日蓮宗新聞

2013年3月20日号

全国で東日本大震災三回忌法要

「犠牲者を思い出して」被災者の声

東日本大震災から2年。地震が発生した3月11日、全国の寺院教会結社などで三回忌法要が営まれた。被災地寺院では悲しみが堂内外から溢れ、それを鎮めるかのように全国でお題目が唱えられた。「震災で傷付いた人の心と町が、まだあることを忘れないで」。「犠牲となった人たちのことを思い出して」。被災地の人びとの訴える2つの言葉が印象に残った。

 

岩手県大槌町蓮乗寺 仏さまを思い出して
岩手県大槌町蓮乗寺(木藤養顕住職)は、3月10日に三回忌法要を執り行った。檀徒の男性は墓前で母と弟の菩提を弔い、「毎日の仕事は忙しく、日々は過ぎて行くが、いまだに心の整理がついていない」と語った。法名碑を見ると同じ年月日で刻まれた法名が無念さを物語っていた。また男性はは「けれど、全国日蓮宗の仲間から義援金をいただき、その気持ちに応えるためにも頑張りたい」と述べた。
同寺は震災の津波により流れ着いたガスボンベが爆発し、建立されたばかりの本堂庫裡などを失った。現在はプレハブの小さな本堂が建てられている。法要には約170人が参列し、狭い本堂が埋め尽くされた。同寺和讃講の追悼和讃が始まり、慰霊のお題目を唱えた。木藤住職は檀信徒犠牲者ら166人の名前を読み上げた後、回向を捧げ、「2年が経ったが、大槌町に復興への変化は見られない。まだご家族のもとに帰ってこられていない方々もいる。私たちが生きているうちは、どうか亡くなった仏さまのことをいつも思い出してあげてほしい。それが仏さまのためにもなり、みなさんの気持ちもつながることになる」と挨拶した。
 法要後、娘と孫2人を亡くした男性は「娘が発見された時、鞄には位牌が入っていた。先祖の位牌を持ち出すために、逃げ遅れたのだろう。今は妻と一緒に、娘や孫のことを思い出してあの時はああだったなどと話している。私たちがしてあげられるのはそうやって思い出すことと、仏さまに冥福を祈ることだけ」と目頭を熱くした。

 

 

蓮乗寺の和讃講と全日青
被災地を唱題行脚

 大槌町蓮乗寺(木藤養顕住職)で3月10日、三回忌法要が営まれた後、同寺和讃講の会員たちが全国日蓮宗青年会(小泉輝泰会長)の僧侶とともに唱題行脚を行った。
一行は同寺から約3キロ離れた赤浜地区まで約1時間かけて行脚。海辺の強風で体を飛ばされそうになりながらも、震災の傷痕が残る海岸沿いに慰霊のお題目を響かせた。
赤浜の船着場では、法味言上を行い、再び追悼のお題目を唱えた。和讃講の80代の女性は、「悲しいできごとは多いが、強風にも震災にも負けたくない」と気丈に語った。

 

 

釜石市仙寿院で市と合同の法要
殉職の消防関係者へ追悼捧げる

岩手県釜石市仙寿院(芝﨑惠應住職)では3月10日に亡くなった檀信徒をはじめ震災犠牲者への供養を行い、11日にはいまだ同寺に安置されている身元不明の遺骨や行方不明者、殉職した同市消防関係者の慰霊法要が営まれた。
芝崎住職は地震発生後すぐに同寺を開放、大勢の避難者を受け入れ、行政と連携し震災が落ち着くまでの期間を被災者とともに乗り切った。また同寺は震災後しばらく犠牲者の安置所としても使われていた。後に学校の体育館に安置所が移されても、芝崎住職は身元の確認と回向を行う日々を勤めた。芝崎住職の当時活動した様子は、現在公開中の映画「遺体~明日への10日間」(脚本・監督=君塚良一)や原作(石井光太著)に収められている。
 11日の法要には野田武則釜石市長、消防署や団員関係者、君塚監督、日蓮宗から齊藤憲一伝道局長が参列した。また大阪などからの僧侶が出仕し、追悼のお経とお題目が唱えられた。芝崎住職は法要後、「自らの危険を顧みず人びとの命を救い殉職された方々。人として一所懸命に生きながらも、津波の犠牲となったいまだ身元不明のご遺体や行方不明の方々。将来町が復興しても、この方々がいたうえで私たちがなりたっていることを忘れてはならない。せめて一年に一回、この日だけでも名もない犠牲者がいたことを思い出してほしい」と挨拶。また齊藤局長は全国の日蓮宗寺院が、震災の拠り所となることを目指したいと述べた。
参列した女性の一人は「形あるものはなくなってしまいますが、犠牲者を思う温かい心は残っていくのだと感じました。こういった思いを大切にしていきたい」と語った

