書評
2014年3月1日
『追っかけ!日蓮聖人レポート上巻』
日蓮聖人のご生涯とはどんなものだったのだろう? 石川教張上人の『人間・日蓮』をベースにご降誕から龍口法難まで日蓮聖人のご生涯を綴った全107篇からなる教化センター九州刊の『追っかけ!日蓮聖人レポート上巻』。一つのエピソードが2㌻でまとめられているため、感心してしまうほど読みやすい。私たちも一緒にお祖師さまの一生を追っかけよう! (教化センター九州刊・1200円+税)
『日蓮聖人御真蹟選集』
東京都西部教化センターから日蓮聖人のご真蹟を収録するシリーズの第四巻が発行された。前回の第三巻までが短編のご消息中心に掲載されていたのに対し、鎌倉で布教されていた頃の書状『問注得意抄』や身延に隠棲されていた時期の『四信五品抄』『聖人度々御難事』など、教義性の高い御書が5編選ばれている。
巻頭で講師の中尾堯立正大学名誉教授は、内容・表現ともに難易度があがるが、御書を読むことは、時空を超えて日蓮聖人に相見えることにつながると述べている。
(日蓮宗東京都西部教化センター刊・4000円+税)
「人を歩くシリーズ『日蓮と鎌倉』」
吉川弘文館から「人を歩くシリーズ『日蓮と鎌倉』」が刊行された。本シリーズは、さまざまな時代のテーマを取り上げ、「人と地域」をキーワードにオールカラー㌻で読み解く、歴史探訪書。本書では著者の日本思想史学者で群馬県立女子大学教授・市川浩史氏が、波瀾な人生を送られた日蓮聖人のご生涯から特に鎌倉の足跡を辿りながら、その思想と行動に迫る。
第一章「日蓮の履歴書」は誕生からご入滅までを、第二章「日蓮の思想と行動」は、他宗批判や日蓮聖人の信仰や思想を掘り下げる。著者は「過去の思想家の思索と今の研究者が格闘しなければならない」と、思想史を語る上で十分な配慮を重ねたという。また、鎌倉の街を何度も歩き、歴史的人物を具体的な場で見つめ直しており、一読の価値がある。
日蓮聖人ゆかりの地・鎌倉の街を散策する際にも役に立つ一書。六老僧や富木常忍などの大檀越ほか重要な人物の解説もあり、日蓮宗檀信徒におすすめの一書。
(吉川弘文館発行 定価2000円+税)