2007年9月1日号
立正安国の精神を全世界に
戦没者追善供養並びに世界立正平和祈願法要
62回目の終戦記念日を迎えた8月15日、日蓮宗は小松浄慎宗務総長を導師に「戦没者追善供養並びに世界立正平和祈願法要」を、東京・千代田区にある千鳥ヶ淵戦没者墓苑で営んだ。これは同墓苑が昭和34年に創建されて以来続けられている法要で、猛暑のなか、僧侶檀信徒のほか一般の参列者が合掌して戦没者への慰霊と平和への祈りを捧げた。
人々に命の大切さ 伝える信仰運動
戦没者の遺骨が納められている六角堂内に曼荼羅ご本尊を奉安し、午前9時に打ち鳴らされるうちわ太鼓とともに導師、式衆が入堂した。
今年は、導師を小松浄慎日蓮宗宗務総長が務め、脇導師を東京四管区宗務所の鈴木良敬所長(東部)、矢嶋泰淳所長(西部)、石井隆康所長(南部)、佐野詮学所長(北部)が務めた。
修法導師は渡辺貫也東京東部修法師会長が務め、式衆に東京四管区の声明師会、修法師会、青年会の会員が出仕。六角堂の中央に安置された陶棺に向かい声明、読経、修法を行い、表白文で戦没者諸精霊に追悼の意を表すとともに、世界平和を祈念した。
続いて、力強く打ち鳴らされるうちわ太鼓とお題目が響き渡るなか、参列者全員による焼香が行われた。
戦争という時代を生きてきた者も、戦争を知らない世代の者も、それぞれが尊い命を犠牲にした戦没者の冥福を祈るとともに、二度と戦争が起こらぬよう祈りを込めて合掌した。
その後、(財)千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会の宮崎忠雄理事長が挨拶に立ち、同墓苑の創建以来続く日蓮宗による法要に対し謝辞を述べるとともに、戦後62年を経てもいまだに続いている遺骨収集の現実について語った。
最後に伊東隆司日蓮宗伝道局長が小松総長の挨拶文を代読。「我が祖日蓮聖人は『立正安国論』の一節に“国に衰微なく、土は破壊(はえ)なくんば、身はこれ安全にして、心はこれ禅定ならん(国が衰えることなく、世界が破壊されなければ、わが身は安全であり、心は平和でありましょう)”と仰られています。法華経の信仰に基づく共生世界の実現こそが万民安楽の世界に導く大道であることを信じ、その身を惜しむことなく衆生救済の菩薩行に励まれました。現在日蓮宗では『立正安国・お題目結縁運動』を心に、願いである立正安国の精神を全世界に向けて高唱し、一人ひとりの心がみ仏の教えと縁を結び、心の平和、社会の平和、世界の平和を実現すべく歩みを進めております。宗門運動の一環である当法要は、終戦60有余年を経て今日の人々に命の大切さを伝える信仰運動であります。戦争の愚かさと悲しみを人々に呼びかけ、人類共に手を取り合い、世界の平和と仏国土の顕現を示さんことをお祈り致します」と、世界恒久平和を念じて法要を終えた。
千鳥ヶ淵戦没者墓苑に納められている遺骨は、昭和28年以降に政府派遣団が収集したものと、海外から帰還した部隊や個人によって持ち帰られたもので、軍人、軍属のみならず海外において犠牲となった一般邦人も含まれている。いずれも遺族に引き渡すことのできなかったもの。終戦後62年を経た今年も新たに973柱の遺骨が収集され同墓苑に納められた。これによって奉安されている遺骨は総数35万2297柱となった。