日蓮宗新聞

2013年2月20日号

苦修錬行の寒壱百日を成満

それぞれの想い胸に
修法の秘法を授かるために僧侶が苦修錬行を積む千葉県市川市大本山中山法華経寺(新井日湛貫首)の日蓮宗加行所(新井貫首=同所伝主、太田順道伝師)が、修行期間の壱百日を2月10日に終えた。同日の夜明け前、娑婆と修行場の境界の門、瑞門をくぐり姿を現した加行僧134師は、やつれた表情も見受けられたが、精悍な瞳をのぞかせた。100日前とは別人のような勇姿を前に、感激の涙声で行僧の名を呼ぶ檀信徒の姿も見られた。

祖師堂で営まれた成満会では、多くの檀信徒が見守る中、加行僧が読経三昧で嗄れた声を堂内に轟かせた。全ての加行僧に新井伝主から修行の証「許證」が授与され、初行僧には渡邊照敏宗務総長から修法師辞令が交付された。太田伝師は挨拶で、「辛いと思う厳しい修行の中、成満できたのは仏祖三宝や自分の力だけではなく、師匠や檀信徒の強い思いがあったことを忘れてはなりません。修法を末法の世の人たちのために役立てて、大いにご活躍ください」と加行僧を激励した。また佐藤光昶全堂代表(五行=大阪府岩滝寺内)は「立正安国の祖願に基づき習得した祈祷修法をもって世界と社会に寄与する」と謝辞で誓った。
法要後、再行代表の合川泰通師(長崎県常在寺内)の出迎えのため、長崎からきた檀徒の中辻徹さんは「今年は例年より寒く、厳しい修行だったと聞いている。とにかくご苦労さまと言いたい。自坊に帰ってきたらもっと常在寺を盛り上げてほしい」と期待を寄せていた。

◇韓国から16人で出迎え
「ポッピュンスーニン(法顯上人)!」。民族衣装のチマチョゴリで身を包んだ韓国からの団体は四行副代表を務めた禹法顯師(韓国大韓佛教寶土寺主任)の姿を見つけて手を振った。今回、16人で禹師を出迎えるために来日した同寺の信徒だ。禹師は妻の閔妙径法尼と共に韓国で日蓮宗の教えを長年伝えているため、信徒たちは「法顕上人の健康が何よりの心配」と述べていた。禹師の元気な姿を見つけると、「法顕上人は4回目の成満! 韓国の日蓮宗がもっと発展するために、みんなで頑張っていく」と胸を張り、口を揃えた。

◇待つ者の辛さ
初行を成満した吉塚敬則師(静岡県本山妙立寺内)は成満会を終え、寺族や檀信徒と対面すると緊張が解け笑顔を見せた。吉塚師は「加行所を出て多くの檀信徒のみなさんの姿を見た時に、先輩僧から言われた自分一人で行をするのではないという言葉を実感して涙が出ました。本当にいろいろな人の支えがあってこの100日間があった。感謝しています」と語った。また師父である同寺貫首の吉塚日浄師は「私も加行所に入った経験がありますが、待つ者の辛さがこんなにも大変な修行だったということを知りました。100日がこれほどにも長く感じたのは初めて」と述べた。

◇もう一度故郷を!
初行成満を迎えた福島県双葉町妙勝寺の瀨戸隆寿師の帰山式は、東日本大震災の原子力発電所事故の影響で未だに自坊に戻ることができないため、同県いわき市妙宝寺(新妻教誠住職)で行われる。「とにかく復興祈願がしたい」。加行所から出てきた瀨戸師は開口一番に語った。瀨戸師は多くの戻ることができない被災者や檀信徒の状況に心を痛め、苦しんでいる人たちの心の支えとなるために祈祷ができるようにならなければならないと38歳で入行を決意した。「自坊の檀信徒は故郷を事故で追われたため別々の地域で生活しているので、大勢の檀信徒が面会に訪れる他の行僧が羨ましく思えました。けれど、その羨ましさは、もう一度、当たり前のように大勢の檀信徒が集まれる故郷を取り戻すために、祈り続けなければならないという私に与えられた試練のように感じます」と瀨戸師は述べ、話を終えると、「瑞門をくぐった時に自坊の檀徒さんがいたんですよ。この大勢の出迎えの檀信徒さんの中で見つけられるかな」と顔をほころばせた。

