ひとくち説法
2013年3月20日号
いのちに合掌の心
「ただ見れば何の苦なき水鳥の足にひまなき我が思いかな」。水鳥は優雅に水面を進んでいるように見えるが、水面下では一生懸命に足をかいている。人も外面は平静を装っているが、内面では皆、苦しみや悩みを持ちながら生きている。
お釈迦様は苦しむ人々を何とか救い出したいとこの世に出現され、法華経をお説きになられた。お釈迦様は常に私達を見守り、救って下さる。苦悩があるから、真の幸せがわかる。そして苦悩を知ることで、他人の苦しみ・悩みが解かるようになり、優しい心で接する事ができるようになる。
私達は仏になる性質を持って生まれてきている。子供が経験を積んで大人になるように、私達も修行することでいつか必ず仏となれる。苦悩を縁として優しい心を育て(自利)その優しい心を他人に向ける(利他)お題目を唱えれば、自分の中の仏性が呼び起こされ、そのお題目は、他の人々の仏性をも呼び起こすのである。
神奈川県二部布教師会長 金子 智研
2013年3月10日号
身近な人を大切に
短大の教授をしていた檀家の女性が病気で急逝した。69歳であった。その方の日記帳最後の頁に次のような新聞の切り抜きが貼ってあった。
私たちは生まれてから死ぬまでに
何人のひとにめぐり逢うのだろう
無数のような気もするが
実はほんのわずかな数 そしてさらに
その中で この人と逢えてよかったと
思えるひとが たとえひとりでもいれば
それは幸福ということになる
あなたに逢えてよかった
あなたと同じ時に 同じ地球の空気の
中にいてよかった
ぼくはあなたにそういいたい
(やなせ・たかし)
亡くなる日も母を亡くした教え子に励ましの葉書を出していた。自分のまわりにいる身近な人を大切にして優しくするのが、いのちに合掌の心だ。
神奈川一部布教師会長 鈴木 浄元
2013年3月1日号
心の中にも春を
冬の堅かった梅も開花し、春の彼岸へ桃、桜の花と順々に咲き出して、境内は明るい和やかな雰囲気を醸し出し、暖かい季節を迎えます。
日蓮聖人は、そうした季節の変わらぬ移ろいのように大曼荼羅に向かい、法華経を信じ、お題目を唱える者は、一人ももれずあらゆる人は、必ず成仏(人間として完全、円満、永久な精神を得る)するとお教えくださいました。
先師、先人達は、自然現象の中から、人間を、人生を洞察し学んできました。今日の私達は、それらに余りに鈍感となり、心が働かなくなってきたように思います。
人間としての情緒が荒み、不安定となってきたためでしょうか。
お題目の信仰によって、人間としての尊い心(仏性)を呼び起こし、自らの心を完成させ、少しでも世の中を明るく平和にしてまいりたいものです。
東京都北部布教師会長 川俣 観淳