日蓮宗新聞

2012年8月20日号

東日本大震災から2度目の夏 未だ多くの人が苦悩の中に

東日本大震災から2度目の夏を迎えた。甚大な被害のあった被災地の沿岸部にいまだ積み上げられたままのがれきには植物が生い茂り、遅々として進まない復興の現状を物語っている。そしてトラウマ・ストレス・将来への不安・孤独死・自死などさまざまな問題が、今も被災者の心を締め付けている。
お盆前の8月4、5日、震災で全ての堂宇・庫裡が焼失した岩手県大槌町蓮乗寺では、木藤養顕住職や総代らが施餓鬼の申し込みや全国から寄せられた日蓮宗義援金配布などの応対に追われていた。申し込みなどに来ていたのは仮設住宅や町外の避難先からの檀信徒も多く、親戚同士で近況や所在を確認する姿があった。仮設住宅に1人で住む男性は「1週間ぶりに人と会話ができた」と話していた。
北上市に避難している檀徒の女性(72)は、震災当時に同寺まで逃げ一命を取り留めたが、夫が震災のショックで心神喪失となり介護が必要となり大変だと話した。女性は受け取った義援金を見つめ、「全国からの勇気をいただき、本当にありがたい。夫と家族を支えるためにがんばらなくては」と気丈に語った。
 また檀徒の男性(38)の小学校5年生と1年生の2人の娘は祖父母を震災で失って以来、「生きてていいのかな」と思い詰めたようにつぶやくようになり、さらに通学途中にあるがれきの山を見るのが苦しいとの理由で転校を決めた。男性は「何でも進んで自らチャレンジするような子だったが、あの日以来変わってしまった。子どもたちが遊ぶ環境も与えてあげられなくて申し訳なく思っている」と述べ、「全国の人たちにまだまだ復興には時間がかかるということをわかってほしい」とも話した。
震災時のショックに加え、避難生活でのストレスも重なっている。仮設住宅は隣接する家との境が薄い壁1枚のため、話し声が漏れてしまう。住民のストレス発散に集会所での体操や講演などさまざまな取り組みが行われているが、娯楽や息抜きとなるスポーツの施設などが足りていないこともあり、被災者間のいざこざも絶えない。また町の復興計画も定まらないまま時間が過ぎていけば、町外に避難する人が避難先などに定住し、「町が急速に過疎化していくのでは」などと将来を不安視する声も聞かれた。
さまざまな問題に被災者が向き合う中、檀信徒にとっての希望の一つは蓮乗寺の復興だ。同寺は早くて来年に本堂などの建設に着工する予定だ。木藤住職は檀信徒や地域住民より先に寺院が再建されることを懸念しているが、総代や檀信徒は「寺院が復興すれば地域の何よりの勇気となり、また心の拠り所になる。後ろ向きなことばかりでは本当に参ってしまう。何か生きがいがないと」と話し、住職の背中を押す。
蓮乗寺だけではなく、山田町瑞然寺の佐々木瑞英住職も民間の団体「桜プロジェクト3.11」と協力して、6月に地元の山に100本の桜を植え、地域の復興に向かっている。佐々木住職は「花を見て笑顔にならない人はいない。三陸を桜でいっぱいにして、人がたくさん訪れる場所にすることが目標」と意気込みを示した。被災地が生き生きと輝く「本当の夏」はまだ先のことかもしれないが、その日がくることを信じて長い目で被災者と被災地を理解し続けることが大事なことである。

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