日蓮宗新聞

2010年10月20日号

誰でも出来る「和」づくりプロジェクト

寺院のあり方見つめ直す   信徒青年会結成講習会

宗門運動に謳われる「信徒青年会結成推進と育成」を促進するための「信徒青年会結成講習会」が9月16日、東京・大田区の宗務院で開催され、僧侶約50人が参加した。
“誰でも出来る「和」づくりプロジェクト”をテーマに行われた今回はまず、信徒青年会を擁する寺院の住職らが、実体験から結成のための心得や継続の秘訣などを解説。その後のグループミーティングで、参加者からの積極的な質問や相談を通して結成・維持形成への道を模索した。
総括では大西秀樹伝道推進委員が「真面目な坊さん、元気な坊さん、地域に貢献する坊さんとして、子どもや若者が集まるお寺づくりに励んでほしい。それには自坊やその地域、さらに自身の欠点を知り、そこをサポートしてもらうことがポイント」と話し、最後に「信徒青年会結成のコツは、やり始めること」と参加者の背中を押した。
「寺離れ」が危惧されるなか、地域コミュニティーの核としての寺院のあり方を見つめ直す有意義な講習会となった。

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現宗研主催 中央教化研究会議

日蓮宗現代宗教研究所(三原正資所長、以下現宗研)主催の「第43回中央教化研究会議」が9月7、8日、東京・大田区の宗務院で開催され、全国から僧侶約150人が参加した。
今年1月放映のNHKスペシャルで提起され、注目されている「無縁社会」の問題を取り上げ、「無縁社会から仏縁社会へ―教化学の確立に向けて」をテーマに、その克服への取り組みについて学びあった。
開会式では、渡邊照敏宗務総長が「人間は絆と縁に生かされている存在であるが、現代は縁が薄まり、絆が失われ行く時代。寺院にとっても、無縁社会化は最大の問題であり、今回のテーマは時宜を得たもの。しっかり研修し、成果を上げてほしい」と挨拶した。
まず、同番組に携わったNHK報道記者・板倉弘政氏が「無縁社会を考える」と題して基調講演に立った。血縁や地縁、社縁から断絶された孤独の中で、誰にも看取られずに死を迎え、自治体によって葬られた「無縁死」が昨年1年間で32000人に上ること紹介。その原因として核家族化から単身化へと急速に進んでいること、更に未婚化や少子化など、社会的な要因が背景にあると分析し、「無縁社会は貧困が問題なのではない。変容していく家族の在り方などもはらんだ将来にわたる社会問題」と提起した。
続いて五分科会が設けられ、議論を深めた。
◇   ◇
第一分科会では、NPO法人「道しるべの会」を立ち上げ、行き場のない遺骨を引き取るなどの活動をしている栗原啓允師(富山県高岡市大法寺住職)が問題提起。孤立化・無縁化が進行する現代社会において、身寄りのない高齢者や障害者などの身元保証人となり、サポートする「成年後見制度」の重要性を訴え、NPO法人を立ち上げるまでの経緯を述べた。
次に参加者全員で「仏縁社会の構築のために」をテーマにブレーンストーミング(創造的集団思考法)を行った。それぞれ無縁社会に対して僧侶に何ができるかを具体的に書き、それらを分類してまとめ、最終的に宗門への具体的な提言として「民生委員などの社会活動へのバックアップ」「弁護士や司法書士などの人材バンクの作成」などの意見がまとめられた。
第二分科会では、葬送ジャーナリストの碑文谷創氏を発題者として「『葬式は、いらない』に見る「無縁社会」化」について討議。碑文谷氏は「孤独死とは生きているうちから社会と絶縁している人々に起こる死」とし、僧侶が単身者と積極的に関わっていくべきと主張。更に「葬儀は本来、死者と近親者が悲しみを共有する場。その思いを理解しようという気持ちがないから葬儀が意味を持たなくなった」と述べ、僧侶は遺族の心に寄り添うサポーターとして、看取りから枕経、通夜、葬儀と一連の儀式を共にすることが重要であると説くと、会場からは「生老病死を説くはずの僧侶が、生老病死の場におらず、お寺が一般社会と無縁になりつつある」などの弁が聞かれた。
第三分科会では、NPO法人孤独死ゼロ研究会代表・中沢卓実氏の問題提起により「孤独死ゼロの街づくり」について討議。中沢氏は単身者が孤独死予備軍であるとし、まずは地域での挨拶の徹底が重要と解説。そして僧侶は檀家の“現在帳”をつくり、単身で生活している檀徒には教箋配布など情報発信を続けることが大切ではないかとした。
第四分科会では、産経新聞社会部副編集長・赤堀正卓氏を問題提起者として「直葬と宗教不信」をテーマに討議。赤堀氏は直葬が急速に増加している要因として①独居老人の増加による孤独死の増加、②都市化と過疎化の二極化による血縁、地縁の希薄化、③貧困問題、④宗教不信を列挙し、お布施について一般人の理解を得るよう努力することが必要と述べ、“消えた高齢者”問題も、宗教界の反省材料ではないかと指摘。更に「伝統仏教は、今接点をもっている人たちとの縁を再度耕して回らなければ大変なことになる」と警鐘を鳴らした。これに対して「宗教不信の根本にあるのは僧侶への不信。地域や檀信徒から信頼を得られるよう、宗門全体で資質の向上を目指さなければ」などの声が聞かれた。
第五分科会では阪神淡路大震災被災者ネットワーク代表の安田秋成氏が「結んだ絆~繋ぐ命 被災地神戸の事例から」と題し発題。阪神大震災後、仮設住宅郡の中で孤独死が多発したことなど自治会を立ち上げた経緯を述べ、声かけなどから生まれる「日常の絆」の重要性を訴えた。また被災者など困っている人に「役割」を与えることが「救い」につながると体験談を述べ、僧侶が「命の尊重」を現代社会に訴えかけていくことの重要性を説いた。
全体会議では座長の馬渡竜彦師(現宗研嘱託=千葉県妙国寺住職)が各分科会を総括。「寺は孤立してしまっている」として寺どうしの孤立、社会からの孤立、檀信徒からの孤立を挙げ「それらを一つひとつ乗り越えていかなければならない」とまとめた。
締め括りに東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵一准教授が「もう一つの『無縁社会』―死を忘れた日本人」と題して記念講演を行った。
中川准教授は「死の二重の無縁化」として①自分は死なないという感覚、②死が共同体や世代間のつながりをなくしている、の2点を挙げ、日本人の8割以上が医療機関で死を迎える現状から、「死がリアリティを失っている」と危惧。宗教や共同体が担ってきた日本人の「死に支え」が崩壊した現代こそ、自らの死を考える「死の予習」が必要なのではないかと説き、宗教者の担うべき役割について期待を寄せた。

