論説

2012年12月20日号

山積する諸問題 解決の糸口は見出せるのか

12月に入るや、急に新聞の折り込み広告が増え、店々のショーウィンドもにぎやかになった。町では年末商戦がたけなわ、しかし、人々を取り巻く状況は多難である。

衆議院選挙与野党逆転・政権交代か
12月初旬にこの原稿を書いているが、16日行われる衆議院議員の選挙では、多党乱立の混戦の結果、政権交代となることが予想されている。
立候補した議員にとって、よりどころとなる堅固な政党が無いことが、今回の多党乱立の原因となった。第三極政党も、あたふたと集合離散を繰り返し、何を主張しようとしているのか不分明のまま選挙戦に突入した。新政府が震災からの立ち直りを速やかに実現し、経済不況にあえぐ日本を立て直せるのか、人々は疑心暗鬼である。

放射能汚染と除染の問題
福島原発の大震災による事故、それに伴う放射能汚染により、未だに多くの人々が避難生活を余儀なくされている。
「除染」というが、この言葉は不正確である。屋根や塀を高圧洗浄機で洗ったり、表土を埋めれば、汚染が無くなるのであろうか。汚染物質が、排水溝や浄水所に移動するだけで、汚染は除去できない。「移染」ではないのか。
チェルノブイリの原発事故では、現場で放射能防護工事に携わった人達が、多く白血病や癌にかかった。平常運転している時も、毎年炉心部の点検があるという。炉心部の点検をやり被曝する人がいるのである。ウランを鉱山から掘り出す人達は健康でいられるのか。原子力発電は、大勢の労働者の健康・生命を犠牲に成立しているのではないか。
今回の争点、原子力発電については、廃止するにしても、期限を区切って存続するにしても、使用済み燃料や現在使用中の燃料の冷却管理は必須で、放射能汚染の問題は解決されたわけではないのである。

消費税増税と日本経済の逼塞
消費税増税は、8月に三党合意で法案が成立した。平成26年4月に8パーセント、平成27年10パーセントと段階的に増税するという。増税分は福祉に使うというが、いわば国民への膨大な借金、国の財政の国債への依存はどうなるのか。
国と地方の借金残高は1千兆円といわれている。平成24年度政府予算総額90兆円のうち44兆円を国債発行でまかなうという。国家予算の半分を借金で賄うということは、素人考えでも尋常なことではない。
戦時国債のように、国債が只の紙切れになり、アイスランド、ギリシャ、ポルトガルなどのように他国の援助を得なければ、破綻してしまうような事態にならなければよいが、と思う。

TPP(環太平洋経済連携協定)
太平洋を囲む11ヵ国間で関税撤廃し自由貿易を進めようとする動きに、日本が参加するよう要請されている問題である。
日本は、農業産品の値段が諸外国に比較して高い。ことに米の自給を守るため、精米には778パーセントも関税をかけて米農家を保護している。もしこの関税が無くなれば、安価な米や農産物が入ってきて、日本の農業を崩壊させる可能性がある、と農業関係者は危惧している。一方、工業製品などは、外国に輸出しやすくなると言うメリットもある。世界経済の「自由化」の流れの中で、日本がどういう立場を取るのか、決断を迫られる難問である。
日本の平成25年が、人々にとって平和で不安のない年であることを願うのみである。

(論説委員・丸茂湛祥)

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2012年12月10日号

たかが坊主。「役割」は「地位」ではない

先日、宗門の中で最も尊敬する僧侶の一人が亡くなりました。60歳という若さでした。その方が私に常々言っていたことがあります。「俺たちは、たかが坊主だろ。何を偉そうにする必要がある」。強烈な言葉です。しかし、この言葉は今も私が一般の方に接する時の教訓となっています。
この方は、かつて南無の会で喫茶店説法を行っていました。通常、説法は本堂で行います。招かれて他の場所でも行うこともあり、また、街頭布教は、路上で行われます。当時は本堂以外で定期的に法話・講話が行われることはありませんでした。師はこの寺の敷居を低くした説法の場を通じて、従来の型にはまらない布教を身につけていかれたのでしょう。その後、ハワイ日蓮宗別院、ニューヨーク大菩薩禅堂、日蓮宗布教研修所等で檀信徒・青年僧侶の指導に当たられました。また、池上本門寺では在日外国人のための仏教セミナーを企画するなど、布教活動では絶えず先進的な考えを以て行動されました。
師が活動の中で気をつけていたのが、従来の寺の常識に囚われないことでした。外国人に対するセミナーや布教研修所で、師から企画やカリキュラムの制作・運営を依頼された時、「今の日蓮宗の布教に必要だと思われることは何でもよいからやってくれ。宗門の常識は考えなくてよい。後の責任は俺がとる」と言われたのは今も鮮明に覚えています。その後行った研修では、当時としては画期的な企画を行いました。そのため、既成概念から離れることができない一部の宗門関係者から批判がかなりあったようですが、師が信念を貫いたおかげでセミナーや研修は一定の成果をあげることができました。その時、得ることができた布教研修についてのノウハウは、今では当たり前のこととして受けとめられています。
私は師のもとで様々な事業の企画・運営をしてきましたが、その師が私に絶えず言っていたのが「俺たちはたかが坊主だろ」でした。この言葉、宗門の僧侶の方々が聞けば、「何と品のない、礼儀を知らない言葉だ」と思うかもしれません。しかし、この言葉、私たち僧侶に大きな教訓を与えてくれるのです。
「僧俗一体」というスローガンがあります。僧侶と檀信徒が一体となった活動を目標として作られています。しかしまだ、寺・僧侶と檀信徒・未信徒の溝は十分に埋まっていないようです。寺の行事では、僧侶が中心で檀信徒は「お客様」扱いです。式典があると、来賓の僧侶は本堂の中、檀信徒は外です。式衆以外の僧侶と檀信徒が一緒の席に座ることが許されないのでしょうか。どうも私たち僧侶は無意識の中に一種の特権意識のようなものを持ち、檀信徒との間に垣根を作ってしまっているようです。
僧侶も信徒も修行者としては同じです。異なるのは、僧侶が特定の分野で知識や経験があるので、それを教え伝える役目を負っていることです。非常に重い役目です。そしてそれを周りから期待をされています。私自身その重圧につぶされそうになることもあります。俗に言う「位負け」です。また選挙の時はだれにでも頭を下げる政治家が、当選した途端に威張り散らすことを目にします。自分に与えられた「役割」を「地位」と勘違いし、自分は偉いと思いこんでいるのでしょうか。僧侶を「重い役目」と考え、「高い地位」と考えないこと、そしてそれが、檀信徒と同じ目線に立った導きにつながることを、師は私に教えようとしていたのではないでしょうか。

(論説委員・松井大英)

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