日蓮宗新聞

2005年12月1日号

「第10回 法華経読誦大施餓鬼法要」

この地で法華経を読みたい――。平成7年、厳島神社(広島県宮島町)「千畳閣」を拝観していた僧侶の胸に、図らずも一様に涌き上がった想い。その想いは「千畳閣」建立の由来を知り、“何としても”という強い願いに変わった。
僧侶達の熱意と厳島神社の英断を背景に法華経の不思議な縁に導かれ、法華経によって一切諸霊を供養する法会が実現して今年で10年。「第10回法華経読誦大施餓鬼法要」(主催・日蓮宗声明師会連合会)が10月25日、「終戦60年戦争死没者追善法要」と合わせ千畳閣で盛大に営まれた。
澄み渡る秋晴れのもと、1000人の参列者と共に声明師達が万感の思いを込めて唱えた法華経とお題目は、時代を超えて諸霊の魂に吸い込まれるかのように宮島の地に染み渡った。

終戦60年、平和への祈り

 静かに漂う紺碧の波間に朱色まばゆく回廊を浮かべる厳島神社。人々が島そのものを神と崇めていた太古の時代から多くの尊崇を集めた厳島は、日本文化の象徴として、訪れる者を厳かな悠久の流れに引き寄せる。
千畳閣法要への動きは、平成7年9月、広島市本山國前寺で行われた声明師養成講習所の終了後、声明導師の早水日秀師、南條孝仁全国声明師連合会会長(当時)をはじめ講師陣が神社を参詣したことに始まる。
平清盛が一門の平安を願って法華経二十八品を含む写経三十三巻を納経した厳島神社。そして、豊臣秀吉が朝鮮出兵に関わる戦没将士を慰霊するために千僧供養を発願し、建立を命じながら志半ばで没したという千畳閣に昇った一行の胸に、「この地で法華経を」という想いが湧き起こったという。
“遠く源平の時代から戦国時代、そして広島長崎原爆投下まで、長い歳月の間に非業の師を遂げた数多くの人々、その精霊を供養するには法華経に勝るものはない”。
南條会長は早速、厳島神社の野坂元良宮司と親しい間柄にあった本山國前寺の疋田英政貫首(当時)に真情を綴り、全国声明師会連合会や広島宗務所管内の協力を得ながら神社側との交渉を進めた。
ちょうどその頃、法華経の導きを実感する出来事が重なった。身延山が発行した「日蓮聖人傳絵巻」に掲載された絵図によると、七面天女は厳島神社の弁財天の化身であり、さらに、秀吉から二度の朝鮮出兵の大将を任ぜられたのが法華経大信者だった武将・加藤清正公であったことをあるテレビ番組で知った。
交渉に一層の熱意が加わり、野坂宮司の快い英断が下されたのは11月末。南條会長、早水声明導師、地元広島声明師会長の疋田英親師(当時)は歴史的な吉報に涙を流して喜んだ。
そして、第1回法華経読誦声明音楽大法要が翌年5月23日、幾百万の霊が待ち望んでいたかのような不思議な力に後押しされ、全国から140人の僧侶が出仕して営まれた。
以来、毎年10月または11月にこの法要を続けており、厳島神社の秋の年中行事に組み込まれ、法要の時期には宝物館で平家納経の展示が行われている。

秋の宮島「千畳閣」で法要 お題目の修行に精進
9000枚の唱題散華 大倉正之助氏の太鼓独奏 雅やかな世界に

10月25日、厳島神社千畳閣で営まれた「第10回法華経読誦大施餓鬼法要」と「終戦60年戦争死没者追善法要」には、全国から声明師会会員およそ100人が出仕。10年前、千畳閣法要の実現に動いた南條孝仁本山妙顯寺貫首、疋田英親本山國前寺貫首、また本山弘法寺石野日英貫首をはじめ、随喜参列の僧侶檀信徒1000人が千畳閣をびっしりと埋め尽くした。
午後1時、導師、副導師、式衆が伶倫(日蓮宗雅楽会会員)の雅楽に導かれ、僧階に応じた鮮やかな袈裟衣を身にまとい、厳島神社を練行列。海にせり出した舞台では唱題散華を行い、約9000枚が厳島の海に舞った。
同時に千畳閣では開式の辞が述べられ、中四国教区声明師会会長の濱田壽教師が「法華経有縁の道場において法華経を読誦し、共にお題目をお唱えできることは諸天善神やお題目の布教に生涯を捧げた日蓮聖人もお慶びのことと思います。この場でお唱えする法華経、お題目の功徳は限りないもので、戦争で亡くなられた方々はもとより一切衆生六道法界の萬霊に巡らすものです。命の尊さを考えるひとときにしてください」と挨拶した。
舞楽「陵王」の奉納に続き、式衆昇堂の時には、重要無形文化財総合認定保持者の大倉正之助氏が大鼓の独奏を行い、人器一体となった音色が堂内外に響き渡り、参列者を雅やかな世界に引き込んだ。
法要は早水日秀声明導師を導師に営まれ、散華行道では約15000枚の色とりどりの華葩を散華し、美しい声明の声が堂内を一層荘厳にした。
式中、岡山県檀信徒が経木塔婆を、福岡県檀信徒が写経を奉納し、最後に全国声明師連合会会長の佐野順常師が挨拶に立ち「釈尊は、殺しても殺させてもいけないと説かれ、日蓮聖人は命の尊さは財より勝れていると説かれ、絶対平和の浄土を実現させたいと願われました。その思いを実現させるためお題目の修行に精進します」と述べた。

