日蓮宗新聞

2005年2月20日号

大本山中山法華経寺で追儺式

千葉県市川市の大本山中山法華経寺(新井日湛貫首)で2月3日、節分追儺式が営まれ、壱百日の苦修錬行に励む加行僧が総出仕した。2回の豆まきはのべ9000人の参詣者で賑わった。
法要は新井貫首を導師に営まれ、加行僧が一心に読経。参列者に修した善星皆来・開運招利のご祈祷は、加行僧が初めて外で木剣を振る場となった。
午後1時と3時からの2回行われた豆まきには全国からの年男年女約280人、行僧百93人、市川・船橋市長をはじめ美輪明宏さんや橘家圓蔵師匠などのゲスト23人、総勢500人が参加。新井貫首の「福は内!」の一声のあと一斉に豆まきが行われ、人々は福に授かろうと声をあげて手を伸ばしていた。
法華経寺山務員や出入りの職方、法華経寺振興協賛会、地元有志などが約3週間かけて準備した約300キロの豆と段ボール百箱のお菓子や景品は1回15分ほどの豆まきで瞬く間になくなった。今年は高齢者席や子ども席を作り、安全にも配慮し、人々は福豆を手に、一年の幸せを願い帰路についた。

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大江健三郎氏(ノーベル賞作家)が講演

藤井日光日蓮宗管長が会長を務める財団法人全日本仏教会(102の仏教諸宗派・団体が加盟)では人権啓発講演会を、2月10日、大阪市の真宗大谷派難波別院を会場に開催し、ノーベル賞作家の大江健三郎氏が講演した。大江氏は「“人間らしさ”の力」と題し、仏教についての思いや、長男で音楽家の大江光さんとのふれあいを通じた“祈る”ことについての自らの宗教的な体験を語り、多くの参加者が聞き入った。講演要旨は以下の通り。

私は母親の影響を強く受けて育ちました。私の故郷は愛媛県の小さな山の村です。子供の頃は樹木が好きで、戦争中でしたが、のんびり暮らしていました。
しかし、祖母と父が1週間くらいで続けて亡くなり、母はショックでうつ病のような状態になったのです。お葬式が済むと、母は毎日のようにお寺に通うようになりました。
そこで母は、2時間でも3時間でもお坊さんに質問をするのですが、お坊さんは迷惑がらずに丁寧に答えてくれました。私の役目は母の後ろでお坊さんのお話をメモする事。お坊さんが話す仏教の話はとても興味深く、今でも覚えています。
例えば、自宅の仏壇に母は毎日お水をお供えしていましたが、そのお水を載せる台を昔から「アカダナ」と呼んでいました。お坊さんにその意味を訪ねると、「アカ(閼伽)」とは古代インドのサンスクリット語(argha)から来ていて、仏に供養する水を指すそうです。さらに「アクア(aqua)」はラテン語の水であることを教えてくれました。
サンスクリット語もラテン語もギリシャ語も根っこの部分で何かつながりがあるかもしれず、仏教の教えがインド・中国・日本と伝わるにつれ、その言葉も次第に変化していく過程はとてもおもしろいと思いました。
こういったことをお坊さんに教えられ、以来私は言語学に興味を持ち、大学で外国語を学ぶきっかけになったのです。
ある日、お坊さんは父のいない私を心配し、「もっと勉強したいのであれば、大きなお寺で学ぶ方法を紹介するがどうか」とおっしゃってくれました。
さらに「本当に勉強している立派な人というのは、お金など欲しくなくなり、名声を求めないから清らかな人間になる。君はそういう人間になりたいか」と聞かれました。
私は考え、「なりたくない」と答えました。少なくとも自分が勉強したことは人々から認められたい、その時はそう思ったからです。それからお寺には行かなくなり、中学へ進学しました。
しかし私はいまだに、「欲のない人は本当に立派なのだ」というコンプレックスを持っているのも事実です。
大学在学中に小説を書き始め、28歳で父親になりました。生まれてきた息子は障害があり、4歳になってもしゃべりませんでした。
息子は野鳥の鳴き声が収められたレコードが好きで、いつも聞いていました。ある日、軽井沢の森で、息子を肩車して歩いていると、どこかでクイナの鳴き声が聞こえました。その時、なんと息子は「クイナです」とレコードのナレーションそのままの声を発したのです。
私は興奮し、もう一度クイナが鳴いてくれないかと念じていました。するとまたクイナが鳴き、息子は確かに「クイナです」としゃべったのでした。
今思いますと、二度目のクイナの鳴き声を待っていたあの時の気持ちはまさに“祈り”であったと思うのです。
信仰を持っていない私が、何か不思議な力に対して祈っていた。「センス・オブ・ワンダー」、不思議さの不思議とでもいうのでしょうか。
あるユダヤ系の女性哲学者は、「祈る力は少しづつ育つ、注意深く見つめることができれば」と言っています。私も息子に対し、常に全身をかけて注意していたことはまちがいありません。
息子は、やがて音楽の世界に入り、作曲家として現在に至っていますが、私は息子をつくづく善良な人間だと思います。
「人間はそもそも悪だ」などといった内容の小説ばかり書いてきた私も、息子を見ていると、「人間は本来善良で、信用できるものなのではないか」と思うようになったのです。
仏教学者の中村元先生と対談した時、私は、「息子にはイノセントな感じがする」と申したことがあります。「イノセント(innocent)」とは、汚れのない無垢な、といった意味で、罪を犯していないということです。
すると中村先生は、それは仏教の言葉「アヒンサー(ahimsa)」(他を傷つけない・不殺生)と同じだとおっしゃいました。とてもすばらしい言葉だと思います。
60年前、私は村のお坊さんに、自分は欲のない清らかな人間にはなれないと言いましたが、その時、「無欲な人にはなれないけれど、もしそういう人がいたなら手助けをしよう」とも思いました。
今、70歳を越え、息子を助ける自分がいます。そこに不思議な「“人間らしさ”の力」を感じずにはいられません。

