オピニオン

2014年2月10日

平和に向けた日本の立場

近年、領土を巡って複数の隣国との間で緊張が高まり、武力衝突の危機すら見え隠れしている。また、沖縄では、米軍基地の移設を巡る意見対立が解決を見ていない。武力による紛争解決を放棄して、世界にも類を見ない平和国家であるはずなのに、薄氷を踏むような緊迫した状況に立たされている。
戦後、日本国憲法が制定発布されてから六十年以上の歳月が流れた。この間、幸運なことに日本は直接的な戦争当事者とはならなかったが、世界的には、世界大戦にこそならなかったものの、世界各地での戦争や紛争は絶えることがなかった。大量虐殺や数多くの難民、国土の極端な疲弊など、目を覆う惨劇が繰り返されている。そんな中でも日本が戦争の直接的当事者にならなかった、その最大の要因は、武力による紛争解決を放棄した日本国憲法にあることは言うまでもない。しかしそれは、国家間の軍事力バランスを保つ中で、超大国の軍事力の庇護のもとにあったからにすぎないとの指摘も聞く。
このような、軍事力バランスによって国家間の武力衝突が回避され、平和が維持されるという論理は、核武装を目指す国々にとって、自らを正当化する最大の根拠となっている。平和のためには、力には力で対抗するしかないということだ。
また軍事大国は、この軍事力バランスに非常に敏感で、他国が軍事力を増強することで、そのバランスが崩れることを極端に恐れる。その結果、武力を行使して他国の軍事力を削ぎ、平和を維持しようとする、否、平和を維持するために武力行使をしたと言い、武力攻撃の正当化を図る。
確かに、近代国家がこのような論理のもとに動いているということは否めない現実だろう。情報化社会がグローバルに展開して、国境は意味をなさないとは言っても、領土を有する国家のあり方は、全く変化していないようだ。グローバル化とは無縁に、国家としての論理に固執して頑として譲らない。それが紛れもない現実であり、それによってのみ国家が存続できるとするならば、国益を最優先して軍事力に依存することは、現実的な選択としてはやむを得ないことなのかもしれない。
ただ、ここで、もう一度思い起こしてみたい。私たちの国は、武力による紛争解決を放棄した国だ。終戦当時の戦勝国側は、日本が再び強大な軍事力を持って国際紛争の当事国とならないことを意図したという指摘もある。しかしそれならそれで、その立場を最大限に利用すべきではないのか。
国際紛争をめぐる世界の大勢は、軍事力という選択肢に、愚かにもしがみついている。どれほどきれいごとを言っても、軍事力は殺人力、破壊力にすぎない。軍事力を誇示するということは、のど元に刃物を突き付けて威嚇するのと何ら違いはない。
それに対して日本は、どのような経緯があるにせよ、武力に頼らない紛争解決を義務付けられている。この立場は、平和構築という観点からすれば、最も先進的なものと位置づけることができるように思う。
武力や暴力によっては、いかなる問題も紛争も解決しない。新たな憎しみを生み、更なる悲劇を引き起こすだけである。我々は、そのことを長い歴史の中で学んできたはずだ。
軍事力の均衡による一時的で不安定な平和ではなく、軍事力の誇示を伴わない恒久的で堅固な平和をこそ求めるべきである。それができる立場にあるのは、ひとり日本のみだという自覚を持ち、あきらめずに誇りを持って主張し続けるべきであろう。

(論説委員・中井本秀)

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