日蓮宗新聞

2005年3月20日号

日蓮宗 第91定期宗会開く

日蓮宗の宗制・その他重要な宗務に関する議決機関である宗会。岩間湛正宗務総長が就任して3回目となる第91定期宗会が3月8日から11日まで東京大田区の日蓮宗宗務院で開かれた。今定期宗会では次期宗門運動に関する具体的な提案がなされ、生命の絶対尊重を基本理念とした立正安国の実現を眼目とする「立正安国・お題目結縁運動」を平成17年4月からスタートさせることが岩間総長から発表された。

「お題目こそ成仏の種」五点を基本目標

日蓮宗では立教開宗750年慶讃として、昭和60年から18年計画で展開された「お題目総弘通運動」が平成14年度をもって終結し、次なる宗門運動の策定が重要課題となっていたが、その概要と方向が今定期宗会の宗務総長施政方針挨拶の中で初めて明らかにされた。新たな宗門運動の名称は【立正安国・お題目結縁運動】に決定された。
立正安国とは正法すなわち法華経の教えを立てて国と世界を安らかにするという日蓮聖人の重要な教えで、結縁とは仏法とりわけお題目と縁を結ぶことを意味する。
この運動方針は、全国の伝道企画会議で提案された意見を汲み上げ、慎重に討議・検討を重ねた上で中央伝道企画会議から提出されたもの。
運動の基本大綱は「我々日蓮宗徒は、日蓮聖人のお志を自らの志として地涌の菩薩の自覚のもと、立正安国・仏国土顕現をめざして至心に信行精進すると共に、お題目の弘通、下種結縁に邁進しなければならない」という基本理念を踏まえ、「一、お題目こそ成仏の種。二、人を育てる、人こそが法の担い手。三、心の平和、社会の平和、世界の平和。四、現代社会の諸問題への対応。五、世界の仏教徒と共に」の五点を基本目標とする。
 こうした理念と目標を掲げて決定された次期宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」は、運動の対象を、①宗内教師・寺族②宗門檀信徒③宗外一般という三つの部門に分けられ、それぞれにふさわしい事業や活動、スローガンを構築する全宗門的運動となる。
運動は今年4月1日からスタートし、平成33年の日蓮聖人ご降誕800年の翌年までの18年間を運動期間とする。その間には、日蓮聖人の『立正安国論』奏進750年(平成22年)の慶年も盛り込まれる。
なお、運動の実動年は平成19年で、それまでの2年間を準備期間として運動趣旨の徹底、組織作り、活動内容の検討、経費・財政についての議論に充てる。
岩間総長は「“立正安国”は、この世を浄仏国土にする外界に向かった運動であり、“お題目結縁”は、信仰の相続継承を目指した私たちの内面に向かった運動です。宗門はその総力を挙げて『立正安国・お題目結縁運動』の推進に邁進しようではありませんか」と、次期宗門運動の発足を力強く宣言した。
〈新議長・副議長選出〉
今定期宗会では、議長に井村大祐師(同心会・千葉県蓮照寺住職)、副議長に鶴田龍聖師(明和会・静岡県蓮久寺住職)が新たに選出された。
各政策について
〈予算関係〉
平成17年度経常部会計予算は、厳しい財政環境の中、昨年度比1637万円増となる19億8376万円を計上。今後も新たな財源を模索する「宗門財政検討懇談会」などを通じて更なる議論を重ねる。
〈教育関係〉
宗門の将来を見据えた法器養成の重要性から、種々の政策行う。
①僧道林
平成十八年度から信行道場入場への必須条件となる僧道林の充実化をはかり、教区開催への準備を進める。
②宗立学寮
現在の熊谷・谷中を一本化した新たな学寮建設に向け「日蓮宗宗立学寮建設検討特別委員会」の設置を検討中。
〈過疎・過密問題〉
過疎地域と都市過密地域における寺院の適正配置の問題について、従来の「都市開教プロジェクト」と「過疎地寺院対策懇談会」を廃止し、新たに「国内開教対策委員会」を設置すべく、統合的な対応を進める。
〈災害対策〉
昨年の度重なる災害を「平成16年度集中自然大災害」と位置付け、様々な救援策を展開してきたが、現在、4億3700万円余となっている災害救援基金を検討し、救援活動と給付体制の充実を図る。

