日蓮宗新聞

2009年4月20日号

創刊2000号に寄せて

◆新聞は一字一句が勝負
酒井日慈 日蓮宗管長

日蓮宗新聞が近々2000号を発行するという。
小生は、
ほんの僅かな期間であったが「日蓮宗新聞」に携わったことがある者だけに、一入、感慨無量なものがある。
「日蓮宗新聞」の歴史については、宗門に於ける文書伝達の先駆者といわれる高橋玄淨上人が「日蓮宗新聞が誕生するまで」というタイトルで、―そもそも、その発端は(昭和2年)、時の管長、酒井日慎師の主唱と田中智学先生の話しあいによって生まれた―ことからはじまり、昭和39年に「伝道部」が新設され、日蓮宗新聞は布教伝道の花形として大きくクローズアップされるにいたった、ことまでのことが細かに書かれておられる。 また、現在『現代仏教』を発行され、大いに気勢をあげている尾谷卓一師が「日蓮宗新聞のあゆみ」と題して、かつて彼自身「日蓮宗新聞」部に在籍されておられた経験をふまえて詳細にその歴史を書かれているので、機会があったらその両書を一読されることをおすすめする。
小生は
自分の微力なことを棚に上げ、常々思うことは、―世の中で一番難しい読みものは『教誌』『教書』のたぐいだ―と断じている。
先ず、この類のものを手に取らせることが第一難関だ。
次に、手にしたものに、おやっと目を向けさせ、思わず2、3行読ませる、こと。読みはじめたら、ついつい興味が出てきて、終りまで読んでしまった―。と、いった具合に一字一句が勝負なのだ。
だから、これに携わる者は、常に真剣勝負の心構えでなくてはならない。
如何にしたら自分の感動を生生しく読者に伝えることができるか。これは容易なことではない。
慣れとか、テクニックといったものでは絶対に伝わるものではない。一字一句が身を削る思いなのだ。
そうした思いで綴られてきたものが、2000号をむかえようとしているという。
かつて、その末席にあった者としては、涙の溢れる感慨だ。
おめでとう。おめでとう。
心から拍手を贈らせていただく。

 

◆新聞で結ぶお題目のご縁
小松浄慎 日蓮宗宗務総長

 喜びの感じ方は人それぞれであります。現代人の活字離れが叫ばれて久しいが、綴られる文章の一文字ひともじに込められた心を感じたり、相手の姿を思い浮かべる豊かな感性は、私たちが失いたくない情緒の一つであります。
今般「日蓮宗新聞」が購読数6万5000部を超え創刊2000号を迎えました。多くの愛読者をはじめ関係各聖各位の弛まぬ努力により今号に至りましたことに心からの御礼と賛辞を贈る次第であります。
さて、創刊から10年を経た頃に作成された『通信員の手引き』には「日蓮宗新聞の使命」と題する一文が納められております。この文章は、当時課長職に在り紙面を作る苦悩と喜び、購読拡張の苦労、そして読む者の生の声と姿を知る米沢教隆師の執筆であります。その中で師は「日蓮宗新聞」が三つの方向性を持つことを次のように指摘されております。
「一つは本宗僧侶自身にである。機関紙的性格をもって同門人の連帯感の強化を図る使命がある。二つは宗徒の人々。信仰は個人の中で維持することは困難である。またその信仰は次代に引き継がせる内容をもつだけに、信仰実践と行為のすべては社会的性格をもち、その資の一部を荷っている。三つは、一般大衆にである。大衆への絶えまない働きかけは、新聞発行が大きな手段である。この新聞の育成と充実は、将来の宗団流布の必須である。」紙面の関係上、全文を掲載できないのが惜しまれますが、過ぎし時も今も本紙の責務さらには私たちの宗門の歩む道筋が明らかに述べられております。
「良き商品は自らが売らずとも求める人が集まる」といわれる商品販売にあっても、よき物も手にしなければその素晴らしさを知ることはできないのであります。だからこそ、私たちは本紙を読むことにより自己の信行を深め信仰することの尊さを感じ知ると共に、他の人にも勧めることを実践したいものであります。
昭和30年の創刊号の中で、立正大学第16代学長であった後の内閣総理大臣石橋湛山師は、本紙をして「立正精神の振興に精進されることを祈る」と記し期待と祝意を寄せられた。私もまた「日蓮宗新聞」が取り持つご縁を通して、一人でも多くの人々にお題目とのご縁を結んで頂き、ひいては宗祖の願われた立正安国への道が大きく開かれることを信じお祝いの言葉といたします。   合掌

 

