2008年6月10日号
世界開教師会議開く
“一天四海皆帰妙法”のため世界各地で布教に邁進する僧侶が東京大田区の日蓮宗宗務院に集い、5月12日から14日、平成20年度世界開教師会議を開催した。今回は北米、ハワイ、ブラジル、ヨーロッパ、東南アジア、韓国で活躍する開教師18人と海外在住僧侶六人、後援団体、国際開教対策委員ら約20人が参加し、現況の報告や要望、今後の課題などについて話し合いが行われた。
現況報告では北米開教区、ハワイ開教区の人事や事業計画などを報告。また各師が自身の活動と信徒の様子を語り、日曜学校や法要、法華経講義、唱題行などの信行会を開催し、様々な行事を行っていると述べた。
・塚本観登師(イギリス新開教地)仏教を知らない人が多く通仏教を教えることから始め、徐々に法華経や日蓮聖人の教えに触れてもらおうと活動中。北欧などでもセミナーを開いているが紙芝居を使うと反応がいい。
・タラビーニ勝亮師(イタリア新開教地)各地に点在する信徒を一堂に集めることが難しい。一人で回るのも限界があり、電話やメールで対応しているが経費がかかる。
・野田寛行師(東南アジア新開教地)日曜日に働いている人も多いため、平日の夜にも法要を行っている。他を助けるという慈善精神を高めていければと思う。
・シュテフェンス祥馨師(ドイツ大聖恩寺)国際宗教対話会で講演するなど諸宗教対話の波及に努めている。お題目を唱える新興宗教団体の信者への対応方法を検討している。
・熊倉祥元師(ニューヨーク大聖恩寺)他宗は教会の前などに宗旨を掲げている。日蓮宗を知ってもらうために宗旨の英訳看板を作成したいので、宗門で検討して欲しい。
などの意見が出され、欧米では信徒が広範囲に渡るため、インターネットを活用した布教活動が効果的であるとの声が多くあった。また法華経や日蓮聖人の教えを英語だけでなく、ドイツ語やイタリア語など諸言語での翻訳本発行、学識経験者による講演開催などの要望が出された。
開教布教センター(米国ロサンゼルス)の平井智親センター長は、完成した英語経本『DHARMA』を参加者に配布し、大本山中山法華経寺から寄贈された復刻本『立正安国論』を広く貸し出すことを報告。また今後の活動として広報活動、出版事業の継続と僧侶の研修会、檀信徒のためのワークショップの開催と、海外で奮闘している僧侶、信徒のためにできる限りの支援をしていくことを述べた。
国際開教対策委員の三田村昌鳳師が国際関係宗門運動について発表。三田村師は国際活動経験者法話行脚の予定や宗門運動の仕組みを話し、「宗門運動の精神は“切なる願いの心”“できることの一歩”“心にのこる声”です。この精神をもって活動すれば、それぞれが宗門運動に関わることができ、大きな力となるはず」と話をまとめた。
ディスカッションでは来年行われる『立正安国論』奏進750記念事業で、意義を込め世界へ発信するためにも諸外国語で法要や辻説法を行ってみてはどうかとの意見が出された。また京都での日蓮聖人展にあわせての団参企画もあげられた。
今年度は6月22日にハワイ日蓮宗別院でハワイ開教区宗門運動発願大会を、ブラジルのサンパウロ恵明寺で移民百周年法要、南米法華経寺で祖師像開眼式を開催することが報告された。
また会期中には中尾堯文師が「日蓮聖人のお曼荼羅本尊」と題し、講演を行った。中尾師は「お題目の偏や画をながく伸ばすのは、法華経の信仰によって光りあう生命を表すため。そしてそのお題目に向かい、四菩薩をはじめ多くの善神、人師が合掌し、お題目を唱える、法華経信仰の世界を表現したものである」と話し、仏と信者を結ぶ絆となるお曼荼羅本尊の大切さを述べた。
この会議は海外で奮闘する僧侶たちが一堂に会し、意見交換、意識の確認など有意義な時間となった。参加者は各国での布教活動に戻るが、異体同心であらたなる一歩を踏み出す。