日蓮宗新聞

2011年8月10日号

本山妙法寺第83世小倉日教貫首の晋山式

「師僧の後押し得ながら、お寺を護る」

「小室山」の通称で信仰を集め、アジサイの名所として多くの人から親しまれている山梨県富士川町の本山妙法寺で7月9日、第83世小倉日教師の晋山式が行われた。
妙法寺は日蓮聖人が身延山在山中の代表的な直創寺院。もとは役の行者が創設した真言宗の大刹だったが建治元年(1275)住持・善智法印が日蓮聖人に帰伏し改宗、聖人を開山に仰ぎ自ら2世となった。病気治療の効果が顕著と伝わる「小室の毒消し秘妙符」でも有名な古刹。
晋山式に先立って行われた行列では、総門から妙法寺万灯講を先頭に小倉新貫首を乗せた駕籠が続き、後方には住職寺であった長野県松本市円乗寺の檀信徒80人がアジサイの咲き誇る参道をうちわ太鼓を打ち鳴らしながら堂内に送った。
式中、小倉新貫首は「当山きわめて厳しい状況下にあり、はなはだ荷重きの感あるも、ただ茫然自失で時を失うは許されず。誠心誠意精進するのみ」と奉告文を読み上げた。祝辞は、渡邊照敏宗務総長、内野日総総本山身延山久遠寺法主の名代・井上日修総務、日蓮宗全国本山会会長・板垣日祐師、小西法縁連合会会長・持田日勇師、伊藤通明師(静岡県感應寺住職)が述べ、小倉師の功績を称え妙法寺での活躍を期待した。
小倉師は謝辞で、師僧であり妙法寺歴世に名を連ねる荒木義栄上人とのエピソードを語り、この日の式には荒木上人の形見の衣をまとって臨んだことを披瀝。「自分一人ではない、今自分は師僧と共にここに立っている。師僧の後押しを得ながらこのお寺を護っていく決意を新たにしたところであります」と結んだ。最後に妙法寺筆頭総代の深澤泰作氏が参列した各位に丁寧にお礼の挨拶を行った。
引き続き、前貫首82世泰中院日祈(池原錬昌)上人の本葬儀が持田日勇師を導師に厳修され、焼失した本堂の再建や「あじさい寺」として多くの参詣者を集める礎を築いた故人を偲んだ。

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東日本大震災の被災檀信徒へ檀信協が数珠3000連を贈呈

法華経で結ばれる絆 日蓮宗はご本尊仏壇

全国檀信徒協議会(江守幹男会長)は東日本大震災の被災檀信徒のために数珠3000連を贈呈することを決め、7月27日に東京・大田区の日蓮宗宗務院で贈呈式が行われた。また日蓮宗(渡邊照敏宗務総長)からご本尊仏壇(簡易仏壇=本紙既報)の贈呈も同時に行われ、被害の大きかった東北3県の宗務所長に寄贈された。

数珠贈呈は宗務院内局の被災地視察の報告を受けた檀信徒協議会が被災檀信徒への支援方法を協議した結果、常任理事会で「少しでも心の拠り所としてもらえれば」との思いで今回の贈呈を決定した。
贈呈式では渡邊宗務総長をはじめ、福島県の小林智英宗務所長、宮城県の日野教恵宗務所長、岩手県の阿部是秀宗務所長、全国檀信徒協議会からは江守会長と相澤弥一郎副会長ら7人を合わせ14人が出席。出席者たちは日蓮宗作成の“祈りの言葉”を読み上げ、大震災の犠牲者への冥福と復興を祈念した。
続いて、渡邊宗務総長が「ご本尊仏壇とお数珠が被災檀信徒の方々の少しでも心の支えとなることを願います」と檀信徒協議会に謝意を表しながら挨拶し、小林所長にご本尊仏壇を手渡した。
次に江守会長が「東北に住まう私たちの仲間がご本尊、ご位牌の他にお数珠も流されてしまったことを知らせる手紙を各管区檀信協会長に送り協力を呼びかけました。旧盆には物故なされた方々のご冥福とご当地の復興の祈りが込められたこのお数珠が、菩提寺ご住職から被災檀信徒に届けていただけます」と語り、目録を阿部所長に寄贈した。謝辞では3県を代表して日野所長が「いただいたご本尊仏壇とお数珠を心の支えとして、僧侶檀信徒一体となって復興に取り組んでいきます」と述べた。
式後の懇談会では、駒野教源災害対策副本部長が被災寺院・檀信徒について報告。最後に阿部所長は「沿岸部、内陸部にある寺院の住職と檀信徒はともに手を取り合いながら必死に頑張っています。その中で、このようなご本尊仏壇・お数珠などをいただけることは檀信徒にとって大きな励まし。法華経で結ばれる絆の強さを感じます」と語った。
現段階では、ご本尊仏壇一体に付き数珠1連が贈られるため、家族全員に数珠を届けることはできない。檀信徒協議会では今後さらに数珠を被災家族にゆき渡らせることを目標に、数珠のための募金活動への理解と協力を管区檀信徒協議会を通じ全国へ呼びかける予定。

