論説

2013年1月20日号

新年と新政権への期待と希望

日蓮聖人は「正月は妙の一字のまつり」(『秋元殿御返事』)と仰せになり「妙とは蘇生の義なり、蘇生と申すはよみがえる義なり」(『法華題目鈔』)とも仰せになられて、一年の初めの迎え方の大切さを「妙」の一字に顕されてご指南されている。
多くの日本人は年の暮れには除夜の鐘をつき過去一年間を清算し拭い去り、元日には神社仏閣に初詣でをして新しい年が良い年であるよう祈る。
暮れには衆議院議員の選挙があり、民主党政権から自民党政権へと移行した。総理大臣も安倍晋三氏となって新年とともに動き出した。
昨年までの日本は、一昨年3月に起きた東北の大地震の影響で日本全体に閉塞感が漂っていた。地震とともに大津波に襲われ、国土が破壊され家屋が流され多くの人命が失われた。加えて福島原発の大事故により放射能の汚染が広がって、多くの人達が避難生活を余儀なくされた。作物や海産物も汚染され国民生活にも大きな影響が出た。復興事業も順調には進まず、日本中が打ち沈んでいた矢先の政権交代である。たぶん国民の意志が現状打破を願ってのことなのかもしれないが、とにかく国の舵取りは変わった。新しい出発を期待してのことだろう。
新政権には解決すべき問題が山積している。景気回復の経済政策はもちろんだが、近隣諸国との領海問題の解決、エネルギー問題の根本的解決等々、どの項目も重要である。
原発の問題はエネルギー問題ではあるが、人類の生存にかかわる重大な課題として真剣に取り組んでもらわねばなるまい。これまで原発はエネルギーの安全な供給源として政府も電力会社も強気で推進してきた。外国で原発の大事故が起こっても日本では起こり得ないという安全神話が先行し、クリーンエネルギーとしてその後も原発を設置し続けてきた。だが原発で生み出される放射能の危険性はいまさら指摘するまでもなく、空気中に放出されれば汚染された地域に人間は住むことも入ることもできないし、作物や家畜や海産物は販売することもできない。それが福島原発の事故でようやく目が覚めたというわけである。だが原発について新政権はエネルギー全体の問題として結論を出していくという。人類と共存できないもの、それが放射能であることを忘れないでもらいたい。
また憲法問題は更に重要である。改憲の声が聞こえているが、第二次世界大戦で未曾有の人命を失い国土を破壊された日本が、世界に向かって永久に戦争放棄を誓った平和憲法である。世界のどんな国にもない誇りうる憲法である。改憲によって軍隊を持つ国に変われば戦争を容認することになり、再びかつての軍国主義時代が想定され悲惨な目に遭う恐れがないとは断言できまい。国民があっての国家である、という原点を忘れない政治を心掛けてほしいものである。
新年の出発に際し、何よりも国民の命の大切さ、平和な生活が実質的に保障される国としてよみがえってほしいと、お題目を唱えつつ願っている。

(論説委員・石川浩徳)

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2013年1月10日号

便利さの裏返し インターネットの普及と発展から

いよいよ新しい年を迎え、正月の風景と冬の景色に、美しい日本の四季を感じる。私の住む東京でも冬空は高く澄み渡り、新名所の東京スカイツリーが颯爽とそびえ立っている。さらに、極めてまれではあるが鉄橋を渡る車窓から、富士山を見ることができる。遠く離れたこの山ではあるが、なぜこんなにも富士山を見ることができた時に嬉しくなるのだろうか。そう思うと自分は、根っからの日本人であることを改めて自覚するのである。雪をかぶった富士山の美しさに胸高鳴り、この嬉しさを共有したくなり、近くにいる誰かに教えたいと、電車の車内を見渡すが、殆どの人が下を向いて携帯電話に夢中になっている。これは、ところ限らず都会の新しい日常風景となっている。
現在、自分の意思で携帯メールやインターネットをやめることができない、インターネットをしていないと不安やいらだちを覚えるなどをいう、インターネット依存症(造語であるが)の日本人は、270万人を超えるという報告があがった。そして、キレる、引きこもる、社会生活が送れないなどの症状を引き起こす可能性が高くなるなどの、様々な弊害が深刻な社会問題になってきている。韓国、アメリカではその対策を10年も前から国が講じている。さらに、日本の対応の遅さを指摘され、動かない国政に変わり、民間団体では調査研究を進め、既にその報告書と対応策は文部科学省、厚生労働省に提出されている。急がねば手遅れになると私も思う。なぜなら、その一番被害者となるのが子どもであるからだ。
子育てをしている家庭に広がり、まさにその子どもが、影響を受けて育ってきている。「表情の乏しい子ども」「目が合わない子ども」の増加である。1歳までの乳児はこの時期、特に大切な心と心を通わせる人間的な関わりによって、自分を不快から快へ導いてくれる存在として母親を、絶対的な信頼者として位置付け、安心という基地に抱かれながら、情緒が発達していく。やがてそれは、細かな感情へと細分化されて、ヒトが人間となり社会性を身につけていく。母親の話しかける言葉、仕草、表情を見て聞いて乳児は、学習していくのである。
しかし、ネット社会の普及と発展に伴い、これらの便利な情報収集ツールは、育児中、特に授乳中の母親にとって、最適な時間となってしまう。母親は、携帯電話やスマートフォンの操作に夢中になり、言葉をかけず、目を合わさずただミルクを与えるだけの行為。乳児は、ただおなかを満たすという、積み重ねを招く危険性がある。子育てには、様々な場面でのコミュニケーションの積み重ねが重要になるのであるから、これはほんの一例である。先人は、「育てたように子は育つ」という言葉を残した。子ども達にも、やがて子育てをする時がくるであろう。子育ての伝承においてもどうか、人と人のコミュニケーションが、無機質なものを通してではなく、心と心が通じ合う人間的な営みとして再び見直されるように祈るのである。
鎌倉時代、宗祖日蓮聖人は、真筆写本を含め400編以上の御書を遺された。特に女性信徒に宛てた手紙からは、思いやりの深さと慈悲あふれる内容は皆知るところであろう。大変不謹慎ではあるが、これが、もしも「メール」であったならば、これだけの感動を味わうことができたであろうか。また、大切に後世まで引き継ぐことができたであろうか。「便利」への欲求を少し抑えてこそ、繊細な感性と奥深き人情が生まれる。

