日蓮宗新聞

2009年1月10日号

本山妙本寺第80世早水日秀師の晋山式

神奈川県鎌倉市の本山・長興山妙本寺祖師堂で昨年11月21日、第80世早水日秀師の晋山式が営まれ、酒井日慈日蓮宗管長(大本山池上本門寺貫首)をはじめとした関係僧侶と檀信徒約300人が参列した。
式に先立ち総門から祖師堂まで行列が行われ、20人の稚児を先頭に式衆や檀信徒らとゆったりと進む早水新貫首に沿道から拍手が送られた。
法要後の式典で酒井管長猊下が祝辞を述べ、妙本寺の78世が新貫首の師父であることに触れ、親子二代にわたって猊座につくのは希有なことと話した。また早水新貫首が日蓮宗法要式指導の第一人者であり、声明師育成に全国を巡った功績を称え、「その功績報いるために日蓮宗としては権大僧正をお贈りしてそのお祝いとする」と参列した檀信徒に報告した。
その後、神奈川県第二部宗務所長・町田壽昭師が小松浄慎日蓮宗宗務総長の祝辞を代読してから自らの祝いの言葉を述べた。次いで修行時代に苦楽を共にした菅野日彰師(静岡県本山海長寺貫首)が感涙に言葉を詰まらせながら長年の友の慶事を祝った。檀信徒からは、早水新貫首が長年住職を務めた東京・池上の本妙院総代の田中愛二氏と妙本寺総代の望月賢一氏が祝いの言葉を述べた。
早水貫首は「大本山池上本門寺を支える一翼としての妙本寺であり、宗門全体を支える妙本寺でありたい」と貫首就任の決意を力強く述べ、「この思いをもって精進し続けたい」と結んだ。
その後、場所を東京都内のホテルに移し晋山披露宴が行われ、約450人の関係者が出席し、早水師の晋山を祝った。

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2009年1月1日号

今年は丑年

『立正安国論』奏進、節目の750年
私たちは今なにをすべきか考えよう

日蓮聖人の御遺文をひもときますと「牛馬」が登場するものが多数見受けれられます。そのなかで、最も知られているのが『立正安国論』の冒頭の一節ではないでしょうか。
「旅客来りて嘆いて曰く、近年より近日に至るまで天変・地夭・飢饉・疫癘、遍く天下に満ち、広く地上に迸る。牛馬巷に斃れ、骸骨路に充てり」という有名な書き出し部分です。日蓮聖人は、この一文で当時の鎌倉の町の惨状を表現しました。そしてこの状況を打開するにはどうするべきかを、為政者に進言したのが『立正安国論』です。
当時の状況をして、21世紀の現代社会にあてはまるという人もいます。なるほど、天変・地夭は昨今頻発する異常気象や大地震のことです。今のところ飢饉になってはいないものの穀物の不作が伝わってくる国もあると聞きます。疫癘は巷間話題となるところの新型インフルエンザのことでしょうか。みごとなくらい合致するものがあります。
さて「牛馬斃れ…」の部分ですが、ここを読むたびに、私はシャッターを下ろしたままになっている地方の商店街を思い起こしてしまいます。
大都会で暮らす人にはピンと来ないかもしれませんが、地方都市の不景気や過疎化・高齢化は目をおおうばかりです。シャッターを下ろしたままの商店、これはすなわちその地域で商業経済が成立しなくなったことでもあり、日蓮聖人ご在世の鎌倉時代の疲弊した世情と共通するものがあるのではないでしょうか。
人と人、都市と地方。21世紀に入り、格差が拡大してさまざまのところに「ひずみ」が目立ってきました。物質的な豊かさの追求は悪いことばかりではないでしょう。競争の原理が発展を生むことも間違ってはいないでしょう。しかし度が過ぎたときどうなるのか。もしかすると今日の日本の姿も、仏さまや日蓮聖人には「お見通し」だったのかもしれません。
さて、今年は宗祖日蓮聖人が『立正安国論』を鎌倉幕府に奏進して750年目の年にあたります。宗門ではこの節目の年にさまざまな行事を企画しています。それに参加するだけでなく、大事なことは『立正安国論』を読む、ということではないでしょうか。
『立正安国論』に書かれていることは、750年という長い年月を経ても、決して色あせることなく輝き続けている金言ばかりです。この節目の年に、読んだことのない人はぜひお読みください。読んだことのある人は、ぜひ再読してみましょう。
750年前に宗祖の発した警句を噛みしめ、私たちは今なにをすべきか。それを考える年にしてみてはいかがでしょう。

