2006年5月10日号
東南ア「見て、感じ、行動」全日青、海外布教の現状を学ぶ
日蓮宗の海外布教拠点の中でも、飛躍的に信徒数を伸ばしている東南アジア。そこに、学ぶべき何かが必ずあるはず――その“何か”を掴むため「自ら見て、感じて、行動する」をモットーとする全国日蓮宗青年会(全日青=三浦海慧会長・北海道妙光寺住職)の15人と寺族3人が、3月26日から30日までシンガポールとマレーシアに渡り、海外布教の現状を学んだ。
26日、シンガポールの国花・蘭が香る空港で、小幡妙照開教師と題目寺信徒の出迎えを受けた一行は、題目寺に向かった。同寺はシンガポール市街の宗教団体が集まるビルに道場を構えており、35人の信徒が授戒している。この日は夫婦や親子連れなど約50人が参詣し、一行を手厚くもてなした。
午後8時、小幡師を導師に記念法要を厳修。法要中、抹茶を点てて献茶するなど日本文化を採り入れた供養もあった。また法楽加持では一人ひとりに撰経があてられ、心を通わす法要となった。
法要後、三浦会長が挨拶に立ち流暢な英語を披露。シンガポールの地で布教に邁進する小幡師と信徒団に敬意を表し、「私たちもみなさまと共に精進し、この世を現世安穏の住みやすいものにするため、南無妙法蓮華経のお題目をお唱えし、世界中に弘めて参りたいと存じます。そして、私どもはいつでも皆さまの支えとなりますので、助けが必要な時はおっしゃってください」と呼びかけた。
続いてチュア・グァン・チュー理事長が「題目寺にお越し頂き、心から感謝いたします。今回の訪問により、私たちの信心はさらに深くなり、心も温かくなりました。日蓮宗に帰正して二年、まだ分らないことがたくさんあります。日蓮聖人の御教えを広げ伝えるために、みなさまと小幡上人から学び実践していきたいです」と謝辞。その後、信徒らによる心づくしの手料理が振る舞われ、一行は地元の味を堪能した。
27日は、第二次世界大戦の日本軍占領時に犠牲となった市民を追悼する祈念碑「ウォーメモリアルパーク」で回向した。この記念碑は昭和42年に日本・シンガポール両政府によって建てられもので、中国系・マレー系・インド系・混血のシンガポール人を四本の箸に見立てた塔になっている。一行はここでお題目を唱え、犠牲者の冥福を祈った。
同日夜、レストランで信徒との交流会がもたれた。「ヤーム・セン!」と大声で叫ぶシンガポールの流儀に則った乾杯で会場は大盛況。また信徒からは修法の根元を問う内容や「『立正安国論』を身に読むためには具体的にどうしたら良いのか」といった質問が出され、僧侶らは一つ一つ丁寧に答えていた。
28日、一行はマレーシアのペナン島に移動。マンションの二階に道場を構える一念寺は二百人の信徒を擁し、理事長のアン・ティアン・スーン氏を中心に、週2回の法要をはじめ唱題行、勉強会、慈善活動など信行活動を展開。法華経二十八品に中国語で振り仮名をつけたお経本を独自に発行するなど教学の研究にも熱心に取り組んでいる。
午後8時、きれいに飾られた堂内で小幡師を導師に記念法要がはじまり、小幡師が力強い勧請を行うと、信徒たちは一斉に英文の開経偈を読み上げた。幼い子供たちがお自我偈をそらんじる姿に、一行は感銘を受けていた。
法要後、三浦会長は中国語も交えながら英語でスピーチ。「このスピーチを300回練習しました」と言うと、堂内は明るい笑い声に包まれた。次に小幡師が「一念寺の信徒は正しい信仰を持った宗徒としての自覚を持ち、法華経の教えを弘めるという強い意志を持っています。今後も信徒と共に精進して参りたいです」と挨拶。続いてアン理事長が「法要を営んで頂き、さらなる信仰心を与えて下さったことに感謝いたします」と謝辞を述べた。最後に子供たちから歌のプレゼント。“仏さまは常に私たちを見守ってくださっている。平和な世界を創っていこう”という意味の中国語の歌は美しいメロディーで、思いがけないかわいい贈り物に感極まって涙をこぼす姿も見られた。2曲目に子供たちが懸命に覚えた日本語で「幸せなら手をたたこう」を歌うと、信徒も僧侶も笑顔の大合唱となり、堂内が幸せに包まれた。
その後の茶話会では手作りのマレー料理が振る舞われ、信徒と会員が筆談やジャスチャーで交流。膝を交え、話に花を咲かせた。
29日、一行はペナン島内にある戦争犠牲者の追悼記念碑の前で回向。花輪を捧げて一念寺信徒団と共に読経し、犠牲者の冥福を祈って帰国の途に就いた。
3泊5日の布教の旅を終えて、三浦会長は「世界の布教の現状を学ぶことの大切さと、行動することの意義の大きさを改めて実感した。これからは世界を見据えて活動していきたい」と決意を新たにしていた。また、河崎俊宏海外布教担当委員長は「純粋にお祖師さまに向かっている信徒の方々と接し、国は違えども同じお題目を唱えていることの重みを感じた。今後の海外布教にも一人でも多くの方に参加してもらい、自分なりに何かを掴んで持ち帰り、役立てて欲しい」と今後の活動への参加を呼びかけた。