第105定期宗会　未来を切りひらく活力ある宗門づくりへ

第105定期宗会が３月５日から８日まで、東京都大田区日蓮宗宗務院で開かれた。宗会議員43人と宗務委員ほかが出席し、提出された議案について慎重に審議を行った。
開会式では内野日総管長猊下が「世界の情勢を顧みますと、政治・経済・社会・教育などは様々な困難に直面して混迷を極め、正に末法の様相を呈しております。日蓮宗教師の命題は一切衆生への抜苦与楽、立正安国、仏国土顕現という祖願達成に邁進することでありましょう」と教旨で述べられた。
会議の議事進行は駒野教源議長、藤原円俊副議長が務めた。初めに災害対策検討委員会の齋藤邦昭委員長が、宗門の東日本大震災の対応についての検証結果から「規模や種類の災害に対して整合性を持った一元的な対応が可能となるよう災害対策の体系を整備すべき。専任の部署の新設が望まれる」と報告した。
渡邊照敏宗務総長の施政方針挨拶では、11月11日に千葉県本山鏡忍寺で「日蓮聖人小松原法難七五〇年宗門法要」が内野日総管長猊下を導師に迎え営まれることや、国内外のテロや凶悪犯罪事件をあげ、宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」のスローガン「いのちに合掌」の精神を一人でも多くの人びとに伝え弘めることが必要だと述べた。また宗祖御降誕八〇〇年の企画案として、「同県大本山誕生寺や他の霊跡寺院などへの団体参拝の呼びかけ」、「教区管区での御降誕法要のみならず、寺院とその地域社会とともに御降誕を祝える取り組み」、「宗門だけではなく社会全体を担う次世代青少年育成や芸術文化活動の推進」などがあげられた。さらに埼玉県の越谷市、草加市、吉川市を次期国内開教の地域として指定したことや、大震災の被災状況に応じた対策の遂行などを述べ、「明るく開かれた伝道教団」を目指し、「時代の変化に柔軟に対応し、未来を切りひらいていく活力のある宗門づくり」に邁進することを誓った。
続いて予算案や規程中改正案などの議案が、各所管から説明された。改正案は、運動本部に臨時の担当者を置くことや、宗務所の協議員任期を３年から４年に改めること、福祉共済と大規模災害救援対策の規程整備に関することなどが提出され、各委員会に付託された。
宗務総長への代表質問は宗政会派同心会の田中文教会長、同明和会の張田珠潮会長が行った。田中会長は「いじめによる自殺」や「孤独死や自殺者が年間３万人の無縁社会」などの“いのち”に関する問題に対して、宗門が進むべき道を問いながら、大震災の被災者や福島第一原子力発電所事故による警戒区域内寺院への支援などについて質問。渡邊宗務総長は「日蓮宗あんのん基金」で震災復興支援や国内外の国内外の社会問題に対して活動するＮＧＯ、ＮＰＯに援助を行っていることや、今後災害義援金で警戒区域寺院への援助を検討していく旨を述べた。
張田会長は質問に先立ち、原子力問題や憲法改正について言及。憲法については「戦後68年を経て、戦争の苦しみが忘れ去られ、“目には目を歯には歯を”という思想が広がっている。日蓮宗では太平洋戦争の反省から“立正平和運動”が提唱された。私たちはその精神を思い出し、“いのちに合掌”を掲げ平和の重みを訴えていくべき」と語気を強めた。
12人の議員からの通告質問では、主に宗門運動や御降誕八百年の企画などで、各所管の局長、部長ほかが応答した。
最終日には明和会幹事長の佐野前延議員らが日蓮宗宗制修法規程の改正を求めて発議し、議案を駒野議長に提出した。この議案は加行所のさらなる管理、運営の適正化を目指すため、規程中の「毎年11月１日から100日間開設する」とある項目の「毎年」を削り、「特別な場合、宗務総長は伝主に諮り開設を中止することができる」の一文を加えるというもの。各会派などの代表者が議案について討論した後、表決に入り反対多数で否決された。
さらに佐野議員らから加行所に関する特別委員会の設置を要望する建議案が提出されたが、表決により反対多数で不採択となった。
宗務総長提出議案について、付託された各委員会の委員長から報告が行われ、宗門運動本部に職員を置くことを規程に含むなど、多数の議案が可決された。
また会議では、同心会を代表して田中会長が加行所に関する声明文を発表、人命尊重や読経考査の適正化、伝師による初行志願僧と師僧、また再行志願僧の面接、初行志願僧のための予備的な加行所の開設、再行志願僧の新たな基準の入行考査、定員化を図っていくことを述べた。