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新春のご挨拶

◆生き生きと生きる
酒井日慈 日蓮宗管長

 新春
生き生きと
生き生きと
お目出度うございます

「生き生きと生きる」
これが、法華経の教えです。
人間だから
人間を愛し
人間を大切にしよう
という―限りない人間讃歌―、それが法華経なのです。
つまり、法華経の根本となっているものは「人間はみな仏性を具えている」という人間観なのです。
私は、子供の頃、父親から
「お寺は、母親のお乳のようなところでなくてはいけない」
と教えられてきました。
つまり、この世に生れ出てきた乳児たちは、観音さまのお慈悲にも似た慈愛溢れた母親のお乳によって、すくすくと育ってゆくように、お寺もまた生き生きとした―生きる喜び―を差し上げられるところでなくてはならない、というのです。
それは、つまり人間は例外無く、だれもが仏性(仏のこころ)を持って生れてきているのだ、ということに気付いていただくと同時に、その気持ちを大切に養い育てていただくようにお手伝いするのがお寺の役目だ、という訳です。
ですから、「法華経」という教えは、いのちを育てる乳、つまり法の乳、即ち「法乳」なのだ、と教えられてきました。

さて、そこで目を転じて、今日、此の頃の世相を観ます時、まことに残念なことでありますが、―生き生きとしている―と言えましょうか。
毎日のように、目を疑い、耳を塞ぎたくなるような、想像を絶する事件が日常化しつつあります。
これは一体、どうしたということでしょう。
正に、―人間だから人間を愛し、人間を大切にしよう―という法華経の心を失いかけているとしか思えません。
ともすると、私達は、自分にその災難が降り懸ってこないかぎり、―他人ごとですませたい――触らぬ神に祟り無し。桑原、桑原―と、あくまで他人事でおわらせたい気持ちだからではないでしょうか。
ですが、これは他人事ではないのです。
かつて私は、或る日突然、召集令状という伝家の宝刀を振り翳されて、4年間戦場に引き摺り出されていた経験がありますので、敢えて申し上げますが、時代の流れというものほど恐ろしいものはありません。
私に召集令状をよこされた方は―軍人にあらざれば人にあらず―と真剣に思われておられた方々なので、戦争によって平和をつくりだそうなどという、虎が羊を養い育てようとする以上に滑稽な話を「愛國」とか「殉国」とかいう言葉によって潤色し、まるでそれが可能でもあるかのように強要したのです。
さて、ところで現代に目を転じてみましょう。
永い間の―軍国主義―という重圧を払い除けてくれた―自由主義―に歓喜し、食べつけない―民主主義―を鵜呑みにしているむくいで下痢症状をおこしているのが今日の体たらくではないのでしょうか。
此の度、アメリカの新しい大統領となったオバマ氏が一貫して國民に訴えていた言葉は、『チェンジ、アメリカ』です。
「アメリカを改めよう!」
即ち「アメリカを蘇生させよう!」です。
どうです。本家本元ですら、中学生が校内でピストルを乱射する自由主義の下痢状態には辟易しているのです。
ふりかえって、今日の日本の世相を観てみましょう。
怖気たつ思いがしませんか。
もう、一刻の猶予も許されません。
私達全員が、今日の歪みかけている世の中を我がごととして受けとめ、生き生きといぶく法華の精神をもって日本を蘇らそうではありませんか。

 

