2013年4月10日号
宗務院・伝道部主催のコンペ 大賞作品決まる
仏教の興隆・寺離れの緩和に期待
日蓮宗宗務院主催(東京都大田区)の第2回地域社会とお寺の活性化アイデアと第6回日蓮宗Tシャツデザインのコンペティションの授賞式が、3月30日に同院で行われた。アイデアコンペは岡田英昭さん(神奈川・26)の「古地図から始まる『お寺はふるさとの生き証人』プロジェクト」が大賞を受賞した。今夏の修養道場でも活用される「安穏」をテーマとしたTシャツデザインコンペでは、笑顔で手をつなぐ地蔵の家族を表現した赤司大輔さん(大阪・35)の作品が大賞に輝いた。赤司さんは昨年の同コンペに引き続き2回連続の大賞受賞となった。
岡田さんのアイデアは、寺院などに残る町の古地図をもとに、失われた故郷の風景を思い起こしてもらいたいというもの。また地域住民や自治体などから古い写真を募り、提供者をはじめ歴史、風土を調べる人などが寺へ出入りすることで、同時に地域のコミュニティ活性化も目的としている。挨拶で岡田さんは「地図を掲示するだけで、見る人が足を止めるきっかけとなり、お寺とつながる時間が少しでも延びるのではないか。ベンチを設置し、より長く寺にいてもらい、歴史を語りたい人にはお堂を提供するなどさまざまな工夫も考えられる。地域の人たちが郷土に感謝する気持ちを持つことで、コミュニケーションが増えれば」と寺を中心とした地域の活性化に期待した。
総評ではアイデアコンペ審査員の西出勇志氏(共同通信編集委員・論説委員)が「寺院の空間や歴史性に着目した岡田さんのアイデアは実行しやすく、地域の人たちを巻き込む力がある。他宗派僧侶も同コンペに強い関心を示しており、これらのアイデアが実現されていけば、仏教界全体の底上げにもつながる」と語った。またTシャツデザインについて中井本秀伝道部長が「日蓮宗の目指す安穏な社会が、デザインによってイメージしてもらいやすくなった。2つのコンペを通して一般の人たちは、公益性としての役割をお寺や宗教へ求めていることがよりわかった」と述べた。
岡田さんのアイデアは、住職の布教行動以外に境内を開放することで、寺院が地域活性化へのリーダーになりうる可能性を示した。また古めかしいという寺院のイメージを「歴史性」と表現を変えることで、受け継がれるものから学びとることの大切さも教えている。数々の応募はアイデアという面ではなく人びとから寺への要望の意味も含まれ、寺院のあり方について考え、仏教の興隆や寺離れを緩和するものとしても期待される。