日蓮宗新聞
2012年5月20日号
「松葉谷」で遺跡発見
宗祖の鎌倉ご在世時代について新見解の可能性
神奈川県鎌倉市の安国論寺(玉川覺祥住職)境内から、鎌倉時代初期の井戸の跡と、鎌倉時代初期から室町時代にかけての「切岸」による大規模な土木工事の跡、さらに14世紀中頃の古瀬戸の壺などが発見され、埋蔵文化財の調査が進められている。
この遺跡は、同寺「観音堂」建立のための発掘調査の際に発見されたもので、玉川住職は「日蓮聖人の鎌倉ご在世時代のことが少しでも分かれば、大変ありがたいです」と調査結果に期待を寄せている。
安国論寺のある鎌倉市大町付近一帯はもと「松葉谷」と称され、日蓮聖人が立教開宗後、20年あまりにわたりご草庵を結ばれ、『立正安国論』を述作されるなど、布教の拠点となった場所と伝えられてきた。
坂詰秀一立正大学名誉教授は今回の発見について「従来日蓮宗で伝承として語り継がれてきた“松葉谷”に、13世紀前半に居宅があったことが証明された。今後の調査では、史実と伝承の関連性を明らかにしていくことが大切」と話している。