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2011年8月1日号

お盆法話

お陰様の人生~陰徳を積む~
(石川県輪島市妙相寺住職 河﨑俊宏 師)

今年、90歳を迎えた檀信徒がおります。お寺にお参りされて50年以上、仏さまにお給仕を続ける一人のご婦人(お婆ちゃん)のお話です。
このお婆ちゃん、いつもお寺に来ると仏さまのお水を替えて下さいます。足元をもたつかせながら、丸くなった腰を伸ばして仏さまに、「お陰さまです、ありがとうございます」と何十年もお水を替えておられます。他のお参りの方々は、その姿に、お給仕の大切さを教えて頂いているようです。
30歳を過ぎた頃、縁あって子供さんのことでお参りに来られるようになり、真冬でも井戸水を被っては、先代住職より教化を受け信行に励まれ、仏さまへのお給仕が始まりました。正に先達のようなお方です。この信行の姿、信仰そのものが、他の檀信徒に与える影響は大きく、お参りの後、「お陰さまの人生、ありがたいの」と口癖のようにお話しされます。何十年と仏さまにお給仕してこられた「陰なる徳行」は今もなお続けられています。故に心から感謝の思いで満たされているのだと思います。
日蓮聖人のお言葉に、「陰徳あれば、陽報あり」(『陰徳陽報御書』)というお言葉があります。陰なる徳・功徳を積むことによって、その報い明らかにあらわれる。という意味になりますが、「陰なる徳」を積むことは、現代社会では難しいことです。競争社会や結果優先、経済優先社会。この社会は、いかにして自らを売り込み、アピールし、はね除け、伸上がって行かなければならない現実。その中で、悶え苦しみ、悩み続ける私たち。実際、「陰なる徳」を積むことは、実に難しいことなのかもしれません。
しかしその一方で、「価値観の変革」を求める現実もあるのだと思います。私たちはこの社会に、身を委ねながらも、自身の中に、安寧を求め、清らかに過ごしたいと望んでいるのも確かだと思います。その葛藤にまた私たちは苦しみます。
法華経には、「世間の法に染められず、蓮華の水にあるが如し」(『従地涌出品第十五』)、現実社会に身を置きながらも、自身を決して見失うことなく、また流されず、悪い環境に自らも染まることなく、まるで泥水に咲く「蓮華」の姿であれ、そのように心がけて生きよと教示されているのです。
冒頭でご紹介しましたお婆ちゃんは、私たちに一つの生き方を教えてくれています。小さなことでもよい、自身ができることを感謝の思いを忘れずに、仏さま、周りの皆さん、そして自身の信行の為に、「陰なる徳」を積みなさいということを。
決して自慢せず、皆が見ていない所でも「陰なる徳」を積まさせて頂く。見返りを期待せぬ行いに、結果として陽報が生じ、お陰さまと言える結果と更なる感謝の思いが強くなるのでありましょう。このような生き方をしたいものです。「陰なる徳」を積むことは、「菩薩行としての実践」とも言えるのでしょう。
私は住職なって19年。周りには「陰なる徳」を積んでおられる方々が大勢います。お参りごとに帳場(受付)の役を率先して受けて下さる方、仏さまのお供えを毎回ご供養して下さる方、仏さまのお花を供えて下さる方、境内の虚空蔵さまに毎回お花をお供えして下さる方、日参し本堂を清掃して下さる方、行事の準備を手伝って下さる方、仏具を磨いて下さる方、様々な人が自分にできることから、「陰なる徳」を積んで下さっています。そこから、法悦(悦び)を感じて下さっています。
人それぞれの「陰徳」を積む方法はあると思います。例えば、私たちの田舎のほうでは、これからお盆を迎えます。お盆のご供養や、お墓参りも「陰徳を積む(徳行)」一つとなるでしょう。受け継がれている「いのち」に感謝し、今生かされていることへ感謝する。そして仏さまに、周りの人たちに、自身の信心の姿として、できることから実践し続け、驕らず、謙虚に歩み続けて行くことが、菩薩行なのでありましょう。
ご家庭でも、会社でも、地域でも「陰徳」を積み、お陰さまの人生を実践して行きましょう。今日も、あのお婆ちゃんと共にお題目を唱えながら皆さんの幸せをお祈りいたしております。
合 掌

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新年のご挨拶。

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