(論説委員・早﨑淳晃)

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2013年1月1日号

立正安国の筋道を立てていく年

新年おめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

新生日本への希望
平成25年の新春を心から慶祝したい。昨年は日本も世界も諸問題をかかえて変動の年であった。
昨年の「壬辰(みずのえ・たつ)」の年は、目の前の問題の解決のためには、私利私欲を捨てて勇気を持って果敢に進んでいけという年であった。
しかしながら東日本大震災被災地の復興や被災者の救済は遅々として進んでいない。
原発事故で故郷を追われた人々は全国に散って、2度目の冬を避難生活の中で迎えている。
それに対して、日本はロンドンオリンピックでは大活躍をして史上最多のメダルを獲得した。特になでしこジャパンの活躍は、日本人に自信と勇気を与えてくれた。それにノーベル医学生理学賞を山中教授が受賞して、日本人に喜びと希望を与えてくれた。更に又昨年は大宇宙の摂理を示す金環日食を見ることができた。
一年を振り返って清水寺で揮ごうした漢字は「金」であった。
今年も私達日本人は、一人ひとりがその場その場で金の様に輝いて、「新生日本への希望」を涌かしていこう。

癸巳(みずのと・み)の年
今年の癸巳の年は、今迄潜在していたいろいろな事が顕在化してくるので、筋道を立ててこれらに対処していかなければならない年である。もし筋道を誤る様なことになると大混乱が自然に発生し、一揆のような騒動が起こりかねないから気をつけろという年である。
十干の「癸」には二つの意味がある。第一は「はかる」ということで、物事の量や長尺や内容などを「はかる」ことである。「はかる」には、その基準となる原則が必要である。その基準をどこに置くかではかられる物の価値が変わってくる。社会現象にしても、家庭生活にしても個人の生き方にしても、その基準が大切であることは云うに及ばない。
お題目を唱える私達は、今年も迷うことなく「立正安国」の柱を立てて一途に生きていこう。
第二には「のり(法)」「みち(道)」の意味がある。「のり」は物事の規範であり、「みち」は物事を進めていく筋道である。この規範や筋道によって物事の進んで行く道が違ってくる。従ってその方向によっては大混乱が生ずるというのだ。
私達の進んで行く道は法華菩薩道、お題目の道、立正安国の道である。今年もまっしぐらにこの道を進んでいこう。
「巳」は説文学からいうと、蛇の象形文字であるという。春になって冬眠生活を終えた蛇が、地表に這い出る形を表している。つまり従来の地中での生活から、地上に出て来て新しい活動を始めるという意味がある。
今迄停滞していた事や懸案になっていた問題や伏在していた人が表面に出てくるという年である。
従ってこれらの対処の仕方に筋道を立てなければならないということであるから、立正安国運動を担う私達の責任は重い。

立正安国・お題目結縁運動
立正安国の宗門運動も、今年で第二期の後半に入る。目標では心と社会と人との3つの育成である。
この3つの育成のためには、「実乗の一善に帰する」一大唱題運動を推進していくことだ。唱題運動によって信心を涌かし平和な仏国土の顕現を目指していこう。
仏国土への道は唱題の道しかない。今年もこの道一筋に前進していこう。

(論説委員・功刀貞如)

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新年のご挨拶。

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