日蓮宗新聞

2006年3月10日号

お彼岸法話

三寒四温の気候不順な折ですが、日に日に春を迎える季節となりました。春を告げる梅の花も開き、これからは、桃・ツツジ・サツキ・牡丹もあちらこちらで見られることでしょう。
日蓮大聖人(以下大聖人)は、「法華経を信ずる人は冬のごとし。冬は必ず春となる。いまだ昔よりきかず、みず、冬の秋とかへれる事を。いまだきかず、法華経を信ずる人の凡夫となる事を」(『妙一尼御前御返事』)と仰っています。寒梅が冬をじっと耐えて美しい花を咲かせるように、法華経を信じ行ずる信仰者の姿をお述べになったご文章です。
日本の四季の変化は、自然の美しさを醸し出し、私たちの生活に節目と潤いを与えてきました。
中でも春のお彼岸の頃となると、厳寒の冬から解放され、暖かい太陽の光が木々の緑を蘇らせ、田畑には新しい芽が萌え始め、私たちの生活にも新たな活力と喜びをもたらします。
さて、そうした春の訪れと共に、日本の大切な仏教行事である「お彼岸」が、この18日から始まります。
檀信徒の皆さま方は、春の日差しを受けて樹木草花の息吹を感じながら、ご家族連れでお墓参りをなさることでしょう。しかし、お彼岸は、お墓参りだけを目的とした一週間ではありません。
『彼岸鈔』には「生死の此岸より、苦海の蒼波を凌ぎ、菩提の彼岸に到る時節なり」とあります。彼岸とは、尽きることのない心の悩みや迷い、苦しみで満ちた現実生活の此岸から、仏の世界、悟りの平和な境地である彼岸に到ることを意味します。悟りの彼岸に渡ることを仏教では「度」(わたる)ともいい、そのための修行を六度の修行、六波羅蜜と教えられています。
一に、布施(ほどこし)─進んで善根を積む
二に、持戒(いましめ)─心を清く正しくもつ
三に、忍辱(がまん)─怠らず素直な心を持つ
四に、精進(はげむ)─努力を重ね向上をはかる
五に、禅定(おちつき)─心静かに自己を省みる
六に、智慧(かしこさ)─ものごとの本当の姿・意味を知る
これらの六つを行うことによって、煩悩多き此岸より悟りの彼岸に到達するというものです。
それでは彼岸はどこにあるのでしょう。それはこの世界(娑婆世界)で実現しなくてはなりません。
『一生成仏抄』には、「衆生の心けがるれば土もけがれ、心清ければ土も清しとて、浄土といい穢土というも土に二つの隔てなし。ただ我等が心の善悪によると見えたり。衆生というも仏というも亦かくの如し。迷う時は衆生と名付け、悟る時をば仏と名づけたり。譬えば闇鏡も磨きぬれば玉と見ゆるが如し。只今も一念無明の迷心は磨かざる鏡なり。これを磨かば必ず法性真如の明鏡となるべし。深く信心を発して、日夜朝暮にまた懈らず磨くべし。いかようにしてか磨くべき。ただ南無妙法蓮華経と唱えたてまつるを、これを磨くとはいうなり」とあります。
これは、此岸も彼岸もただ一つの心の置きどころ、乃ち彼岸は我が心の内にある、自らの心の善悪によっておこるもの、その心を磨くには、常にお題目をお唱えすることである、とのお示しでございます。
お釈迦さまは、悟りに到るために六つの行いをお説きになられましたが、私たち煩悩多き凡夫には、すべてを行うことはなかなか難しいものです。
そこで、大聖人は成仏に到る直道として易行中の易行(たやすい行い)について『日妙聖人御書』で次のようにご指南遊ばされています。
「六度(六つの修行)の功徳を妙の一字におさめ給て、末代悪世の我等衆生に一善も修せざれども六度萬行を満足する功徳をあたへ給ふ」
これは、お唱えするお題目に六度の修行の功徳がすべて納まっているということで、私たちには容易ではない六度の修行が唱題の信心によって叶うというものです。

また『十八圓満鈔』に「正行(仏さまの教えにもとずいた正しい行のこと)には南無妙法蓮華経なり」、そして『十章鈔』には、「口ずさみは必ず南無妙法蓮華経なり」と仰せられ、お題目が正しい修行で、どこにいてもどんな時にでも「口ずさみの唱題」として刹那成仏(一刹那は七十五分の一秒)をお説きになられています。
お題目の教えは「即身成仏」を説きます。また、煩悩を持ったまま現世で、この身のまま成仏するという「煩悩即菩提」の教えでもあります。従ってお題目を唱えた時は仏の心ですから、一瞬の唱題は一瞬の仏、一日の唱題は一日の仏、一生の唱題は一生の仏ということになり、日々「常彼岸」の仏心でいたいものであります。
彼岸の行事は、一年の内で一番しのぎやすい好時期の春分・秋分を中日として前後3日ずつを合わせた7日間で、それぞれ春の彼岸・秋の彼岸といいます。
大聖人はお彼岸について『彼岸鈔』で、「彼岸一日の小善は、能く大菩提に至るなり」と申されています。これは、「彼岸七日の内に一善の行いを修せば、悟りを開いて仏となり、他の時節に功徳を積むよりも、彼岸一日に小善を行えば、大いなる悟りの道に至ることができる」ということで、この時節をよく知った上で小善を行いなさいと、私たちにお勧めくださっています。
彼岸のお中日を中心に、菩提寺の彼岸法要でお題目をお唱えして仏道修行に励み、その功徳をもってご先祖有縁の精霊にご回向したいものです。     合掌

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