2014年4月10日
ぞうさん、ぞうさん、おはながながいのね
「ぞうさん、ぞうさん、おはながながいのね。そうよ、かあさんもながいのよ」。童謡「ぞうさん」の歌詞である。微笑ましい母子の歌と捉えられるが、詩人の故吉野弘さんは「〈おはながながいのね〉は、象の鼻が長すぎることをいくらかからかった者のいじわると読めないこともない」と解釈するが、「そういう意地悪すら〈そうよ、かあさんもながいのよ〉と、見事に肩透かしを食わせるのである」という。長い鼻はかあさんと同じだと、誇らしげにその悪意を消し去った小象の見事さである▼最近気になる出来事が2つあった。東京の新大久保などでのヘイトスピーチ(憎悪表現)とサッカーの浦和レッズ差別横断幕問題である。街中で外国人に対して「殺せ」「出ていけ」などと口汚く罵る。「日本人以外お断り」と英文で書かれた横断幕を入口に掲げる。どちらも、暗く嫌な気分になる。その人自身も、自分の心の荒みなど気づかないのであろう▼「憎んでもやはり苦しい。憎まなくても苦しい」(NHK〈ごちそうさん〉)。真珠湾攻撃で戦死した息子を持つGHQ幹部の言葉だ。争いではどちらも被害者といえる。されたからやり返すのでは、終わりがみえず、共に手を取り合うこともできない▼お祖師様は法華経を謗るものだけは決してお許しにならなかったが、他人の痛みをご自身の痛みと受け止められ、人を隔てることのないお方だった。(汲)