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2005年2月10日号

身延山大学、4月から「仏教福祉学科」開設

身延山大学(宮川了篤学長)に今年4月から、新学科「仏教福祉学科」が開設される。「こころ」を学ぶ教育を通して、少子高齢化社会に即した福祉の担い手を養成する。仏教福祉学科は「介護福祉コース」と「児童福祉コース」に分かれ、少人数による充実した教育を導入。取得可能な資格としては介護福祉士・保育士などの資格取得が可能で、福祉分野のスペシャリストを養成するための多様な専門科目を用意している。

「仏教の慈悲の心具現化する場に」宮川学長

身延山大学は、平成18年に学園の前身である西谷善学院の開創から450年を迎える。記念事業としての福祉関係の学科設立は数年来の目標であり、着々と準備を進めてきた。
これまで、身延山大学では必修科目として手話の授業を導入したり、実習やサークル等を通じた地域福祉との密接な関係を率先して築いてきた実績がある。
また、数年前から身延町との連携でヘルパー養成講座を開き、多くの町民を招き入れてきた。福祉教育の基盤は充分に整っているといえる。
新学科設立に向け、昨年の6月から建設が進められてきた実習棟も完成し、充実した設備群が新入生を待つ。
実習棟は鉄筋の3階建てで、介護・入浴・家政・図工・音楽などの様々な福祉の場面に対応できる実習室を備える。また女子学生に考慮してシャワー室や更衣室・トイレを多くし、さらに学外には専用女子アパートも設置した。
授業は、身延山大学の特徴である基礎ゼミ形式が主体となり、マンツーマンに近い形で学ぶ。4年制の強みを活かし、時間的にも余裕ある教育が実現。
資格だけでない精神面の教育を重要視し、福祉の現場において相手の心を思いやるサービスができる人格形成を主眼に置いている。
また、学外の実習は長期休暇中に山梨・静岡県などの施設で行うが、近隣に寺院が運営する老人福祉施設や児童福祉施設もある点で恵まれた環境といえよう。
宮川学長は「仏教福祉学科は仏教の慈悲の心を具現化する場です。仏教を通して自己の心を研鑚し、身につけた技で理想社会の実現へと挑戦してほしい」と語る。
祖山の息吹に触れながら、「心」を磨く福祉教育が始まろうとしている。

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新年のご挨拶。

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