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「いのりんぴっく名古屋」開催 法音寺

「環境・平和・いのち」の大切さを考え、祈り、行動していこう――宗門行事「いのりんぴっく名古屋」が11月19日、名古屋市法音寺(鈴木宗音住職)で開催され、檀信徒や地域住民など約二人で賑わった。
ぬけるような青空のもと会場は終始、万灯講のお囃子や平和を祈るお題目、檀信徒・寺庭婦人による出店の賑わいに包まれ、主催の「いのりんぴっく名古屋実行委員会」とともに祭典を作り上げた檀信徒、地域住民、寺庭婦人の大きな輪は、“生命の絶対的尊重”を基本理念に、“立正安国の実現”を眼目とする宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」の実働へ向け、力強い一歩を標した。

2000人が縁を結ぶ

平和を祈る宗門行事は、昨年の「いのりんぴっく柴又」(東京・柴又帝釈天)に続いて3年目。今年は第1弾として9月12日、愛・地球博を会場に「いのりんぴっく愛知万博」を開催、各国のさまざまな文化が交流する場所で僧侶・檀信徒・未信徒がふれ合いながら祈りの心をともにした。
「いのりんぴっく名古屋」は、第1弾のいのりんぴっく愛知万博に引き続き、名古屋宗務所(伊藤守温所長)管内の僧侶による実行委員会を主催として、日蓮宗と名古屋宗務所が後援して行われた。

 19日、法音寺境内には管内寺院の檀信徒や寺庭婦人による焼きそば・おでん・豚汁などの出店、バザー、野菜販売コーナーが並び、「子ども広場」にはうさぎやヤギ、ポニーと触れあう移動動物園も。全国社会教化事業協会連合会(旭英順会長)やBAC仏教救援センター(伊藤佳通理事長)、TM良薬センター(小野文珖理事長)、アーユス仏教国際協力ネットワーク(茂田真澄理事)などのブースでは、来場者にパンフレットを手渡し社会教化活動や国際協力活動について理解を呼びかけた。「いのりの折り鶴」コーナーでは、老若男女が語り合いながらお題目が記された色とりどりの折り紙に、それぞれ祈りごとを書いて鶴を折った。
祭典は、千葉県妙照寺(瀬川観照住職)万灯講による威勢のよい万灯行列で盛大に開幕。本堂で伊藤所長が「それぞれの方が環境・平和・いのちへの思い、そして祈りを深めていく機会となればと思います」と開会を宣言し、日蓮宗京都雅楽会と一般の若手雅楽演奏者で結成される「音輪会」が舞楽を披露、伝統に彩られた演奏と優美な舞いで来場者を魅了した。
祭典のメーン「いのりの法要」は、伊藤所長を導師に本堂で行われた。
表白文で伊藤所長は「私たちは立正安国の精神を掲げ、私たちを取り巻く環境を人類の手で壊さないことを願い、祈っています。平和という言葉を叫ばなくてもよい世界になることを。一人ひとりが理解し学びあい、融和・協力し人類の未来のためにすべての人が共に祈り、共に行動しようではありませんか」と述べ、中條令紹日蓮宗総務局長が「いのりんぴっく名古屋立正平和宣言」を岩間湛正宗務総長の代読で読み上げた。
その後も本堂ではパーカッションアンサンブルやシャンソン歌手・中村愛紀氏、二胡演奏家・張照翔氏が次々に登場し、訪れた人々を楽しませた。

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新年のご挨拶。

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