オピニオン
2014年11月20日
子どもを大切にする国を願って
東京の老舗ホテルで雛まつり展を観た時のこと。一泊した翌朝、病弱な乳児期の長男が突然這い這いをした場所だ。絢爛豪華かつ繊細優美な雛文化に接するなかに、江戸後期の這い這い人形が待ち受けていた。ぐらっとくる感動。私は、子どもを大切にする江戸の時空を遊歩していた。
かつての貧しくも多産多死の時代、人は子どもの発育と健康を願い、神仏にそれを祈った。古い墓石や過去帳に嬰子や孩子が何と頻出することか。這い這い人形も、あるいは無数の悲しみを懐いた祈りの表出だったのかもしれない。
さて、日本は近代以降、江戸文化を否定しつつ何を求めたのか。富国強兵策で戦争を煽り、戦後も経済成長を駆り立てた。そして福島原発事故。子どもが最大の被害者ではなかったか。私たちは太古から次世代の「教主釈尊の愛子」を守ってきたはずだ。完璧なエコ社会で生まれた件の人形は野蛮で愚かな2百年後の今をどう眺めているのか。
(宮城県布教師会長・梅森寛誠)