2010年10月1日号
大本山池上本門寺 多寳塔が修復、再現
日蓮聖人ご荼毘だび所跡に建つ多寳塔たほうとう(東京都大田区大本山池上本門寺内)が2年半の修復期間をへて、建立当時の鮮やかな朱色の姿で再現された。これを記念して「多寳塔大修復及び周辺整備事業」完成奉告音楽大法要が9月9日、酒井日慈貫首を導師に営まれ、僧侶檀信徒200人が平成の大修理事業の完遂を慶ぶとともに、日蓮聖人のご遺徳いとくを偲んだ。
都会の森にたたずむ多寳塔は同寺第47世日教上人代の日蓮聖人第五百五十遠忌おんき報恩事業として、江戸芝口講中しばぐちこうじゅうが願主となり、遠忌前年の天保元年(1830)に建立された。胴身部の平面が円形で屋根が単層のいわゆる“宝塔形式”で、高さ約18メートル。内外部ともに漆、彩色、金箔などで荘厳され、有形文化財として東京都の指定を受けており、屋外に建つ本格的な構造を有する木造宝塔としては全国唯一となる貴重な建物である。また内部には小宝塔を安置。中には日蓮聖人ご所持の水晶製念珠が奉安されている。
同塔は今まで50年の遠忌ごとに修復され、最近では東京都の補助事業として昭和48年に修復が行われた。しかし外部塗装の劣化や床下の損傷などで新たな修復事業を計画し、同寺檀徒の吉田嘉明氏が大施主となり、大事業が着工。今回の完成奉告となった。
同寺管理部の安藤昌就主事によると「全て大変な作業だった」と前置きしながらも、「特に化粧の漆塗りは乾いてしまうと色にムラができるので、乾ききらない半日の時間の間に、大きな胴身部の塗りを仕上げなければならなかった」と語り、6人の職人で臨み、塔全体では400キロの漆を準備したという。
法要では渡邊照敏宗務総長をはじめ、全国の本山代表者や宗会議員らが参列。酒井貫首は「まさに法華経に説かれたるがごとく、地の下より湧現ゆげんせる多宝仏たほうぶつの宝塔を彷彿させるもの」と奉告文で述べた。雅楽が奏される中、塔の上からはなやかな散華が舞い乱れ、慶事を彩った。