オピニオン

2013年10月1日

ネット依存からいのちを守れ

電車やバスの中どころか、歩行中、さらには自転車に乗りながら携帯やスマートフォン(スマホ)をいじっている若者の姿に眉をひそめていたのであるが、本年8月、厚生労働省の研究班によるインターネット依存症(「ネット依存」)に関する調査結果が発表され、慄然とさせられた。
研究班が無作為に選んだ全国264校の中学・高校にアンケートを行ったところ、ネット依存の疑いがある子どもが、中学生の6㌫、高校生の9㌫、推計で51万8千人にも上ることがわかり、予備軍を含めれば、70万~80万人の子どもが該当するのではないかと推定されるという。
10年ほど前からネット依存の問題はたびたび取りざたされてきたが、ここ数年で患者数が急増、傾向も変わってきているという。以前はゲーム依存がほとんどであったが、スマホの普及によって、LINE(ライン)をはじめとするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)依存の患者が増えているという。
毎朝起きるとまずラインやツイッターなどSNSをチェックし、通学時、授業中も食事中も、深夜寝る直前まで友達とやりとりしていて、家族との会話も減り、寝不足で日中しょっちゅう居眠りしている学生の親が心配して相談にみえたことがある。
この問題は、韓国や中国で早くから深刻で、大きな社会問題になっている。中国では約2400万人の青年がネット依存とされ、国立の施設でカウンセリングなどの治療が行われているという。アメリカでもインターネットに長時間を費やすことから離婚や解雇など深刻な問題が起きており、その治療のための施設の開設が相次いでいる。
わが国でも民間団体の取り組みが活発化してきているが、ネット依存の治療に専門的に取り組んでいる施設はまだ少ない。その中で、国立病院機構久里浜医療センターでは、長年のアルコール依存症治療で培った専門性をもとに、平成23年より「ネット依存治療研究部門」を開設し、ネット依存治療を行うとともに、ネット依存に関する研究と最新の治療情報収集にも取り組んでいる。
同センターに寄せられる相談の対象は、未成年が8割で、中高生の場合、本人に自覚がなく、保護者が相談に来ることがほとんどだという。昼夜が逆転してしまい、学校に行けなくなるケースや、携帯を取り上げられたため、お金も持たずにネットカフェに駆け込み、無銭飲食して補導された子もいるという。
摩訶止観に、病の原因には四大不順、飲食不節、座禅不調、鬼神得便、魔の所為、業起故病の六種があることが示されている(『太田入道殿御返事』)。鬼病とは、邪念に乗じて体内に侵入して体の病を引き起こし、魔の所為とは、邪念に乗じて人の心に入って、心の病を引き起こすものとされている。
コンピューターや携帯にしろ、スマホにしても、うまく使いこなせば知識の宝庫や情報伝達の手段として、とても便利である。しかし、その便利な手段を通じて、ソフトを破壊するウイルスだけではなく、人の心を脅かす鬼や魔が侵入する機会を虎視眈々とねらっていることを、真剣に恐れなければならない。
文明の利器は、人間にとって有用なものであると同時に、鬼や魔にとっても、邪念に満ちた人間に侵入する便利な手段を手に入れたことになる。
それらの侵入を防ぐために、邪念を払い、心のバリアーを築く最良の方法は、お題目信仰に他ならない。
(論説委員・柴田寛彦)

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