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2005年3月10日号

総本山身延山久遠寺 四幅のご真筆曼荼羅本尊

日蓮宗では立教開宗750年の記念事業の一環として、5年前から、日蓮聖人ご真筆曼荼羅本尊の調査・修理を行っており、現在、宗門寺院で格護される92幅のお曼荼羅の内、半分近くの修理が終了している。今冬、総本山身延山久遠寺(藤井日光法主猊下)をはじめ、合わせて3ヵ寺で格護される四幅の曼荼羅本尊が修理を終え、2月24日、身延山久遠寺祖師堂で合同の修理終了奉告式が行われた。

今回、修理を終えた日蓮聖人ご真筆曼荼羅本尊は、総本山身延山久遠寺・本山大野山本遠寺(身延町・豊田貫修貫首)・妙了寺(南アルプス市・飯島顗周住職)で格護される計四幅。
調査は中尾堯立正大学名誉教授を中心に進められ、修理は国宝・重要文化財の美術品も手掛ける京都の(株)光影堂が約1年かけて行った。
久遠寺のお曼荼羅は弘安3年(1280)に揮毫されたもので、江戸時代初期に本阿弥光瑳(光悦の養子)による表装が施されている。刀剣の鑑定を家業とし、熱心な日蓮宗の信者であった本阿弥家に伝来していた。
 明治8年の大火で日蓮聖人のご真筆が失われた身延山で、昭和10年に篤信の加治さき氏によって奉納された貴重な一幅。
中尾教授によると本紙全体にうっすらと縦線が認められるが、これは木目の跡で、かつてこのお曼荼羅が板の上に貼られ、多くの信者に拝まれていたことを物語るという。
本遠寺には二幅のお曼荼羅が格護され、一方は佐渡、もう一方は身延で揮毫されたものと思われる。
二幅とも背面に心性院日遠上人(身延山22世・本遠寺開山)の極書があり、日遠上人のことを敬愛した養珠院お万の方についての記述が見られる。
また後者のお曼荼羅には、横に一本、縦に4本の折り目が見られる。これは、日蓮聖人からこのお曼荼羅を授与された人物が、お守りとして片身離さず持ち歩いていたことを示すという。
妙了寺のお曼荼羅は弘安3年、身延における弟子である日佛尼(妙了寺開山日道院日了の母)に授与されたもの。
本紙の左下は擦れて一部分が失われているが、これは昔に多くの人々が触ってお参りしていた跡だと中尾教授は分析する。通常、お堂の中では左周りで巡るために、お曼荼羅を前にして思わず手で触れてしまうのは左下の部分。人々の日蓮聖人への恋慕渇仰の思いが伝わってくるという。
久遠寺祖師堂で行われた修理終了奉告法要では、ご宝前に四幅のお曼荼羅が一斉に掲げられ、圧倒的な迫力に包まれた。
法要終了後、導師を務めた菅野啓淳身延山布教部長が「今回のご修理では、本阿弥家伝来時の雰囲気を残そうと“大和仕立て”で仕上げていただきました。大変な作業に感謝します。総本山にふさわしい見事なお曼荼羅です」と謝辞を述べた。
最後に本遠寺の豊田貫首と妙了寺の飯島住職が「今改めて拝見し、新たな感激に包まれています。中尾先生をはじめ皆様方に深く感謝申し上げます」、「何百年に一度の機会にめぐりあえたことはとても有難く、日蓮宗の宝をこれからも大切に護持していきます」と、それぞれ感謝の意を表し、法要は終了した。
ご真筆曼荼羅本尊の調査・修理事業は引き続き進められ、法華経信仰の至宝は未来永劫に向けて護持・伝承されていく。