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2013年2月10日号

「福はーうち!」各地で掛け声響く

休日と重なり、家族連れで賑わう

全国各地の寺院教会結社などで2月3日、邪気を払い無病息災を願う節分追儺式が行われた。日曜日が節分にあたるのは平成20年以来、5年ぶりで、各地で行われた豆まきはたくさんの人出で賑わった。

総本山身延山久遠寺
総本山身延山久遠寺(内野日総法主)には約8千人の参拝者が訪れた。節分会が本堂で営まれた後、境内に造られた特別桟敷から内野法主猊下や浅香山親方(元魁皇関)、女優のさとう珠緒さんらが豆まきを行った。参拝者は福を受け取ろうと豆がまかれるたびに歓声をあげ、手を伸ばしていた。

大本山池上本門寺
東京都大田区の大本山池上本門寺(酒井日慈貫首)の節分追儺式には、約1万5千人の参詣者が訪れた。
今年の福男と福女らが裃姿で池上の町を練り歩いた後、大堂で営まれた追儺式法要に参列した。修法師の力強い祈祷に続いて導師の酒井貫首らが堂内豆まきを行い、参列者の招福と無病息災を祈念した。
大堂前に設置された特別桟敷での豆まきは、梵鐘を合図に開始。酒井貫首や福男・福女、プロレスラーの武藤敬司さん、佐々木健介・北斗晶夫妻、タレントの松本伊代さん、平将明衆議院議員、松原忠義大田区長らが勢いよく福豆をまくと、境内を埋めた参詣者が歓声をあげながら手を伸ばした。
家族4人で参詣した女性は「子どもたちを始め家族の健康が第一。全員分の福豆をいただけました」とうれしそうに話した。また男性の一人は「ご利益をいただいて、受験生の息子のために福を持って帰りたい」と語った。

大本山中山法華経寺
千葉県市川市大本山中山法華経寺(新井日湛貫首)で営まれた節分追儺式は2回にわけて行われ、歳男歳女計約250人が参列した。参列者は同寺に開設されている日蓮宗加行所(太田順道伝師)の行僧約70師のご祈祷を受け、無病息災を祈念した。
豆まきには合わせて約1万5千人の参拝者が訪れた。ゲストとして参列した俳優の美輪明宏さんや歌手の槇原敬之さん、タレントのはるな愛さん、エッセイストの江原啓之さんらが、新井貫首の「慈眼視衆生 福聚海無量 福はうち!」のかけ声とともに豆まきを行うと、参拝者は歓声をあげながら福をつかみ取ろうと目を輝かせ顔を天に向けた。法要中、一緒にお題目を唱えていた槇原さんは「日曜日ということもあり、たくさんの子どもたちの笑顔が印象的だった。参加できてうれしい」と語った。

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2013年2月1日号

阪神・淡路大震災から18年

復興と今なお残るつめ痕

6,434人の尊い命が失われた阪神・淡路大震災から18年。神戸市中央区東遊園地で1月17日に行われた「阪神淡路大震災1・17のつどい」には、復興を遂げた神戸から「頑張れ東北」「一日も早く復興できるように」などと書かれた東日本大震災の被災地へ向けての応援メッセージが数多く記されていた。「これが本当にあの大震災が起こった町なのか」と思うほど神戸の町は美しく整備され、復興した様子を見せる。しかし、神戸を訪れ、被災した人たちに話を聞くと、時間が経過してもいまだに「心」の復興ができていない被災者のいることがわかる。

