ひとくち説法
2013年6月20日号
今そこにいる菩薩
見たいと思っていた映画「海猿」をDVDで見ました。海上保安庁で海難救助に携わる人々の物語で、愛する妻子や恋人のいる普通の若者である隊員たちが、事故に遭って死の危機に瀕しているあかの他人のために、自らのいのちも顧みずに救助にあたるお話です。映画ですから作り話と言ってしまえばそれまでですが、私たちの平和で安全な生活が、彼らのような人々の不断の努力によって支えられていることに改めて気付かされました。
今にも消えそうな遭難者のいのちの火を消すまいと可能な限りの智恵と勇気を傾注し、一致団結して決してあきらめず挑戦し続ける彼らの必死の姿に感動し、両の頬を涙が流れて止まることを知らず、同時に自らの身体を張って人々の幸せのために修行に励む菩薩の姿が重なって見えました。
「身施(しんせ)」とは、かくのごとき“おこない”のことなのでありましょう。熱くて優しい心を届けてもらった心地よい時間でした。
栃木県布教師会長 野澤 壯監
2013年6月10日号
お題目の継承
昨今、お年寄りと若い方が一緒に墓参なされる姿が少なくなってきているのではないかと思われます。そのようななかで、率先してお寺の役員を務めていただいた方が、毎月のお命日に幼稚園くらいの男の子のお孫さんの手を引き、境内までの長い急坂を一歩一歩と足を踏みしめながらご本堂に到着。堂内に上がり、ご本尊さまにお線香とともに小さな手を合わせて唱題を上げ、墓所にお参り。再びお爺さんに手を引かれ、楽しそうに帰路に就かれました。
核家族といわれておりますなかで、朝夕に家族皆でお題目を唱え伝えていくことが一番大切なことではないかと思います。
お釈迦さまは「人々が、仏の教えを信じ従うことによって、素直で柔和な気持ちが生まれてくる」と仰っています。お爺さんとともにお参りされてれいたお孫さんが、真っ直ぐに成長されることを楽しみに、後ろ姿をお見送りさせて頂きました。
茨城県布教師会長 磯野 善恵
2013年6月1日号
スー・チーさん
来日したミャンマー民主化運動のシンボル、アウン・サン・スー・チーさんは、記者会見の中で、15年以上も自分を軟禁していた軍事政権に対して、恨みを抱いていない。国民が一致団結してより良い国を作ることが私たちのなすべきことである、と美しい瞳を輝かせて語っていた。
さすがに仏教国ミャンマーである。彼女の合掌の手から光が発しているように思われた。菩薩には忍辱(にんにく。慈しみをもって耐え忍ぶ)の修行があるが、彼の国の仏教にも大乗の菩薩に通ずる実践があることを彼女が証明していた。
今、群馬の青年僧は、スー・チー事務所と協力し、ミャンマーの村々に井戸を掘り、浄らかな水を提供する仕事を始めている。
昨年11月、民主化に沸き立つヤンゴンの町で、日蓮宗寺院より預かった資金をもとに、NLD(国民民主連盟)ペン・ウー会長と調印し、東部トンワ州で起工した。交流が深まることを期待したい。
群馬県布教師会長 田代 経量