◆小松浄慎 日蓮宗宗務総長

 平成21年の新春を迎え年頭のご挨拶を申し上げます。
「立正安国・お題目結縁運動」が実動して3年目となる本年は、日蓮聖人が鎌倉幕府に『立正安国論』を奏進なされて750年の節目の年であり、宗門運動第一期の中心となる大事な年であります。
そこで6月には比企谷妙本寺、中山法華経寺に於きまして宗門法要を奉行するはこびであります。
また、社会に向けた立正安国のメッセージを発信する取り組みとして『いのちのコンサート』を開き「いのち」の尊さを感じて頂ける企画を整えております。
10月10日から11月23日までは、京都国立博物館にて『日蓮と法華の名宝ー華ひらく京都町衆文化ー』展を開催いたします。諸寺伝来の数々の優品を通じて日蓮諸宗と法華信仰に支えられた京都町衆文化の奥深さを秋の京都で再確認し、さらには京畿をはじめとする由緒ご寺院への団参をなさいますとより意義深いものとなりましょう。
さて、私事で恐縮ではありますが、気が付けば60年の馬齢を重ねて参りました。中でも七面山別當職を拝命しお給仕のため幾度もお山に登らせて頂きましたことはまことに有難い修行の日々でありました。
七面山は身延山地に属する標高1982mの高山で険しい道でありますが、参詣者は皆、唱題しながら登詣する法華経信仰の霊山であります。
私は、気負って登りはじめるも息が切れて参りますと今まで大変な思いをして登って来た山道を振り返り、まだこれだけしか登って来ていないのか、と愕然としたことを今でも鮮やかに思い出すのであります。
しかしながら、敬慎院からお山を下り始め、あらためて降り来た坂道を見ますと、あまりにも急坂な山道に自分が歩いてきたことが信じられない驚きを覚えたのでありました。また、信徒の中には仲間に支えられ励まされながらお題目を唱えて一歩ずつ歩みを進める方をよく拝見したものであります。
私は、この登詣の道中で自他のさまざまな姿を目の当たりにするたびに、七面さまに人間の生き方や人生、そしてお祖師さまのお言葉である「信心の歩みを運ぶ」という信行のあり方を教えて頂いたのだと感じたのであります。
人間は過去を悔やみ、未来に不安を抱き日々を生きると申します。また先人の教えにも、心が塞がれば百慮を誤る、と語られております。
昨今の世上に眼を転じますと、多岐にわたる現実問題に心を痛めるばかりであります。殊に凶悪犯罪や自死者、孤独死の増加、子供たちや一般の人々を巻き込む悲惨な事件の頻発など近年とくに「いのち」を取り巻く状況が甚だ不安であります。
末法の指針である『立正安国論』に示される真実の道とは、此の土を安穏ならしめる法華経の実践、すなわち自他の誤りを誡め、仏国土を建設するという世界全体の成仏であります。
まさに閉塞感の広がる現代社会に在ってこそ、まことのみ教えを受持する私ども日蓮宗徒が本分を発揮し、自己一人の救いや安らぎにとどまることなく、かけがえのない「いのち」を互いに信じ敬う姿を現す時代であると強く感じております。
宗徒一人ひとりが「いのち」に合掌礼し、この仏縁を広げお題目結縁による豊かな社会の実現に共に歩みを進めて下さらんことを念じ年始のご挨拶といたします。

 

◆日蓮宗新聞社社長 垣本孝精

 新年おめでとうございます。お元気でお正月をお迎えでしょうか。
日頃は「日蓮宗新聞」「正法」をご愛読いただき、また、信行用品をお買い求めいただき、ありがとうございます。
今年は『立正安国論』奏進750年ご正当の年、(株)日蓮宗新聞社も創立30周年、4月には新聞2000号の節目を迎えることになります。先師、先輩方のご努力と、支えてくださった読者はじめ多くのみなさんのおかげと、心から感謝申し上げますとともに、こういう記念の年にあたり、社員一同一層精進して参りたいと思います。さらなるご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。
産経新聞「朝の詩」に次のような詩が載っていました。
地球創世45億年
その端数の百万年も知らない人類
その新参者の人類が今地球を駄目にしている
元の地球にするには
人類滅亡しか無いという
悲しい現実…   (東大阪市 今津 茂)
また、田中 優著『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』(扶桑社新書)には、
地球温暖化の問題を調べていて、ぞっとするのが「間に合うのかどうか」という話です。(中略)さまざまな仮説が飛び交っていますが、人類はいつ「戻ることのできないターニングポイント」を迎えるかということです。「ガイア仮説」を提唱したイギリスのジェームス・ラブロック博士は「もう過ぎてしまった」と言っています(中略)地球温暖化を1980年代から警告してきたアメリカ航空宇宙局、ゴッダード宇宙研究所のジェームズ・ハンセン所長も「この十年に大きな変化を起こさなければ人類は滅亡しかねない」と訴えています。
世界で地球温暖化によるさまざまな影響が起きていることは誰も承知しています。しかし、温暖化防止に本気で努力している人はどれくらいいるのでしょうか。戦争をやめ、車や電気製品を省エネ仕様にかえ、消費電力を減らし、木を植える、空き缶、ペットボトルの回収などリサイクルに努めるなどがあると思うのです。
私ごとですが、家内が愛育委員の会合で「レシート一枚までゴミではありません。プライバシーなどと言いますが、心配なら紙袋に入れて出してもらえば捨てた紙を開いて読むなどということは誰もしません」と聞いてきました。それからというものは、焼却していた紙類をすべて資源化物として出すようにしました。
お祖師さまが「法華経は紙付に声をあげてよめども、彼の経文のごとくふるまう事、かた(難)く候か」(『轉重輕受法門』)と書いていらっしゃるように、分かっているけど実行することは難しいと仰っていると思うのですが、分かっていることだけでは駄目なのです。行動に移してこそ尊いのです。
暗いことの多い昨今、一人一人が気づいた良いことは実行に移し、住みよい明るい世の中にしていきましょう。

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新年のご挨拶。

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    日蓮宗新聞社編
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