◇あと5分あれば…
同つどいに4年前から参加している兵庫区妙法華院(新間智孝住職)檀徒のAさん(65)さんは「あと5分あれば母を助けることができたかもしれない」と長い月日が経った今もあの日のできごとを悔いていると語った。
震災時、明石市の自宅で大きな揺れを感じたAさんは車に飛び乗り、神戸市長田区に住む両親と妹さんの家に向かった。到着すると妹さんは倒壊した家から救出されていたが、両親ががれきの下敷きとなり生き埋めの状態になっていた。父親は近くにいた若い男性の力を借り、懸命な救助でどうにか助けられた。そして次に母親を助けようとした時、隣家の炎が両親の家に燃え移り、残念なことに救助することができなかった。「母が目の前で苦しんでいるのにどうすることもできなかった。悔しい気持ちは18年経った今も変わらない」。Aさんは遠くを見つめるようにそう語った。
現在、Aさんは毎朝4時に起き、仏壇を整えた後、「助けられなくてごめんね」と母への供養を18年間捧げ続けている。そしてAさんは「東日本大震災が起こったが、災害によってある日突然、肉親を失う気持ちはよく分かる。亡くなった人たちを供養し、必死に生きて欲しい」と語った。

◇町づくりは成功したのか
木造の長屋や住宅が数多く建てられていたために、火災の被害が最も大きかったとされる長田区にある北公園では日蓮宗青年会(川添泰寛会長)の読経供養が毎年、行われている。供養に参列するBさん(72)は「今は鉄筋の住宅が建ち並び、防災されているが、長屋などで当たり前に行われていた隣近所の住民の交流が失われた。震災はハード(建物や物)だけでなくソフト(心)をも奪ったのではないか。町づくりが本当に成功したのか疑問」と語る。

◇震災の影響残す寺院
震災時、多くの檀信徒の家屋が倒壊し、火災で全焼するなどしたが、同じように日蓮宗寺院も全壊などの被害があった。それらの寺院の現状を確認するため数ヵ寺を訪問すると、立派なお堂と庫裏が建てられており、復興のようすが見てとれた。その一方では、いまだに震災の影響を受けている寺院があるようにも感じた。灘区法隆寺(森安貞仁住職)の本堂は本震での倒壊を免れたが、余震などでの二次災害の恐れもあることから解体された。現在は一見すると一般の住宅のような本堂が建立されている。森安住職によると本堂建立の資金は義援金や宗門の助成金、貯蓄で全て賄えたという。森安住職は迎えた1・17について「まだまだ立ち直れない被災者はたくさんいる。東日本大震災ももうすぐ三回忌を迎えるが、希望を持って生きて欲しい」と述べた。
「まだ取材を受ける気にはとてもなれない」「忘れられるのが恐い」。前者は18年経った阪神淡路大震災、後者はもうすぐ2年を迎える東日本大震災の被災者の言葉だ。この言葉が私たちに教えることはあまりにも大きい。

 

兵庫東・日蓮宗青年会 神戸各地で慰霊法要
たくさんの人とともに合掌

兵庫県東部日蓮宗青年会(川添泰寛会長)の会員僧侶15人は1月17日の早朝、18年前の阪神淡路大震災発生時刻に合わせて神戸市内の各地で回向を捧げた。当時、小・中学生だった会員たちは、給水車からの水汲みなどを手伝ったり、学校の体育館が避難所となっていたための卒業式の中止など、子どもの立場で震災を体験した世代だ。会員の一人は「誰の責任でもない。ただ私たちにできるのは、お題目を唱え、犠牲者のご冥福をお祈りすることだけ」と語った。
中央区東遊園地で行われた「阪神淡路大震災1・17のつどい」では、会員たちが参加者とともに地震発生時刻の午前5時46分に黙祷。その後、青年会が会場隅で読経をはじめると言葉をかけずとも、参加者たちは会員を取り囲むように集まり合掌し、改めて犠牲者の冥福を祈った。
続いて長田区新湊川公園と同区北公園で読経、唱題、回向を捧げた。最後に兵庫区妙法華院(新間智孝住職)で慰霊法要が営まれ、川添会長は「18年前、“神戸の町は本当に復興できるのか”と誰もが思った。被災者の心情を考えれば、まだまだ復興とは言えない。しかし、阪神淡路大震災を経験した私たちは、昨日より今日は少しよくなっているというちょっとした変化を認識しながら、一歩一歩進んできた。東日本大震災の復興への道のりはまだまだ遠いが、同じように一日一日の変化を希望に変えてほしい」と語った。
また当日、宗務所(清水教信所長)主催の慰霊法要が、明石市本松寺(釋孝修住職)で武田隆遠布教師会長を導師に営まれた。

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新年のご挨拶。

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