日蓮宗新聞

2014年3月10日号

お彼岸法話:慌しい生活の私たち

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愛知県田原市法華寺 豊田慈證住職

◆慌しい農夫
ある農夫が、朝早く起きて畑を耕そうとした。ところが、トラクターの燃料が切れていたので近くまで買いに行ってきた。途中でブタにえさをやっていないことを思い出して、納屋にえさを取りに行った。すると、ジャガイモが発芽しているのを発見した。これはいけないと思い、ジャガイモの芽をとっているうちに、暖炉の薪がなくなっていることを思い出して、薪小屋へ足を運んだ。
薪を持って母屋へ向かっていると、ニワトリの様子が変である。どうも病気にかかったらしい。とりあえず応急処置をほどこして、薪を持って母屋にたどり着いた頃には日がトップリと暮れていた。
農夫は、やれやれ何とせわしい一日であったと思いながら、一番大切な畑を耕すことができなかったことに気が付いたのは、床に入ってからだった。
農夫とトラクター 何とも慌しい農夫のお話ですが、ついつい目の前のことに追われて日々を過ごしてしまう、今の私たちの生活にも良くあてはまるような気がして、何とも身につまされます。
お釈迦さまは、
「いつも雑踏の中に身を置いていたのでは、正しい考えや判断・決断はできない。静かな所にひとり、身を落ちつけてみなさい。心が落ち着き、正しい判断が生まれる」
と教えておられます。
◆「お彼岸」はいのちに合掌の日
まもなく春のお彼岸がやってまいります。お中日(春分の日)をはさんで前三日、後三日の七日の間に日頃の慌しい日々をあらためて見つめ直し、心を見つめ直し、行いを見つめ直す大切な仏道修行の七日間(今年は3月18日から24日まで。中日は21日)がお彼岸なのです。
「春分の日」は「自然をたたえ生物をいつくしむ日」とされ、国民の祝日に定められています。当に「いのちに合掌」の日ですね。
彼岸というのは「彼方の岸」と書きます。つまり向う側の岸の事で、迷い、苦しみ、煩悩のない仏様の世界、浄土の世界です。その反対の岸が「此岸」といって「此方の岸」つまり悩み苦しみ、煩悩のつきない迷いの世界なのです。
◆仏さまの彼岸へ
この迷いや、苦しみの此岸から、安らかな迷いのない仏さまの彼岸に至るには次のような六つの心を具えた行い(六波羅蜜)が必要です。
一・ほどこす(布施)
見返りを期待することなく、分け隔てなく、心配りをすることです。
二・いましめる(持戒)
自らを慎むということです。
三・しのぶ(忍辱)
お釈迦さまの言葉に「忍ぶ事まさに橋の如くなるべし。橋は人に踏まれて人を渡せり」とあるように、踏みつける人を、じっとこらえて向う岸に渡らせる橋を見習って忍び耐えよと教えています。
四・つとめる(精進)
精進の精とは混じり気のないという意味ですから、純粋な心で一心につとめるということです。
五・こころしずかに(禅定)
ためらったり、戸惑うことなく、集中することです。
六・あきらかに(智慧)
明らかにする、つまり真実を見極めるということです。前の五つの心を具えた行いを実践すれば、正しい見方、考え方が自然に備わるとあります。
お釈迦さまはこの智慧をもって悟りを得られた、つまり彼岸に渡られたのです。その悟りの全てが説き明かされたのが、「妙法蓮華経」ですから、この「法華経」こそがお釈迦さまの心でありお悟りそのものであります。日蓮聖人はこれをはっきりと見極められ、末法の世の中においては「信を以って智慧に代えること」を明らかにされました。
さらに日蓮聖人は、法華経を信じ、南無妙法蓮華経とお唱えすることによって、自然と心の迷いがなくなって、その心が仏の御心と一つになるのであるから、六つの心を具えた行い(六波羅蜜)を修行し、またその他の全ての修行をしたと同じ功徳が与えられるとお示しです。
「一年の計は元旦にあり」といいますが、日々の生活を振り返り、心と行いを見直すのはお彼岸です。「心の計はお彼岸にあり」というのはいかがでしょうか?
さらなるお題目精進をお願い申し上げ、お彼岸の法話とさせていただきます。

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