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2010年10月1日号

大本山池上本門寺 多寳塔が修復、再現

日蓮聖人ご荼毘だび所跡に建つ多寳塔たほうとう(東京都大田区大本山池上本門寺内)が2年半の修復期間をへて、建立当時の鮮やかな朱色の姿で再現された。これを記念して「多寳塔大修復及び周辺整備事業」完成奉告音楽大法要が9月9日、酒井日慈貫首を導師に営まれ、僧侶檀信徒200人が平成の大修理事業の完遂を慶ぶとともに、日蓮聖人のご遺徳いとくを偲んだ。
都会の森にたたずむ多寳塔は同寺第47世日教上人代の日蓮聖人第五百五十遠忌おんき報恩事業として、江戸芝口講中しばぐちこうじゅうが願主となり、遠忌前年の天保元年(1830)に建立された。胴身部の平面が円形で屋根が単層のいわゆる“宝塔形式”で、高さ約18メートル。内外部ともに漆、彩色、金箔などで荘厳され、有形文化財として東京都の指定を受けており、屋外に建つ本格的な構造を有する木造宝塔としては全国唯一となる貴重な建物である。また内部には小宝塔を安置。中には日蓮聖人ご所持の水晶製念珠が奉安されている。
同塔は今まで50年の遠忌ごとに修復され、最近では東京都の補助事業として昭和48年に修復が行われた。しかし外部塗装の劣化や床下の損傷などで新たな修復事業を計画し、同寺檀徒の吉田嘉明氏が大施主となり、大事業が着工。今回の完成奉告となった。
同寺管理部の安藤昌就主事によると「全て大変な作業だった」と前置きしながらも、「特に化粧の漆塗りは乾いてしまうと色にムラができるので、乾ききらない半日の時間の間に、大きな胴身部の塗りを仕上げなければならなかった」と語り、6人の職人で臨み、塔全体では400キロの漆を準備したという。
法要では渡邊照敏宗務総長をはじめ、全国の本山代表者や宗会議員らが参列。酒井貫首は「まさに法華経に説かれたるがごとく、地の下より湧現ゆげんせる多宝仏たほうぶつの宝塔を彷彿させるもの」と奉告文で述べた。雅楽が奏される中、塔の上からはなやかな散華が舞い乱れ、慶事を彩った。

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新年のご挨拶。

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