 

大船渡市の港で留魂と追悼市民のつどい

岩手県大船渡市の港にあるサンアンドレス公園では、留魂と追悼市民のつどいが開催され、同市本増寺の木村勝行住職を導師に法要が厳修された。
同つどいを企画した木村住職は「一周忌は鎮魂だったが、三回忌は留魂。犠牲となった生きとし生けるものすべての魂と一緒に、法華経の教えである清く正しく美しく生きて復興に向かいたい」と述べた。
開会後、実行委員長田村誠氏が「犠牲になられた方々に報いるためには一人ひとりが共助と自立の思いと行動で郷土を復興し、震災を伝えていかなければならない」と式辞で述べた。続いて同寺蓮華の会が和讃を奉唱し、供養の音色を響かせた。
お題目を唱えた後、地震発生時刻の午後2時46分に市のサイレンが鳴り響くと、全員で黙祷を捧げ、続いて焼香を行い、合掌して頭を垂れた。最後に参列者は水溶性の紙で折られた鶴を静かに岸から海へ流し、供養した。
閉会後、同寺檀家総代の男性は「お題目を唱え、復興に向けて日常の生活に励んでいる。法華経の教えで頑張れば、きっと素晴らしい町に生まれ変わる」と語った。

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第105定期宗会 未来を切りひらく活力ある宗門づくりへ

第105定期宗会が3月5日から8日まで、東京都大田区日蓮宗宗務院で開かれた。宗会議員43人と宗務委員ほかが出席し、提出された議案について慎重に審議を行った。
開会式では内野日総管長猊下が「世界の情勢を顧みますと、政治・経済・社会・教育などは様々な困難に直面して混迷を極め、正に末法の様相を呈しております。日蓮宗教師の命題は一切衆生への抜苦与楽、立正安国、仏国土顕現という祖願達成に邁進することでありましょう」と教旨で述べられた。
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2013年3月10日号

東日本大震災犠牲者諸霊位一周忌追善法要

日蓮宗主催 大本山池上本門寺で厳修

「忘れてはならないあの日」-「祈りの日(毎月28日)」の2月28日、日蓮宗主催の東日本大震災犠牲者諸霊位一周忌追善法要が東京都大田区の大本山池上本門寺(酒井日慈貫首)の本殿で厳修された。大導師の内野日総管長猊下、副導師の兵賀栄真東北教区長・小林智英福島県宗務所長・日野教恵宮城県宗務所長・阿部是秀岩手県宗務所長とともに僧侶檀信徒約350人が犠牲者へ慰霊の誠を捧げた。
ご宝前には今年度の日蓮宗加行所の壱百日の間、祈念・回向された「東日本大震災犠牲者諸霊位」と記されたお位牌を奉安。脇には被災地の伝統産業の振興を祈念するため、福島県の三春張子が“いのちの灯”として表現され、また岩手県の東山和紙の折り鶴が祀られた。
法要に先立ち、舞台や映画などで女優として活躍する若村麻由美さんが、石巻市の高校生の作文と宮澤賢治の『雨ニモマケズ』を朗読。作文には津波の恐怖と悲惨さ、家族と再会した喜び、そして救援の人々に感謝し、「生きのびた命。これから何事にも負けず、一生懸命生きていきたい」とつづられ、参列者は朗読される惨状や希望を一字一句噛みしめた。
法要には渡邊照敏宗務総長をはじめ宗務内局と酒井貫首が列席。内野管長猊下は追悼文で厳かに冥福を祈った後、「願わくは我らと被災者と皆ともに、和衷共済(心を同じくし助け合う)して、早期復旧を誓いて“共生共栄”の世へと導かん」と閉じられた。
渡邊宗務総長は挨拶で被災地の早期復興と物心両面にわたる支援に今後も取り組んでいくと改めて誓い、宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」で安穏な社会づくりを目指していくと述べた。
法要後、若村さんとともに参列者が日蓮宗作成の「祈りの言葉」を唱え、それぞれの思いがお題目に込められた。

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新年のご挨拶。

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