書評
2014年7月1日
マンガ『今日蓮! 日諦さん』
「今日蓮」と呼ばれた日諦上人をご存じだろうか。栄位栄達には興味を示さず、自らの修行と法華経弘通に邁進した明治期に生きた僧侶だ。このたび教化センター九州(島原市護国寺内)から、マンガ『今日蓮! 日諦さん』が発行された。原作は中村潤一著『玄き海から』、画は柴田連で「あんのん」(長崎熊本教化センター発行)で連載したものを一書にまとめた。
日諦上人は天保12年(1841)福岡県北九州市で生まれ、3歳で母が死去。母を弔うため12歳で学静と名乗り出家し、京都、金沢、江戸の新居日薩上人のもと研鑽を積んだ。明治維新を経て、腐敗堕落した僧風に納得できず、25歳で日諦と名を改め10年間、山梨県内船で厳しい荒行に入った。廃仏毀釈の混乱で、投獄され、故郷に送還されたが、上野家の帰依を受け、後に龍潜寺となる屋敷内の持仏堂で法華経の布教を始めた。明治10年、千葉県大本山誕生寺の貫首となり再建の大役を果たした。その後、故郷・龍潜寺に戻り、九州一円の布教に邁進、明治38年(1905)に遷化した。今はその当時を知る人も少なくなったが、「今日蓮」「生き仏さま」などと称され、親しまれている。
また、九州の偉人として「高麗日延上人」「高麗日遥上人」が収録されており、法華経に人生を捧げた偉人たちの確かな生き方が一途に伝わる。
(島原護国寺内教化センター九州発行 定価500円税込み)
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『法華経の教え』渡邊寶陽著
わかりやすい法華経の案内書
上田本昌
わが国に伝来した仏教経典のなかで、特に著名な『妙法蓮華経』はお釈迦さまが世に出られた本懐の経典であり、「説きがたく・入りにくい」法門が説かれたお経として、古来有名であります。しかし数多くの人師や論師によって理解しやすく信じやすいように、解説が行われ、大多数の人びとにより読誦され、信仰されるようになりました。その結果、広く芸術・文化の多方面にわたって法華経の影響が濃厚に浸透していきました。それはと遠く現代にも及び、社会の全般にわたって裨益しているところであります。
従来、法華経に関する解説書は枚挙にいとまがない経ですが、ともすると難解難入であり、一般の読者にはとっつきにくい面がなきにしもあらずでした。今回、立正大学の元学長であった渡邉宝陽博士が、大本山ん池上本門寺の月刊誌『池上』誌上へ約30年ほど前に連載され、NHKのラジオ放送でも全国へ向けてお話をされた内容をもとに、さらに充実したものとして、このたび刊行された。
内容はまず〈お自我偈講話〉から始まって、「永遠の世界に蘇れ」というテーマで、お自我偈の難しい内容をわかりやすく説明しています。次に〈法華経の教え〉では、序品から始まって勧発品に至るまでに二十八品の各品にわたり、それぞれに重要な経説について平易に語りかけています。
最勝に法華経解釈の「構成表」を、本文中に引用された「和歌」の作者についての紹介があり、至れり尽くせりの新刊となっています。広く一般の人びとに最も適した本であり、必ずしも法華経に関心のある信仰者に限らず、仏教に対する知識のない人びとであっても、この本によって仏教を知り、その深い内容に魅せられることになることであろうと思われます。「法華経のおしえ」を知る上では、欠くことのできない一書であるといえるでありましょう。
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