◆垣本孝精 日蓮宗新聞社社長

 日頃、日蓮宗新聞をご愛読いただき、有り難うございます。
昭和30年、日蓮宗新聞創刊以来2000号を迎えることができました。しかも、新聞部から株式会社になって30周年という節目の年にも当たります。
ある仏教関係会社のキャッチコピーに
信仰が斜陽なのではありません
住職の意識が斜陽なのです
寺に閑古鳥が鳴いているのではありません
住職の意識に閑古鳥が鳴いているのです
とありました。
新聞とて同じこと。難しいですが、意識をたかめ、読んでみたくなるような新聞作りを心がけなければなりません。
創刊から、宗門唯一の伝道紙、檀信徒への正法流布の伝達手段として、新聞に関わるすべての諸先輩方が宗門と連携、その時々に懸命の努力をし、読者に支えられながら、確固たるものに積み上げてこられました。
いま、私は二度目の社長の椅子に座らせてもらっています。思い出せば10年前、最初の社長時代は、右も左も分からぬままに、とにかく一部でも多くの新聞をご購読いただきたいと、各教区はもちろん、東京近辺のご寺院へ無我夢中で拡張のお願いに歩きました。回れば確かに増えるのです。しかし、最近、読者の高齢化や活字離れなどで減る方が多く、目標部数が遠のくばかりです。
少しづつではありますが、字も大きくなりました。分かりやすい用語を使うように努めています。カラー面も増えました。写真や絵も沢山入れています。よくお叱りもいただきますが、「毎号、楽しみにしています。平和を願う宗門らしい主張がきちんとすえてある」「今を生きる方の参考になればと存じます」「法話を涙、涙で読ませていただきました」「同世代を歩んだ人の中に、同じ迷いの人がいるのに、うれしく感動しました」など、前向きなお便りもいただいています。
皆さん方のご意見を頂戴しつつ、お釈迦さまやお祖師さまのみ心に添いながら、「おや? 変わったな」と言われるような新聞作りをやってみたいと思っています。
今後とも進化する日蓮宗新聞のご愛読をよろしくお願い申し上げます。

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2009年4月10日号

立正大学 身延山大学 入学式

立正大学(髙村弘毅学長)の平成21年度入学式が4月1日、埼玉県熊谷キャンパスで行われた。今年度の入学者は2549人(仏教学部は103人)。
校歌斉唱後、髙村学長が式辞。
「現代は成人年齢の引き下げが論議されているが、モラルを備え、基礎的教養と豊かな感性を持ったエキスパートこそが真の成人。立正大学の〈モラリスト×エキスパート〉を育むという精神は、今世紀最大のキーワードとして自覚してほしい」と目指すべき人間像を示し、「良き友を得て、自己の存在を確立できるような、心豊かな学生生活を送っていただきたい」と言葉を贈った。
続いて新入生を代表して、午前の部は地球環境学部環境システム学科の松本成正さんが、午後の部では経営学部経営学科の宮林恵理さんが宣誓した。松本さんは「学則を守ることはもちろん、建学の精神を発揮することに努め、学生の本分を全うすることを誓います」と意気込みを表明した。
建学の精神唱和に続いて、立正大学学園総裁の酒井日慈日蓮宗管長猊下の祝辞。
はきだめにえんどう豆咲き/沼地から蓮の花が育つ/人皆に/美しき種あり/明日何が咲くか という安積得也の詩「一人のために」を紹介し、「明日咲くのは皆さんです。生き生きとした立正精神を学んで、美しい花を咲かせてほしい」と述べた。
続いて及川周介理事長。「真実を求め至誠を捧げよう、正義を尊び邪悪を除こう、和平を願い人類に尽くそう、という立正大学建学の精神は、語尾を見ればわかるように、行動を伴わなければ意味がない。先人の業績を領解し、謙虚に勉学の姿勢をつらぬいてほしい」と激励の言葉を贈った。
熊谷キャンパスは現在、再開発事業が展開中。今回入学式が行われた「スポーツキューブ」も3月に完成したばかりで、4月1日が運用初日となった。今後も1号館の全面改修や敷地全体のバリアフリー化が進められる。

 

◇  ◇  ◇

 春の景色に包まれ、五重塔落慶のよろこびにわく山梨県身延町の総本山身延山久遠寺(内野日総法主)。そのお膝元にある身延山大学(宮川了篤学長)の入学式が4月3日に行われ、仏教学科18人、仏教福祉学科1人の合わせて19人の学生が新しく誕生した。
式は身延山大学の関係者全員と新入生の保護者に見守られる中、身延山大学理事長の井上瑞雄総本山身延山久遠寺総務を導師に、仏前奉告式が営まれた。
続いて入学生の名前が順番に読み上げられると、入学生全員が力強く返事をし、宮川学長から入学を許可された。また新入生を代表して身延山高校から仏教学科に入学した勝野光栄さんが誓いの言葉を述べた。
宮川学長は式辞で「出会うべくして出会った仲間であり、お互いに切磋琢磨し信頼関係を築き大きく飛翔して下さい」と述べ、また井上理事長は「仏縁によって花開く機会を得、卒業時には大きな収穫を得るように」と挨拶した。
最後は学園歌を全員で斉唱。式後、内野法主が新入生に暖かい言葉をかけられ、全員での記念撮影行った。
式終了後、新入生代表の大役を務めた勝野さんは「自らを厳しくし、新たな気持ちで頑張りたいと思います」とかつての先輩たちのようなひたむきな表情で決意していた。
五重塔と同じくして生まれた新入生19人は、五重塔のように堂々とそして優しい人間性になることを願い大学生活をスタートさせた。

