鬼面仏心

2014年7月20日号

母親の50回忌法要を終えた

母親の50回忌法要を終えた60代後半の農夫が、お茶を飲みながら訥々と語った言葉が忘れられない。年老いた姑と10代の彼を先頭に幼い弟妹5人を残し、若くして亡くなった母。当時は近所の人が集まって手作りの葬式。お棺も桶の形をした棺桶で土葬だったという。葬儀が終わりいよいよ出棺という時、祖母は「アネー行くな-」と棺にすがりつき、子どもたちもお棺に取りついて泣き叫び、その手を振りほどき出棺するのが大変だった、と当時を偲んで目を潤ませた▼そう語った彼が、最近都市部での葬式に参列して驚いたという。式場は立派なメモリアルホール。葬式屋さんがなんでもやってくれる。祭壇も立派で、水車が回ったり、鹿威しまでついていたという。粗末な母の葬式とは雲泥の差で、母が可哀想に思いました、と語った▼その彼がフト気づいたようにつぶやいた。「祭壇も式場も立派だったが、涙を流している人は1人もいなかったなぁ」と▼葬式とは亡き人を悲しむ「葬」という〈心〉と、その人をみ仏の下に送る「式」という〈形〉の2つで成り立っている。祭壇や式場は〈形〉だ。本来それは悲しみの〈心〉から生まれるもの▼悲しみの心を失った時、「葬」は〈形〉だけの「式」になり、無用となる▼現代は人間がどんどん動物化しているという。「葬」に涙を流せなくなった人間が怖い。仏作りに努めなくては…。(義)

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2014年7月10日号

携帯電話をなくしてしまった。

携帯電話をなくしてしまった。サービスエリアのトイレに置き忘れ、気付いてすぐに戻ったが遅かった。きっと誰かが届けてくれると思い、何度もトイレを探しながら売店のレジで1時間ほど待ったが、ついに戻ってこなかった▼もしかすると拾った人が近所の交番に届けようと持ち帰ったのかも!などとポジティブに考えたりもしたが、かれこれ一週間が経とうとしている。残念だが、いい人に拾われた可能性はゼロに近い▼携帯電話といっても、ただの”携帯できる電話”ではない。あの小さな塊の中には、時計、お財布、カメラ、ビデオ、アルバム、日記、電話帳、辞書、など様々な機能が備えられている。最も悔やまれたのは、撮りためた写真だ。手軽に撮影できる携帯のカメラ機能は本当に便利で、しょっちゅう写真を撮っていた。あの携帯の中には娘が生まれてからの写真が二千枚以上保存されていたのだ。初めての公園、変な寝相の写真、大事に育てたアゲハチョウの旅立ち・・・なにものにも代え難い思い出を持ち去られた悔しさは徐々に怒りに変わっていった▼犯人に対する怒りでいっぱいになった時だった。以前に大切な時計を盗まれた経験を話して下さった先生の言葉を思い出した。「自分があんなところに時計を置かなければ、盗みをさせることもなかっただろうに」
あの時”まるで仏さまの言葉”と感銘を受けた一言に、鬼になりそうだった私の心は救われた。(蛙)

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2014年7月1日号

「宗教は必要か?」と若い人に質問されたことが

「宗教は必要か?」と若い人に質問されたことが何度かある。僧侶の私は「日本では生きるために必要だ」と答えている▼調査で「自分は無宗教だ」と答えている人が7割を超えているのに「宗教は大切か?」と問いかけると半数以上が「大切である」と答える日本は摩訶不思議の国である。キリスト教やイスラム教のような一神教の「神のご加護によって」とか「神のみ心のままに」という言い回しを「おかげさまで」という言葉と比較するとおもしろい。主語は何だろう? 神さま仏さま、ご先祖さま、運や天、まわりの人なのか、一体何のおかげだろう。思うに日本国民は宗教オンチではなく無自覚ではあるが、宗教性豊かな国民ではなかろうか▼聖徳太子の『法華義疏』から始まる日本の法華経文化の発展は最澄によって高揚したが、浄土教や禅の興隆により、法華経的宇宙観のなかの日本を自覚する人が皆無になった時、日蓮聖人が現れた不思議さを思う。今日、法華経に縁ある国で、無宗教と答える人が多数を占める現実に警鐘を鳴らさなければならないのはお題目に縁をいただく私たちだ。▼「出羽の守」をご存知だろうか。「…では」と外国の事例、見聞して得た知識などを引用して語る人を揶揄していう。しかし私たちは「法華経では」「宗祖の教えでは」と現代に合うように消化して伝える本物の出羽の守にならなければと思いを深めている。(雅)

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