論説

2013年5月20日号

世界に誇れる富士山に

■富士山が世界文化遺産に
富士山が世界遺産に登録される見通しとなった。ユネスコの諮問機関「イコモス(国際記念遺跡会議)」で富士山が世界遺産にふさわしいと登録を勧告したことが発表された。正式な発表は、6月16日から開催される第37回世界遺産委員会によってなされるという。
日本人なら誰もが知っている富士山は、日本の最高峰である。独立峰とも称され、八方にそのすそ野を広げた姿はどの方角から眺めても壮麗で気高く美しい。位置的にも日本のほぼ中央にあり、日本国が天に合掌している姿だとも言われている。その雄姿がくっきり見えた日は、思わず合掌して拝みたくなる。富士山は山岳信仰の象徴的な存在だと言われているのもよく理解できる。
イコモスが富士山を世界遺産として評価したのも世界自然遺産としてではなく、世界文化遺産としてであった。「富士山は疑いなく日本におけるひとつの国家的な象徴ではあるが、その影響は日本をはるかに越えて及んでおり、今や国家的意義を広範に越えている」と評価している。また、「宗教的伝統と芸術的伝統の融合」とも評している。
富士山はその昔から和歌や詩歌に詠われ、文学や絵画や写真等の題材として多くの作品となってきた。万葉集には富士山を詠った歌が11首もあるそうだ。中でも山部赤人の「田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にぞ 富士の高嶺に雪は降りける」は有名である。葛飾北斎の富嶽三十六景や歌川広重の富士三十六景などの浮世絵は日本にとどまらず、ヨーロッパを始め世界に影響を与えている。まさに富士山は世界の名峰にふさわしい山であると言えよう。
■日蓮聖人と富士山
日蓮聖人も何度となくこの富士山を仰ぎ見られたことだろう。そのご生涯をたどれば、求道時代の鎌倉や比叡山への道中、『立正安国論』執筆のため岩本の實相寺に約2年間ご滞在の間、晩年は身延山にお入りになってからご両親を追慕されて身延山の頂上にお登りになられた折、また富士山中腹に法華経を埋経された伝説もあり、大聖人も富士山を拝し身近に感じておられたことと思われる。
■平和日本にふさわしい富士山へ
富士山が世界遺産になることは多くの日本人が望んでいたところであろう。これからは外国からの観光客も増え、にぎわうに違いない。それだけに世界遺産の名にふさわしい富士山でなければなるまい。
ひとつ気がかりなのは、富士山の麓に陸上自衛隊の演習場があることである。そこは、各種の部隊訓練及び実弾射撃訓練に使用されている。アメリカ海兵隊も演習を行っている。付近の家の騒音はかなりのものであろう。演習地域の住民には国税から迷惑料的な補助金が支払われているとのことである。富士山は美しい山というにとどまらず、信仰の対象でもあるのだ。神聖な富士山を軍事演習の場として利用するのはいかがなものか。一日も早く富士山麓での演習に終止符を打ち、心から尊崇できる平和の象徴として富士山として、世界文化遺産の指定に応えてほしいものである。

(論説委員・石川浩徳)

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2013年5月10日号

リーダーシップとは?母性と父性から考える

昨今の北朝鮮ミサイル問題は、日本や韓国周辺のアジアの国民を不安に陥れ、その安全保障は危機に面している。私たち日本人は、当たり前の平和を信じ、その平和の中で戦後を生きてきた。しかし、その期間が長かったためか、それが揺らいできていることに対して鈍感になってしまってきている。上野動物園のパンダの妊娠兆候で、さらりとニュースの一面が書き換えられる平和な国、それが今の日本である。
どの時代においても、リーダーという存在が、人びとをどこに、どのように導いていくかを決定する。今、世界を不安に陥れている一人のリーダーは、金日成を祖父に、金正日を父に持ち、若くして一国の第一書記に就任した。そしてまもなく、国の(権)力を、祖父と父が示したように、軍事的武力というものを見せつけることで、威厳を保とうとしている。この新たなリーダーが暴走を始めた。
リーダーシップとは、組織や集まりの中で発揮されるパーソナリティーのことである。では、私たちが求める理想のリーダーシップとは、何であるのかを考えてみた。私は、その条件として、「寛容的な」という母性的なリーダーシップと「規範的な」という父性的なリーダーシップが共存して発揮されることが望ましいと考える。このことは私の専門とする幼児教育の中にも、とても大切な領域として捉えられている。人が人を育てていくなかで、養育者は第一番目に寛容で慈悲にあふれた受容によるパーソナリティーで、安らぎと信頼を与え、次に広く社会に目を向け、規範的な指導を行うことによって自分の欲動を制御し、うまく道筋をつけ外へと向かう認識と意思の力を育む。こうして人は望ましい方向へと育っていくのだ。
母性と父性は異性であり、一人の人間にその両方とも備わっていると考えられているが、その使い方には順序があるということを、医学博士佐々木正美氏も『子どもへのまなざし』に著している。このことからも、母性と父性をバランスよく持ち合せることが大事なことで、そのようなリーダーシップが発揮できるということは、その人格のみならず、受ける側の影響に大きな成果をもたらすことと考えられる。
5月。日蓮聖人は、そろそろ『立正安国論』を撰述し始めた頃である。7月16日に国家に対して諫暁(かんぎょう 目上の者に過ちをいさめるように直言すること)をなしたこの御書からもその行動からも、仏教の中の法華経の教えを通して真の救済を明らかにし、現世において個人でなく全ての人々、一国でなく全世界が救済され幸せになることを示した。この日蓮聖人のリーダーシップは母性によるものである。そして、謗法を毅然と示し、具体的な正法をもって導いていくリーダーシップは父性によるものである。
そんなことから暴走するリーダーになにが欠けているかが判じられよう。母性と父性、その両方のリーダーシップを持つこと、そしてそれによって正しいリーダーシップが発揮されるのである。そんな大切なことを父や祖父から教わることができなかったであろう不幸なリーダーを思うと、幼児教育の重みと責任を改めて痛感する。そして一人でも多くの人が立正安国という視点と、その実現に向かおうとする行動力に目覚めてほしいと祈るのである。
(論説委員・早﨑淳晃)

