2011年10月1日号
被災地の慰霊と復興祈願 悲母観世音菩薩像を寄進
総本山身延山久遠寺ほか後援
山梨県の身延山大学学園(井上瑞雄理事長、浜島典彦学長)は東日本大震災の被災地・岩手県に慰霊・復興祈願のための悲母観世音菩薩像を寄進(後援=総本山身延山久遠寺ほか)することを決めた。これを受けて東日本大震災から6ヵ月を迎えた9月11日、像建立のための鑿入式が久遠寺(内野日総法主)で営まれた。
1万5千人以上の犠牲者を出し、未だ行方不明者が4千人にも上る未曾有の大震災。身延山大学では震災発生当初から、吉田永正客員教授が代表を務めるボランティアグループ・マイトレーヤとともに教職員や学生が復興支援などを行ってきた。像の彫刻を担当する同大学の東洋文化研究所仏像制作修復室の柳本伊左雄教授(写真上)も惨状を目の当たりにし、「まだまだ未来があったはずなのに犠牲となった子どもたちや、子どもをなくした母、悲しみが癒えない被災者・遺族のために何かしなければいけない」と考え、今回の建立計画に至った。
計画によると像はエゾ松の寄木造で高さは像丈3メートル、台座1メートルの計4メートル。また山梨県内の水晶を扱う業者から犠牲となった人と同じ数の水晶玉を提供したいとの申し出があり、悲母観世音菩薩の慈愛に満ちた眼差しの先にある台座に散りばめられる。震災一周忌に岩手県で荒彫りの状態で立ち上げ式を営み、再び研究所で仕上げ彫りと極彩色などが施され、三回忌に開眼供養を行う予定にしている。
鑿入式は岩手県宗務所の吉家本浄副長が参列する中執り行われ、井上理事長(=久遠寺総務)が導師を務めた。力強い修法の後、井上理事長、浜島学長、吉家副長、吉田客員教授、柳本教授が順番に鑿入れを行い、鑿を打つ独特の響きが本堂に響きわたった。式後、井上理事長は「悲母観世音菩薩像が慰霊と復興のシンボルとなることを願ってやみません」と挨拶し、浜島学長が謝辞を述べた。
また建立地の選定について吉家副長は「被災地では流されてきた地蔵を施設などの前に安置し、慰霊や手を合わせることで人びとに安らぎを与えている。像を迎えた時には、誰もが通りがかりに手を合わせられるような環境を整えたい」と語っている。
身延山大学学園では今後、宮城県と福島県にも慰霊のため、像の寄進を予定している。