オピニオン

2014年4月1日

止まらない、子どもへの虐待

子どもへの虐待が止まらない。厚生労働省によると、平成24年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数は、6万6701件で過去最多となっている。この虐待の統計を取り始めた平成2年の1101件を「1」として考えれば、なんと60倍という驚くべき数値である。
また「虐待死」を見ると、3歳未満の子どもに集中しているが、特に出生直後の1歳未満の死亡数が突出して認められ、近年では、推定で年間100人近い虐待死が起こっているとも報告されている。
このような虐待相談件数の増加の背景には、子どもの虐待事件報道によって一般市民の関心や意識が高まり、通報が急増したことが考えられる。
特に平成22年以降は、近隣住人が子どもの「泣き声」を聞いて通報するケースが急増している。また警察等が受理するDV相談に同伴児がいた場合、その子どもの心理的ダメージの危険性を考え、通告されるケースも急増している。
子どもの虐待は国際的な理解として、一つには「養育者の暴力等により、子どもの身体や生命に危害を与えるもの」、そして「子どもの養育や世話の怠慢や放棄などによって、子どもの安全を損なうもの」という二つを合わせた問題として考えられている。
日本ではこの両者を取り込み、法律上、より子どもへの加害行為の強い印象を持つ「虐待」ということばが使われている。
今日、虐待問題は次の4つに大別されている。
①身体的虐待(生命や健康に危 険のある身体的暴行)
②ネグレクト(いわゆる育児放 棄で、保護の怠慢や拒否によ り健康や安全を損なう行為)
③心理的虐待(暴言や差別など により、子どもの心を著しく 傷つける行為)
④性的虐待(性的な暴行や性的 行為の強要など)
いずれも子どもの心と身体に長期に亘って深刻な傷を残すことになるのである。
しばしば養育者の口から「<RUBY CHAR=”躾”,”しつけ”>としてやった」ということばが聞かれるが、これはまったく身勝手な言い分である。もし仮にそれが愛情や躾であったとしても、子どもが親の行為に対して恐怖心や強い嫌悪感を抱いたり、子ども自身の成長、発達が著しく損なわれる場合には、その行為は子どもにとって「虐待」とみなされるのである。
このような、いわば体罰肯定派の親は少なからず存在するが、親の行為が子どもにとって有害かどうかという観点から判断されなければならない。また母親のなかには、子育ての悩みや不安、疲弊感、嫌悪感などのほかに経済的な問題も加わった場合には、そのストレスをうまく処理できず、虐待につながっていく場合も少なくない。
厚生労働省は、子どもを守るために次の5か条をあげている。
①「おかしい」と感じたら迷わ ず連絡(通告は義務、権利)
②「しつけのつもり‥」は言い 訳(子どもの立場で判断)
③ひとりで抱え込まない(あな たにできることから即実行)
④親の立場より、子どもの立場
(子どもの命が最優先)
⑤虐待は、あなたの周りでも起 こりうる(特別なことではな い)
子どもの命を守り、健やかに育てることのできない社会は、およそ文明国とは言いがたい。子どもたちを守るのは、私たち一人ひとりに他ならない。
私たちは今一度、日蓮聖人の「子にすぎたる<RUBY CHAR=”財”,”たから”>なし、子にすぎたる財なし」のことばを、自らの胸にしっかりと刻み込まなければならない。
(論説委員・渡部公容)

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