきたお城の展望台に立ち、「ありのままのーすがたみせるのよーありのままのじぶんになるのー」と空に向かって熱唱し、満足といわんばかりの顔で降壇。次の人に譲るという一連の流れが面白くて、私も彼女たちに絶賛の拍手を送った。
一人ひとりを思い出すと愛おしくて、こみ上げてくる笑いの中に、「そうだよ。君たち! ありのままで行(生)きなさい」という思いが重なるのだ。「ありのまま」という言葉は、ともすると「他人がどうであろうと、自分の本能赴くままに振る舞いをしてもよい」などのわがままで、自分勝手な行動も肯定してしまうように思われる。しかし、私の「ありのまま」を生きてほしい子どもたち、人々への思いは、ベクトルが違うのである。反社会的な態度や行為のことではなく、自分というすべてを受け入れ、大切にするという心もちや思考についてそう思うのである。幼児は、常に私たちに「見て! 見て!」と言って自分を様々な姿で表現する。例えば、逆上がりや自分の描いた絵を得意げに見せてくれる時の誇らしく自信に満ちた姿は、まさに「ありのまま」である。自分に少しも疑いのない晴れ晴れとした表情に、大人の私たちが忘れかけていたものを思い起こしてくれるのだ。
しかし、社会性が最も育つ頃に大人の都合で評価されて育ってきてしまった子どもや、過保護・過干渉によって自分で感じて自分で考えて行動する機会が乏しかった子どもたちは、「ありのまま」を生きにくくなってしまう。子どもたちが歌う歌の原文「Let it go」(レットイットゴー)が「ありのまま」と名訳されたのであるが、この「Let it go」は「捨て置け」という意味も持っている。つまり、ありのままにたどり着く入口には、捨て置く何かが存在するということがあるのではないか。それは、自分の中に抱えている恐れ、執着やこだわり、敷いてはそれを支配する煩悩を捨て置けということなのではないだろうかと思う。
お釈迦さまは、「悟りとは与えるものでも、人から与えられるものでもなく自らが導き出すものである。」と四諦「苦、集、滅、度」を示し、問題解決方法を示してくださった。ありのままに生きるためには、この道筋が存在するのである。そして、ありのままに生きられる時、精一杯自分を活かす喜びを味わいながら、それを受け取ってくれる周りに目が開き、自分自身が人のために活かされる喜びを味わうのかもしれない。自分を苦しめているものからの脱却は、自分がどうしたいのか、どうせねばならないのか、己にかかっている。逆転の発想として言うならば幸せというものは、きっと自分の考え、つまり己次第なのだ。
(論説委員・早﨑淳晃)

illust-ronsetsu

side-niceshot-ttl

写真 2023-01-13 9 02 09

新年のご挨拶。

過去の写真を見る

全国の通信記事

  • 北海道教区
  • 東北教区
  • 北陸教区
  • 北関東教区
  • 北関東教区
  • 千葉教区
  • 京浜教区
  • 山静教区
  • 中部教区
  • 近畿教区
  • 中四国教区
  • 九州教区

ご覧になりたい
教区をクリック
してください

side-report-area01 side-report-area02 side-report-area03 side-report-area04 side-report-area05 side-report-area06 side-report-area07 side-report-area08 side-report-area09 side-report-area10 side-report-area11_off side-report-area12
ひとくち説法
論説
鬼面仏心
購読案内

信行品揃ってます!

日蓮宗新聞社の
ウェブショップ

ウェブショップ
">天野喜孝作 法華経画 グッズショップ
">取扱品目録
日蓮宗のお店のご案内
">電子版日蓮宗新聞試読のご登録
">電子版日蓮宗新聞のご登録
日蓮宗新聞・教誌「正法」電子書籍 試読・購入はこちら

書籍の取り扱い

前へ 次へ
  • 名句で読む「立正安国論」

    中尾堯著
    日蓮宗新聞社
    定価 1,365円

  • 日蓮聖人―その生涯と教え―

    日蓮宗新聞社編
    日蓮宗新聞社
    定価 826円+税

書評
正法
side-bnr07
side-bnr07