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ラオス学校建設スタディーツアー

日蓮宗宗務院は2月4日から13日まで、ラオス南部に位置するチャンパサック県でラオス学校建設スタディーツアーを開催し、大学生を含む20代の宗門子弟・寺族九人が、現在建設中の現場で砂の運搬やレンガ積みなど実際の作業にあたった。

ラオスの学校建設は、BAC仏教救援センター(伊藤佳通理事長=静岡県感應寺内)が平成5年から展開しているプロジェクトで、日蓮宗では国際協力活動を支援しようと、このプロジェクトへの参画を決定。将来の国際協力活動、海外布教活動を担う宗門子弟・寺族の養成を目的に今回のスタディーツアーを実施した。
BACはラオス教育省と連携をはかりながら学校建設プロジェクトを展開。一校(三教室から五教室)あたりの建設費は約300万円で、日蓮宗をはじめ各宗務所、天台宗、大学、篤信者などが寄付を行っている。
 BACは目標の108校目を昨年12月に完成させたが、その後もプロジェクトを継続。今回のツアーの舞台となった学校は111校目、日蓮宗としては32校目となる。ラオス教育省では校舎新築や改築を目指しているが、そのための予算はほとんどなく、外国の協力団体等に頼っている状態だ。
◇   ◇
今回参加した9人は、大学生を含みすべて20代の宗門子弟・寺族。2月3日午後6時半、宗務院伝道部が毎月行っている「国際法要」の中で結団式を行い、翌四日に成田空港を出発した。
一行はバンコクから寝台列車で移動し、バスに乗り換えラオスへ。目的地はラオス南部メコン河沿いのチャンパサック県シークース村。小さい村だが、付近に「ワット・プー」という世界遺産がある。村に小学校はあるものの、すでに老朽化しており、そこで学ぶ子供たちは新しくできるきれいな校舎を楽しみにしていた。
8日から本格的な建設作業が始まり、気温30度を超える炎天の下、基礎工事の中に砂を運び入れる作業が続いた。翌日は筋肉痛に苦しみながらも子供たちの笑顔を見たさに張り切って作業へ。午前中に砂入れが完了し、レンガ積みと鉄筋組みの作業に移った。参加者は地元の作業員と片言のラオス語やジェスチャーを駆使してコミュニケーションを取りながら、作業の手順を教わり、慣れない手つきで一つ一つレンガを積み重ねた。
3日目には自分が何をすべきか周りを見ながら判断し、率先して作業を行うなど自主的な行動が見られた。午後は村の人たちと親善バレーボール大会で交流を深めた。
 レンガの壁が積み上がった11日、午後から贈呈式が行われ、バーシーセレモニーというラオスの民族儀式のあと、ラオラオと呼ばれる地元の酒が振る舞われた。その後、村人や児童、教員らによるダンス「ランボーン」が披露され、ツアー参加者は「東京音頭」「炭坑節」でお礼の盆踊り。会場は大いに盛り上がり、学校を後にした参加者の中には感極まって涙する姿もあった。
参加者した波岡輝昭師(北海道本妙寺内)は「ラオスは貧しい国だが、そこに生まれ生活している人は貧しいとも不幸だとも思っていない。国際協力やボランティアは、自分が知らないうちに人を傷つけてしまうこともあり、その難しさを知った。国が違ったとしても人と人との結びつき、一緒にラオスに行った仲間との結びつきなど自分に得るものが多く、また参加したい」と語っていた。
宗務院では平成17年度も引き続きラオス学校建設スタディーツアーを開催する予定で、全国の宗門子弟に参加を呼びかけている。

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新年のご挨拶。

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    中尾堯著
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