オピニオン

2014年6月10日

当たり前のこと

先日、一度聞いただけでは信じがたいようなニュースが飛び込んできた。アフリカのナイジェリアで、学校にいた女子中学生2百人以上がテロ組織によって誘拐され、奴隷として売り払うと宣言されたのである。そのテロ組織は、女性が欧米的教育を受けることに反対だからだと主張しているという。聞けば、同じテロ組織によって、これまで何度も学校が襲われ、女子中学生が殺害されることがあったそうだ。もちろん、ナイジェリア政府がそのような考え方を持っているはずもなく、近隣諸国や欧米諸国と連携して事態収拾にあたっているとのことだ。誘拐された女子中学生たちが、一刻も早く全員無事に救出されることを願うばかりである。
このような事態は、日本に暮らす私たちには全く理解不能なことだ。現代の日本は、国民すべてが平等であり、思想信条も宗教も自由である。もちろんそれを社会に発言することも自由である。男女を問わず教育を受ける権利を持つ。しかも、それらの事柄については、いかなる者も、たとえそれが国家であろうとも、みだりに侵害することはできない。私たちは、それが当たり前のことだと思い込み、安心しきっている。
しかしながら、このナイジェリアの誘拐事件を通してこれらの事柄を見直してみると、私たちが当たり前と思い込んでいる事柄が、誰にとっても当たり前のことというわけではないことに気づく。
世の中には様々な価値観を持った人々が暮らしている。なかには、私たちが当たり前と思っていることと対立する価値観に固執している人もいる。当たり前のことを護ってくれるはずの様々な制度でさえ、勝手な解釈で自分たちに都合が良いように読み替えるなどということもよくあることだ。
したがって、当たり前のことを当たり前にしておくためには、それなりの努力が必須であるということになる。常に危機が忍び寄ってきているという自覚を持つ必要があろう。
ところで今、日蓮宗では立正安国・お題目結縁運動を推進中である。この運動は、常不軽菩薩の「但行礼拝」を範として、すべての人が互いに敬いの心で接して、敬いの心に満ちた人、そして安穏な社会を築き上げようというものだ。
人それぞれが持つ、個性、思想、宗教、そして価値観を大きく包み込む敬いの心、それこそが安穏な社会づくりの礎となるはずである。
日蓮宗の年度布教方針「合掌」は、今年で3年目になるが、敬いの心を合掌という形に現して、敬いの心を実践するという意味を持つ。家族、地域、そして世界中の人々に対して、合掌をもって接することで、自らの敬いの心を現し伝え、弘めようというものだ。
かつて、この布教方針「合掌」に関して、一部の方々から、なぜ今さら合掌なのか、当たり前のことではないのかという指摘があった。
その時に、私たちは本当に敬いの心をもって合掌しているだろうかと考えてみたが、合掌は、まだまだ当たり前のことになっていないことに気づかされた。
敬いの心を持った合掌が本当に当たり前となり、安穏な社会が当たり前となるよう努力を続けなければならないのだ。
本年度の布教方針には、「檀信徒のくらしの中に根づかせる」という副題もついている。檀信徒の皆さんにもこの趣旨をよくご理解いただき、敬いの心を持った合掌が当たり前のことになるよう、私たちと共に実践していただきたいと願っている。
(論説委員・中井本秀)

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