オピニオン

2013年11月1日

式年遷宮の心

伊勢神宮は全国の神社を包括する神社本庁の本宗で、正式名称は単に「神宮」(じんぐう)と呼ばれ、三重県伊勢市にあります。
中心となるのが皇室の祖神とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)を祭る皇大神宮(内宮・ないぐう)と、衣食住の神である豊受大神(とようけのおおかみ)を祭る豊受大神宮(外宮・げぐう)で、両宮とも同じ大きさの敷地が東西に並び、式年遷宮(しきねんせんぐう)といって定期的に20年ごとに神様が引っ越す行事が去る10月2日に行われました。遷宮のたびにどちらかに新たな社殿が建てられ、古い方は解体されます。
八咫鏡(やたのかがみ)は天照大神のご神体で、国中をくまなく照らすとされ、八坂(尺)瓊勾玉(やさかにのまがたま)、草薙剣(くさなぎのつるぎ)とともに三種の神器と呼ばれています。
神宮(内宮)が伊勢に創祀されたのは、『日本書紀』などによると、垂仁(すいにん)天皇の皇女・倭姫命(やまとひめのみこと)が三種の神器のうち最も重要な「八咫鏡」を伊勢に祀ったのが始まりとされ、天皇家の信仰が篤かったが、中世以降は全国に伊勢信仰を広める「御師」(おんし)が活躍、特に江戸時代に入ると「お伊勢参り」はブームとなり「おかげ参り」として、とりわけ宝永2年(1705)、明和8年(1771)、文政13年(1830)には、それぞれ300万前後の人々が参宮しているといいます。動機はいろいろと考えられますが、深層には日本人の総氏神と仰がれるようになった大神宮(お伊勢さん)の「おかげ(ご加護)」に感謝し、さらなる「おかげ」を祈願したいという素朴な信仰があったといわれています。一生に一度は必ず「お伊勢参り」をしたいというのが庶民の願望でありました。
10月2日夜、「カケーコー、カケーコー、カケーコー」という神職の「鶏鳴(けいめい)三声」の声が響いて、クライマックスの「内宮」の式年遷宮、新しい社殿にご神体を移す「遷御(せんぎょ)の儀」が始まりました。臨時祭主の黒田清子さんを先頭に神職約150人が束帯、衣冠の古式の装束で、絹の幕に覆われたご神体が新しい社殿に入られた。木靴の石段をコツコツと刻む音、楽師が奏でる雅楽のひびき。テレビの参拝でしたが、そのおごそかな神事は胸にひびくものがありました。
僧侶の西行法師は、伊勢神宮に参拝して、あの有名な句、
「何事のおはしますかは知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」
と詠まれました。「かたじけなさ」とは、20年に一度の「式年遷宮」を繰り返しつつ、その姿を太古の形式のまま保ってきた神宮の神々しさに感きわまり、思わず涙し頭を垂れました。
生まれ変わり、生まれ変わりしながら、太古の姿を未来へと伝える。常に清浄にすることで神々の生命をよみがえらえせる営み。
世界的建築家ブルーノ・タウトは著書『ニッポン』で、伊勢神宮については「日本が世界に贈った総てのものの源泉」と称賛し、伊勢神宮を日本の稲作文化の象徴と見て「社殿は農家を想起せしめ、日本の国土から土壌から生い立った」ものと見、式年遷宮については「何という崇高な、全く独特な考え方が現れていることであろう」と感嘆の目を向けたといいいます。
日蓮聖人はご本尊「大曼荼羅」中に、日本の国神「天照大神」を勧請されました。天照大神が万物を照らし、「明き清き直き心」という仏教と共通の「魂」を持って人々を導かれたと確信されたからに違いありません。
(論説委員・星光喩)

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