2013年8月20日
ノラ犬が来た。参詣者に害が出ても困るので
ノラ犬が来た。参詣者に害が出ても困るので、捕まえようとしたが、これが容易なことではない。そこで、餌付けをして、飼い慣らそうと考えた▼残り物をご飯に載せて出したのだが、人がいないときしか食べに来ない。それでもうまそうに食べるようになった。遠くから見ていて、エサだとわかると、警戒しながらも、楽しみにしていたんだと言わんばかりの様子でやって来る。そうなると情が移って、飼ってやろうかという気にもなる▼もっと美味しいものを食べさせようと、値のはるドッグフードを買ってきた。目に見えて太ってきた頃、ドッグフードが切れた。すぐ買いに行けずに、残り物を出したのだが、どうしたことか食べようとしない。そのうちに、とうとう姿を見せなくなってしまった▼何とも寂しいことだが、なぜ来なくなったのか。言うまでもあるまい。一度美味しいものを知れば、それ以下では満足できないという、犬も私たち人間も変わりはないということである。それにしてもどこへ行ったのやら。少々まずくてもうちにいれば、食べるものに困ることはなかっただろうに▼自身の欲望を満たすためには他人の生命をも省みない殺伐とした現代。件の犬ではないけれど、欲に負けては身の置き所を失う結果となりかねない。いま在ることに感謝して、足るを知ることこそ、この社会に潤いを与えるのではないだろうか。 (直)