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沖縄修法師布教団 各地で唱題行脚と慰霊法要

平成20年度日蓮宗加行所を成満し、成満会で小松浄慎宗務総長から辞令を受けた修法師による沖縄修法師布教団(佐野前暁団長=平成20年度日蓮宗加行所伝師)が、2月28日から3月2日までの3日間、沖縄県の南部戦跡などで、唱題行脚と慰霊・修法法要を行った。45人の修法師と随行した檀信徒ら20人は戦没者諸霊に祈りを捧げ、立正平和の思いを新たにした。

2月28日に那覇市内で結団式を行った一行は、翌3月1日、豊見城市にある旧海軍司令壕を皮切りに、摩文仁の丘沖縄戦没者墓苑、黎明の塔、健児の塔、ひめゆりの塔、魂魄の塔を巡回。それぞれで唱題行脚と慰霊供養を行うとともに平和祈願の祈祷を行った。特に摩文仁の丘沖縄戦没者墓苑では、待ち受けていた地元沖縄法華経寺(日沢是良住職)の僧侶檀信徒らと合流し、佐野団長を導師に追善供養を行った。
この日は最後に特別養護ホーム・転生園(八重瀬町・吉田郁子園長)を慰問。法楽加持が行われ、終了後には佐野団長が、参列した高齢者にも理解できるようなやさしい言葉で「加持」「祈祷」の意味を解説した。
最終日の2日は、那覇市の法華経寺で、立正平和祈願祭と恩親平等慰霊法要を行い3日間の沖縄修法布教を締めくくった。

3年連続で布教団団長として沖縄の地に訪れた佐野師が、解団式の後に沖縄への思いとこの3日間の意義を熱く語ってくれた。(以下要旨摘録)

 太平洋戦争の末期、一億特攻の名のもとに尊い命が散っていった沖縄戦。それは勝ち目のない絶望的な戦いだった。目指すところはただひとつ、玉砕覚悟で戦い、米軍の本土侵攻を少しでも遅らせること。そして督戦の声は民間人にも及んだ。つまり嵐の前の防波堤のような役割を沖縄県民が担わされたのだった。捨て石のように扱われた沖縄県民の尊い命を思うと、思わず言葉が詰まる。
死者は25万人ともいわれ、いまだに県内の山中から遺骨が発見されることも珍しくない。多くの命がこの地に散った。そして各地で起きた集団自決。なかには日本軍に自決を強要された者もいた。「生きて虜囚の辱を受けず」という戦陣訓が軍人のみならず民間人にも向けられ、降伏も許されない空気が沖縄を支配したのだ。これが日本の歴史で最も悲惨な戦いといわれる沖縄戦の姿だ。生き残った沖縄県民にも癒えない傷を残したことは言うまでもない。
あれから60余年が経った。今日の日本の平和や繁栄の影にはこのような沖縄県民の犠牲がある、ということが忘れられているのではないか。修学旅行などで多くの学生が沖縄に訪れるが、感想を聞くと「鍾乳洞が楽しかった」といったような声ばかりで、戦争の悲惨さや平和のありがたみに触れる声は聞かれない。今回、戦跡を巡ったのは日曜日だったにもかかわらず、ひめゆりの塔でも平和祈念公園でも人が少なかったのは憂慮すべきことだ。沖縄戦が風化されていく。戦争の悲惨さや歴史を忘れた人が増えていく。こういったことの延長に愚かしい戦争や命の軽視があるのではないか。
日蓮宗では「環境」「平和」「いのち」の大切さを訴え、宗門運動では「いのちに合掌」をスローガンとしている。沖縄の地に眠る戦没者諸霊を回向し、この地から「平和」「いのち」の大切さを発信することは日蓮宗の務めであると確信している。沖縄修法布教を通して、沖縄の歴史を知る人が少しでも増えれば、やがてそれが立正平和の道へとつながることだろう。慰霊あっての立正平和である。若い加行僧には、沖縄に眠る諸霊に額ずくことを立正平和へ向けての一歩目としてもらいたい。

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