ひとくち説法
2014年2月20日号
次代に繋いでいくもの
「村や町の文化、伝統を語らなくなったら、その村、町はなくなる」と昔から言われます。
葬儀のあとのお斎のときに30人ほどが出席して、自己紹介と故人との関係をしゃべっていました。たいていの場合、そのあとに世間話で時間が過ぎてお開きとなります。
せっかく集まったのですから、故人の冥福を祈るのと同時に、故人の両親、祖父母の話や家、地域、地方の歴史を話題にしてもいいのではなかろうかと思います。
歴史を語ることは自分自身を知ることに他なりません。この頃は葬儀もホールで行われるものですから、行列がない。帳面に役割などを書かないから家の歴史がわからない。歴史が我々の都合で消えていくようで大変残念な気が致します。
さまざまな大切なものを次の世代に繋げていく貴重な「場」として、葬儀や法事を見直してみてはいかがでしょうか。
(京都第2部布教師会長・野村 智応)
2014年2月10日号
味噌ラーメンとノートパソコン
駅の近くのラーメン屋に寄った。へんこ親父が経営している行列まではできない店のようだ。思ったよりおいしい味噌ラーメンの汁をすすりながら、目の前の注意書きに目をとられた。「食事中のノートパソコン、iPad、インターネット、漫画、雑誌等のご使用はご遠慮願います」。おもしろい注意書きである。漫画まではわかるが、ノートパソコンをしながら食べる客もあるようだ。
店主に恐る恐る聞いてみた。「こんなことする人、おんの?」。「なんでも食べながらや。一番おいしい麺の具合でだしているんやから、すぐに食べてほしい。一生懸命作るから、一生懸命食べてほしい。そういう意味ですわ」と予想外のかわいい笑顔で答えてくれた。
むかしテレビを見ながら夕飯を食べていて、祖父に叱られたことを思い出した。「一生懸命食べてほしい」夜風の中に、親父さんの言葉が妙に耳に残った。
(京都府第1部布教師会長・大西秀樹)
2014年2月1日号
時の流れと共に
毎年、世相を反映してきた新語、流行語大賞があります。ちなみに、個人的に記憶として残る言葉としては「亭主元気で留守がいい」を上げますが、言うに及ばず、当時の社会現象がありありと読みとれ、とともに時代の流れも実感する事は確かのようです。
「政権交代」「事業仕分け」「維新」等々の政治用語はすっかり輝きを失い、逆に異常気象に関連した「猛暑日」「ゲリラ豪雨」「爆弾低気圧」など当時より存在感を感じる気もします。
縁あって24歳で入寺して以来40年以上の職歴を重ねてきました。住職就任当時は若く何をしていいかもわからず、手探りのなか、孤軍奮闘の毎日だったと記憶しております。
唯一の救いは当時全国寺院のなかでもおそらく皆無に近い事だとは思いますが、毎日毎晩雨風関係無く、午後8時より9時迄の1時間のお題目講がありました。一年365日、確かに時間に縛られ辛い時も感じましたが、今となれば懐かしい想い出です。
あの時の信仰の原点が礎となって今があると実感しております。故に、信仰とは理屈抜き、見返りを求めず粛々と精進するものであると確信しております。
(福井北部布教師会長・松田海英)