2013年12月20日号
歌で伝える立正安国のメッセージ
平成21年は「立正安国論奏進七五〇年」の年でした。各地でさまざまな記念行事が企画、実行されました。そんななか、私は日蓮聖人の『立正安国論』には到底及ばないにしても、今の人たちに分かりやすい形で「立正安国」を表現できないものかと考えました。ある会議に出席したお坊さんに歌詞のヒントとなる言葉をお願いしたところ、30パターンの言葉が集まりました。それらの中から選んだ言葉をつないで「立正安国メッセージ」を完成させ、自坊の本堂に貼り出しました。そしてギターを手にしてこのメッセージにメロディをつけてみました。これがオリジナルソング『いのちに合掌』ができあがった経緯です。
音楽センスが素晴らしい隣の寺の住職に相談して、編曲とバックコーラスをつけていただき、オリジナル曲が完成しました。これがきっかけで曲作りを続け、3年に1度行われている日蓮宗の「仏讃歌発表大会」にも2度参加させていただきました。
「いのちを大切に」などと考えているのは人間だけだと思います。ですから「いのちを大切に」するということは、人として生きていることを大切にすることです。「人を大切にする」とは、人を思いやることです。思いやりとは、想像力を働かせることだと思います。いろいろ便利になった現代人は、想像力が低下しているのではないでしょうか。
以前「いのちの電話」というボランティアを2年間しておりました。生きることが辛くなっている人々の電話での訴えを聞くものです。その研修の時に繰り返し言われたことは「相手の人が、何を言っているのかより、どんな気持ちで言っているのかを考えてください」ということでした。特に私は「決してお説教はしないでください」と言われました。堂々巡りの話をする電話で、そのつながりの時間を大切にして根気よく相手の話を聞いていると、最後に本音を聞くことができた経験は何度もありました。「思いやりとは、相手の中に自分を織り込むこと」と言った人がいました。仏教で言う「慈悲」の悲にあたる、同悲につながるものです。
「大切なものは目には見えない。目に見えるものは、いつかはなくなる。残るものは見えないもの」現代人は目に見えるものしか信じられない人が多いようです。見えなくても在る。命・心・霊などです。冥利、冥加という言葉があります。広辞苑には「知らず知らずの中に神仏の加護を蒙ること。目に見えぬ神仏の助力」とあります。このようなすでに護られていたことに気づかずにいたことを謝ることが感謝なのです。感謝とは感じるに謝ると書きます。
この歌詞の最後は「いのちを大切にすることは、世界中のすべての人々の幸せを祈ること」としました。皆が他人の幸せを祈れば、自分のことを祈る必要はなくなりますから。
このようなメッセージを込めた「いのちに合掌」お聴きください。現在の宗門運動スローガンの一つが「安穏な社会づくり」です。そのヒントを皆さまにお伝えできればと願っています。
「いのちに合掌」
作詞・作曲・唄 川名湛忍
いのちを大切にすることは
人を大切にすることです
人を大切にすることは
人を思いやることです
人を思いやることは
人の心を感じることです
人の心を感じることは
人とのつながりを大事にすること
人とのつながりを大事にすることは
他人を受け入れること
心をひらくこと
心をひらくことは
見えないものを見ること
見えないものを見ることは
見えない力に気づくこと
見えない力に気づくとは
感謝の心で生きること
感謝の心で生きるとは
人を大切にすること
人を大切にすることは
いのちを大切にすることです
いのちを大切にすることは
世界中のすべての人々の幸せを祈ること