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2013年5月1日号

北朝鮮の核開発と立正安国運動

北朝鮮の核実験
朝鮮半島は風雲急をつげている。
北朝鮮は、昨年の12月に人工衛星打ち上げ用ロケット発射実験に成功した。これは米国に到達する大陸間弾道ミサイルにつながると云われている。
それに勢いづいてか、今年に入って2月には3回目の核実験を強行した。更に6ヵ国協議を破棄して、核施設の再稼働を表明し、「朝鮮半島の非核化は終わりをつげた」と発表している。
4月1日には最高人民会議で核開発・使用の方制化をしたと伝えられている。
北朝鮮の核開発は、東北アジアだけではなく世界人類にとっての脅威であり、世界の更なる核拡散につながりかねない。特に北朝鮮はイランと深い関係を持っていると云われているので、イランの核保有もおそらく進んでいると思われる。
世界は核のない世界を目ざすどころか、核拡散が急速に進んでいるように思えてならない。核拡散によって、人類が滅亡への一途をたどっているのかと思うと、私達は今こそ真剣に核廃絶に取り組んでいかなければならない。
国連の安保理や日本は、北朝鮮への厳しい制裁措置を取るとしている。しかしどんな制裁としても、核廃絶をしないかぎり核拡散を止めることはできない。
まさに今、核保有国も非核保有国も、人類の叡智と勇気を持って、一丸となって核のない世界の実現に努力するときだ。

核兵器の非人道性
3月の上旬ノルウェー政府の主催によって、「核兵器の人道性に関する国際会議」がオスロで開催された。
この国際会議には、日本を含めて127ヵ国と国連、赤十字国際委員会や非政府組織(NGO)が参加し、核兵器の非人道性について議論が深められた。
しかしながらこの国際会議に米露英仏中の核保有5大国は揃って欠席した。その理由を「従来進めてきている段階的核軍縮への努力のエネルギーが奪われる恐れがある」としている。
この五大国は、地球上に存在する約2万発の核兵器の約97パーセントを保有していると云われている。核のない人類社会を目ざして、責任を持って先導していかなければならない5大国が、この国際会議に欠席したこと自体非人道的であると評されている。まさに然りだ。
核兵器は残酷で悲惨であることを体験した日本は、その非人道性を訴えて、人類の先頭に立って積極的に核廃絶を進めていく天命がある。

 「立正安国・お題目結縁」運動
その日本に、日本は軍事国家になるべきだと主張し、核武装を議論することも選択肢だと、堂々と主張している党首が出てきている。
北朝鮮の核保有を契機に、戦争ができる日本への動きも出てきている。心配でならない。
のどもと過ぎれば熱さを忘れるというが、日本は第二次世界大戦のあの地獄の苦しみを忘れてはならない。特に一瞬にして多くの人命を奪い国土を焦土と化した核兵器が、未だこの地球上にあることを赦してはならない。
法華経は絶対平和の教えである。「我が此の土は安穏にして天人常に充満せり」とある。
法華経の魂であるお題目を信奉する私達は、この崇高な理想を掲げて、立正安国運動にまい進していこう。
絶対平和のお題目を唱える私達には軍備はいらない。ましてや核兵器などはいらない。私達の平和への盾はお題目であることを忘れてはならない。私達の使命は重かつ大である。

(論説委員・刀貞如)

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